慌てて連絡すると、「ごめん、俺、お前とは結婚できないや!」「だから俺とは別れてくれ!本当に結婚したい人ができたんだ!」と婚約者。私が問いただすと、ようやく「驚かないで聞いてほしいんだけど……」と口を開いて……?
妹と関係を持っていた婚約者
「俺、お前の妹と結婚しようと思うんだ!」
まさかの発言に、私はぽかん。「……は? 私の、妹……?」と言うと、「あぁ、俺はお前の妹と結婚する! だからお前とは別れるし、同棲も解消だ!」と婚約者。
どうやら、婚約者は結婚のあいさつで私の実家に行ったとき、妹に一目惚れしてしまったそう。その後、妹から「家族になるんだから、もっと仲良くなりたい」と言われた婚約者。それから2人きりでたびたび出かけていたのだとか。
「人生で初めての一目惚れだったんだ! こんなに好きになった人は今までいないんだよ!」「どうせみんなに反対されることはわかってるんだ……だから、駆け落ち覚悟で出てきたんだよ」と語る婚約者の頭の中は、妹のことでいっぱいのようでした。
「うちの両親も、あなたの両親もきっと驚くわ」「どう責任を取るつもりなの!?」と聞くと、「きっと激怒されるだろうな……でもいつか許してくれるって信じてるから!」と言った婚約者。そして、「彼女のおなかには、俺たちの子どもがいる」と言ったのです。
「俺の両親にとっても、お前の両親にとっても初孫だ」「子どもが生まれたらみんな会いたがるはず、そのときにすべてを水に流してくれるだろう」「まさか俺がこんなに早く父親になるなんて……信じられないよ」「10月に生まれるんだ」「女の子らしい」と浮かれている婚約者。
私はひと言婚約者に伝えました。
「え? それはあり得ないわね」
婚約者は「え?」と情けない声で返事をしました。
計算が合わない子ども
「あなたがうちの妹に初めて会ったのは5月、それで今は6月……まさか、たった5カ月で子どもが産まれてくるとでも思ってるの? 十月十日って言葉、聞いたことない?」
私の言葉に、「あ、あれ……? どういうことだ……?」と婚約者。浮かれた気分はどこへやら、「妊娠している時期と計算が合わないじゃないか……」「俺、この間病院にも付き合ったのに……!」とブツブツ言っていました。
「まさか、あの遊び人の妹が、どちらかというとおとなしいあなたを好きになるなんて思わなかったけど……」「出会ってすぐに妊娠って……まるで、慌てておなかの子どもの父親役を押し付けようとしているみたいよね?」
「そ、そんな……まさか、彼女がそんなこと……。いや、でも、たしかに計算が合わない……」とまだブツブツ言っている婚約者に、私は「まぁ、真相がどうだろうと、婚約破棄された私には関係ないけど」「あとは2人でよ~く話し合ってね」とだけ言って、やり取りを終えました。
暴かれた妹のたくらみ
翌日――。
「お姉ちゃん、彼に余計なことを言わないでよ!」「お姉ちゃんのせいで彼にめちゃくちゃ疑われたじゃない!」と、電話をかけてきた妹。
「まずは私に謝るのが先じゃないの!?」私は怒りを通り越してあきれつつ、「で、実際のところはどうなのよ?」と聞いてみると、「もちろんほかの男の子どもに決まってるでしょ!」と怒りに任せて暴露してきました。
「でも、誰が父親なのかわかんないんだもん!」「父親候補に連絡しても、みんな知らぬ存ぜぬで逃げるし!」「だから、女性経験もなくて、ちょっと頼りなさそうだけど、稼ぎだけはいいお姉ちゃんの婚約者を狙ったってわけ!」
妹の相手をしていた男たちにも問題がありそうですが、一番厄介なのはやはり妹。私の婚約者を利用して、自分の都合を押しつけようとしているのですから……。
ため息をつきながら「……これからはどうするつもりなの?」と聞くと、「もちろん、どうにかして彼のことを騙し切ってみせるわ!」と宣言した妹。
「彼ったら、想像以上に私に夢中みたいなの」「この調子なら、父親ってことにしても何も疑わず受け入れてくれるはず!」
「ありえない……もう手遅れだよ」「俺、今のやりとり、全部聞いていたからね」
そうぽつりとつぶやいたのは、私と向かい合って座っている婚約者でした。彼は「なにを信じたらいいかわからない!」「とりあえず直接会って話を聞いてくれ!」と、私に必死で頼んできました。仕方なく話に付き合っていると、そこへ妹から電話がかかってきたのでした。
「最初から俺を騙そうとして近づいてきたなんて……そんな人なんてもう愛せないし、子どもだって無理だよ……」と婚約者。そして、妹に「1人で育てられないって言うなら、ちゃんと相談窓口にはつなぐけど、それ以上の責任は取れないからな!」と宣言したのです。
その後――。
元婚約者は、私との復縁を希望してきました。しかし、あんな裏切り方をされて、元サヤに収まるなんて考えられません。断ったにもかかわらず、元婚約者は私との婚姻届を出そうとしましたが、すでに妹と婚姻していたため、重婚は認められず、婚姻届は役所で受理されなかったそうです。駆け落ち前に2人で記入していたそうで、すでに受理済みなのです。解消には離婚届か無効の申し立てが必要だと言われたのだそう。
結局、元婚約者は妹との婚姻関係を継続。妹は「私の粘り勝ちよ!」と大喜びしていたようですが、元婚約者のほうは「もうどうでもいい……」と人生諦めモードに。会社も辞めてしまい、無気力な日々を送っているとのことでした。そんな元婚約者を見て、妹は「これじゃ結婚した意味ないじゃない!」「籍さえ入れればこっちのものだと思ってたのに!」と怒鳴り散らす妹。
一方、私は慰謝料を2人に請求。どちらの両親からも「好きなだけ請求しなさい」と言われているので、弁護士さんと相談して、取れる範囲で最大額を目指すことにしました。
……でも、これから産まれてくる赤ちゃんには、何の罪もありません。親の事情に振り回されず、ごく当たり前の毎日を、ちゃんと笑って過ごせる子になってほしい――そう願わずにはいられません。妹のことはさておき、赤ちゃんは私にとって姪っ子。だから、いつかどこかで会える日が来たら、私なりにかわいがってあげたいと思っています。私はようやく、一歩前に進もうとしています。過去に振り回されるのは、もう終わり。これからは、自分の人生を自分のために歩いていきます。
【取材時期:2025年3月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。