「俺がいなくても嫁としてちゃんとやっているか、浮気していないか、母さんに抜き打ちチェックしてもらわないとな!」と言う夫。私が「知らないうちに勝手にお義母さんが家に入っているなんて普通に嫌だよ!」といくら言っても聞いてくれませんでした。
さらに、義母は義母で「息子の単身赴任が続く限り、抜き打ちチェックは続けるわ!」とやめるつもりはない様子。そして、「キッチンに置いてあった高級そうなワイン、あれは私がもらっておいたからね!」とうちのものを取っていくようになったのです。そのワインは、昇進祝いに私が上司からもらったものなのに……。
単身赴任を終える夫からのサプライズ
義母にワインを取られてから数週間後――。
「ようやく単身赴任が終わるぞ! 喜べ!」と夫から連絡が。夫が帰ってくることはもちろんうれしかったのですが、それ以上に義母の抜き打ちチェックが終わることに安堵を覚えていた私。
「それと、もう1つ……これを機に母さんも俺たちと一緒に住むことになったから」「母さんによると、お前は1人で生活しているだけで汚部屋になるらしいじゃないか」「母さんは俺が戻ってからの生活が心配だから、同居して助けたいって言ってくれたんだぞ!」
私には同居の相談なんて、一言もありませんでした。それに、私は整理整頓は得意なほう。部屋も比較的きれいに保っているはずなのですが、義母にはそうは見えていなかったようです。
「ふざけないで! こんなこと、勝手に決めるなんて許せない!」と言うと、「どうせお前に相談しても同居に反対するだけだろ!だったら相談するだけ時間の無駄だろ」と夫。
「1週間後、俺は帰るから。その日に母さんが引っ越してくるからな!」
「つべこべ言わず、家中掃除して出迎えてあげろよ」
「うん、完璧にしておくね♡」
「え?」
さっきまで怒っていた私が急に素直になったので、夫は驚いた様子。私はというと、実際は怒りに震えていました。そして「それじゃ、その日はまっすぐ帰ってきてね」「ようやく帰ってくるあなたに見せたいものがあるの」と夫に言いました。夫からは、私を小馬鹿にしたように、「なんだよ、気合を入れた出迎えでもしてくれるのか? そこまで言うならまっすぐ帰ってやるよ」と返信がありました。
ほこりひとつないきれいな部屋
そして、1週間後――。
「おい、どうなってるんだこの家は! 家具も家電も何もないじゃないか!母さんはリビングで泣いてるし……」
帰宅した夫が、家の中を見渡して大声をあげました。
「あなたの言うとおりにしただけよ」「『家中掃除して出迎えてあげろ』って言ったわよね? だから、家具と家電は全部、業者に頼んでクリーニングと保管に出したの」
私が説明すると、夫はますます声を荒らげました。
「何言ってんだよ!? 家に何もないってどういうことだ!」
私は夫に説明することにしました。
「部屋の空気もすっきりして、お義母さんも快適に過ごせると思ったんだけど……違ったかしら?」「ちなみに、費用はあなたの口座から引き落としにしてあるから安心して。だって、あなたの希望通りにしたんだもの」「見積もり取ったらそこそこしたけど……お義母さんのためだもんね」
ワナワナと唇を震わす夫を前に、私はさらに続けました。
「お義母さんと、あなたより若い彼氏が触った家具や家電は、もう汚いものだと判断したの。違うかしら?」「お義母さんが誰と付き合おうとそれは自由だけど……でも――息子夫婦の家をデートに使うって、ちょっと非常識すぎるんじゃない?」
義母は、「抜き打ちチェック」と言い張って、若い彼氏をわが家に連れ込んでいました。最近、防犯のために玄関とリビングにカメラを設置していたのですが……まさか、その映像に、義母が若い男性といちゃついている様子までバッチリ映るとは思っていませんでした。
「お、俺より若い男だと……!?」「家デートって……自分の家でやれよ……」と夫。至極まともな意見に聞こえます。
「シャワーも使った形跡があったし、閉めておいたはずの寝室のドアが開いてたの。……そういうこと、でしょ?」
「自分の家でできないから、うちを使っていたのかしら?」
「この間、ワインを取り返しにお義母さんのおうちに行ったんだけど……あれじゃ呼べないわね」「外から見てもただのゴミ屋敷だったもの」「お義母さんが不在だったけど、玄関の前から見える範囲で物が積み上がってて……彼氏に見せられないもの」
さんざん私に「汚い」「片付けろ」と言っていた義母ですが、きれいにしなければならないのは義母の家のほうだったのです。
「あと、寝室の床に離婚届を置いておいたから」「私の分は記入したから、あとはあなたが書いて出しておいてくれる?」と言うと、「そんな……嫌だよ、戻ってきてくれ」「せっかく単身赴任から帰ってきて一緒に過ごせるようになったのに……」「このまま母さんと2人だけで暮らすだなんて、そんなのさみしいじゃないか」としおらしくなった夫。
「そうかしら? 若い男と若い女にハマってる者同士、似た者親子で楽しく生活できるんじゃない?」
「えっ……若い女にハマってる……って……」と、夫の声に焦りが。単身赴任中、私の浮気をさんざん疑っていた夫。しかし、浮気をしていたのは夫のほうだったのです。
「昨日、浮気相手から私に『別れてください』『彼は本当は私と結婚したがってるんです』って連絡があったわよ」「だから、『離婚するのでどうぞお好きなように』って伝えておいたわ」「その家の住所も教えてあげたわよ、すぐに荷物まとめて引っ越すって言っていたからそろそろ来るんじゃない?」
「嘘だろ……!? あいつが、そんな女だったなんて……あいつは単身赴任中のただの遊び相手で……ちゃんときれいさっぱり別れてきたのに」「やっぱり本気だったのはお前なんだよ。浮気なんて、ほんの出来心だったんだ……」「頼む、離婚だけはやめてくれ! 二度と裏切らない、全部謝るから、どうか許してくれよ!」と夫。でも――一度でも平気で裏切れるような人間と、これ以上一緒に生きていくなんて、私には無理です。わめく夫を無視して私は電話を切りました。
その後――。
夫の浮気相手は、その日のうちにルンルンで家にやってきたそうです。私ったら、ついうっかり彼女に義母との同居を伝え忘れてしまっていたようで……義母と浮気相手が鉢合わせ。
「姑と同居なんて聞いてないわよ! 仕事も辞めて引っ越してきたのにどうするのよ!」と言う浮気相手と、「なんだい、この生意気な女は! 嫁には認めないよ!」と言う義母の間で、早くも火花が散ったそうです……。
さらには、義母の若い彼氏まで「俺も一緒に住んでいいって聞いたんだけど? 金に困ってるから本当に助かる」と転がり込んできたんだそう。
夫がその修羅場に呆然としている間に、優秀な弁護士さんに離婚手続きをサポートしていただき、問題なく手続きが進みました。夫からも浮気相手からもしっかりと慰謝料を受け取ることができました。私は心穏やかに、新たな生活を始めようと思います。
【取材時期:2025年4月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。