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40代前半のほてりやイライラを放置するのはNG!日常生活が影響することもある「早期閉経」【医師解説】

40代前半のほてりやイライラ。「更年期にはまだ早いから」と放置していませんか? 実は、その症状は「早期閉経」のサインかもしれません。早期閉経を放っておくと、骨粗しょう症(骨強度の低下により骨折リスクが高まる疾患)や動脈硬化のリスクが高まる可能性も……。この記事では、早期閉経の原因や食生活との関連性、対処法などについて、沢岻美奈子女性医療クリニック院長・沢岻美奈子先生にお話を伺いました。

この記事の監修者
監修者プロファイル

医師沢岻美奈子先生
女性医療クリニック院長

2013年1月に女性スタッフだけで乳がん検診をおこなう沢岻美奈子 女性医療クリニック開院。2022年の1年間で神戸市乳がん検診を約2500件、地元企業様の会社検診や自己検診も含めると約3100件の乳がん検診を実施する。患者さんとのやりとりと通じて日常の診察で感じ考えることを、専門医目線で正しい医療情報としてInstagramに毎週投稿している。
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早期閉経とは?

「早期閉経」とは、一般的な閉経年齢より少し早いタイミングで生理が停止すること。一般的な閉経年齢は50歳前後とされているため、45歳未満で閉経を迎えた場合に早期閉経と診断されます。

 

早発閉経と早期閉経の違い

一方「早発閉経」とは、40歳未満で閉経を迎えること。早期閉経よりも少し早いタイミングですが、実際の診療では早発閉経と早期閉経が厳密に区別されているわけではありません。診断名にこだわるのではなく、実際には患者さんの年齢や症状に合わせた治療がおこなわれます。

 

更年期障害との関連性について

中には自覚症状がない方もいますが、通常、卵巣機能が衰え始めると、月経周期が乱れるほか、ほてりやのぼせ、疲れやすさといった自律神経症状を自覚しやすくなるとされています。これらの自律神経症状は、いわゆる更年期症状と同じです。

 

更年期症状と聞くと、閉経を迎える50歳前後に起こるものとイメージしている方が多いかもしれません。しかし、実際には20~30代の若い年齢層でも、過度のストレスや精神的なショックを受けたときに、生理が止まってしまうケースは珍しくないのです。

 

この場合は、早期閉経というよりも生理不順と見なされますが、将来的に妊娠を希望しているのなら、放置は厳禁。卵巣機能は35歳ごろがピークであり、生理不順をそのままにしておくと、いざ妊娠を考えたときに不妊治療に時間がかかることもあります。気になる方は更年期症状の有無ではなく、生理が止まったタイミングで婦人科に相談することを検討しましょう。

 

早期閉経の特徴的な症状

40代前半のほてりやイライラを放置するのはNG!日常生活が影響することもある「早期閉経」【医師解説】

 

早期閉経では、不眠やほてりなどの身体症状に加えて、イライラや意欲低下などの精神症状が主に見られます。このような症状が起こるのは、女性ホルモンが急激に減少するため。女性ホルモンは、脳にある視床下部の命令を受けて卵巣から分泌されます。視床下部は、ホルモン分泌や精神活動、体温調節などを担う自律神経のコントロールセンターです。

 

しかし、早期閉経になり卵巣機能が衰えると、視床下部がいくら命令しても卵巣機能は反応しません。結果、女性ホルモンが分泌されなくなり、脳がパニックに。これが、早期閉経の症状をもたらすと考えられています。

 

早期閉経を引き起こす要因

早期閉経を引き起こす要因は、主に4つです。

 

1.遺伝的要因(女性にのみ発生する先天性の染色体異常による疾患「ターナー症候群」などの染色体異常)

2.喫煙や食事などの生活習慣

3.ストレスや過度なダイエット歴

4.原因不明

 

食生活とホルモンバランスは一見何の関係もなさそうに思えますが、実は過度な食事制限で無理にダイエットした経験がある方は、早期閉経を引き起こす可能性があります。これは、ダイエットによって人が生きる上で必要なエネルギーまでも不足してしまうため。体重が極端に減ると体は生殖機能を抑制し、生理を止めることで生命活動を維持しようとするのです。

 

また、特に要因がなくても、早期閉経を引き起こしてしまうケースもあります。そのため、これらの項目に当てはまらないからといって、必ずしも早期閉経にならないわけではありません。中には、自覚症状もなく、突然生理が止まってしまう方もいます。

 

 

早期閉経の診断プロセスと治療

40代前半のほてりやイライラを放置するのはNG!日常生活が影響することもある「早期閉経」【医師解説】

 

早期閉経を疑う場合は、沢岻美奈子女性医療クリニックのように、月経トラブルや更年期治療に対応している婦人科を受診しましょう。早期閉経の一般的な診断プロセスは、以下の通りです。

 

診断プロセス

1.血液検査

2.超音波検査

3.骨密度検査

 

血液検査では、FSH(卵胞刺激ホルモン)やエストロゲンなどの値を測定し、卵巣機能を評価します。併せて超音波検査を実施し、子宮や卵巣に異常がないかをチェック。必要に応じて骨密度検査をおこない、骨の硬さや強さを調べることでエストロゲン低下による骨粗しょう症のリスクを判断します。

 

治療や対処法

早期閉経には、いくつかの治療法や対処法があります。

 

・ホルモン補充療法(HRT)

・漢方薬やサプリメント

・生活習慣の改善

・ストレスマネジメントやリラクゼーション法

・メンタルケア

 

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

【ホルモン補充療法(HRT)】

不足している女性ホルモンを、薬で補う治療法です。更年期症状の改善が見込めるほか、性交痛の緩和や骨粗しょう症・動脈硬化性疾患の予防、アルツハイマー病のリスク軽減にも。また、詳しい因果関係はわかっていませんが、大腸がんのリスク低下などにもつながっています。

 

【漢方薬やサプリメント】

ホルモン補充療法が適応にならない場合は、漢方薬やサプリメントで早期閉経に伴う症状の改善を目指します。更年期症状を和らげる漢方薬には加味逍遙散(かみしょうようさん)や桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などがありますが、体質や症状に合わせて選べるのが漢方薬のメリットです。

 

また、エクオールを含むサプリメントの摂取も更年期症状には有用とされています。漢方薬やサプリメントに詳しい医師に相談してみると良いでしょう。

 

【生活習慣の改善】

早期閉経の症状を緩和するには、生活習慣の見直しを。食生活においては、肉や魚介類、卵類などのたんぱく質や、海藻類、豆類、野菜、ナッツ類などのミネラルを中心に、鉄やビタミン類などの不足しがちな栄養素を積極的に摂取するようにしましょう。

 

また、睡眠に問題を抱えている方は、カフェインやアルコールの摂取にも気を付けたいところ。特に、カフェインの効き目は2~3日続くといわれています。一度やめてみると不眠が解消されるかもしれません。

 

そのほか、適度な運動を取り入れるのもおすすめです。本格的なスポーツでなくても、ヨガや散歩など、無理なく続けられる運動を習慣にしてみましょう。

 

【ストレスマネジメントやリラクゼーション法】

イライラや落ち込みといった精神症状には、「1:2呼吸法」が有用です。1:2呼吸法とは、5秒間息を吸い、10秒かけて吐き出すというように、1:2の比率でゆっくりと呼吸すること。深呼吸には、副交感神経を高め、リラックス状態に導くメリットが期待できます。イライラや不安感が強い方は、1日の中で呼吸に集中する時間を作ってみると良いかもしれません。

 

【メンタルケア】

趣味や楽しみ、生きがいを見つけるのもおすすめ。卵巣機能が低下し、ホルモンバランスが乱れると、気分が落ち込んだりやる気が出なくなったりすることがあります。しかし、趣味や楽しみ、生きがいがあれば、毎日を前向きな気持ちで過ごせるように。ボランティアや旅行、習い事など、興味があることに積極的にチャレンジしてみることが大切です。

 

早期閉経と診断されたら?40代からのライフプラン

40代前半のほてりやイライラを放置するのはNG!日常生活が影響することもある「早期閉経」【医師解説】

 

通常よりも少し早いタイミングで閉経と診断されると、女性としての役割が終わってしまったかのような喪失感を覚えるかもしれません。しかし、40~50代は人生の折り返し地点に差しかかったばかり。改めて自分自身と向き合い、人生の後半戦をいかに過ごすかを考えるために、ちょうど良いタイミングといえます。仕事・家族・生きがいの3つに分けて、今後のライフプランを再考してみましょう。

 

【仕事】

・早期閉経の症状が強い場合は、治療しながらキャリアを諦めない道を探る

・上司に業務内容の見直しを相談する

・無理なく働けるよう、キャリアチェンジを目指す

 

【家族】

・性交痛がある場合は、パートナーに相談する

・パートナーに早期閉経について理解してもらう

・家事がしんどいときは、家族にサポートをお願いする

・これまで以上に、家族の関係を深めるための時間を設ける

 

【生きがい】

・体の変化を受け止め、自分に合うライフスタイルを見つける

・人生の後半戦でやってみたいことを書きだし、一つずつ挑戦する

・習い事を始める

・新しい趣味を作る

 

閉経は女性にとって大きな変化ですが、乗り越えられない問題ではありません。これまで以上に充実した人生を送るには、閉経したことを悲観的に捉えるのではなく、周囲のサポートを受けながら自分らしい生き方を見つけていくことが何よりも大切なのです。

 

まとめ

早期閉経と診断されても、人生はまだまだ長い道のりが続きます。たしかに、体や心が変化していくことは、大きな不安につながるかもしれません。しかし、早期閉経は決して“終わり”ではなく、人生を仕切り直すスタートラインのようなもの。症状がつらいときには、家族に頼ったり医療の力を借りたりしながら、自分が前向きに過ごせる方法を探っていきましょう。

 

※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。

 

 

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取材・文/生垣育美

産科・婦人科領域の医療現場において医師の事務作業を専門にサポートする産婦人科ドクターズクラークとしての勤務を経て、第1子出産をきっかけにWebライターへ転身。夫・息子と3人暮らし。やんちゃな息子に振り回されながら、なんとか仕事と家庭を両立させる日々……。

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