花嫁修行という名の嫁いびりは壮絶でした。ほぼ毎日、義実家に呼ばれ奴隷のようにこき使われ、ありとあらゆる雑用を言いつけられたのです。ほんのわずかでも意見しようものなら「学のない頭で考えるな」「片親だからしつけがなってない」などと、罵詈雑言の嵐。私は家族ではないと言われ、話しかけることさえも許されていません。
しかし、そんな花嫁修行も妊娠したことで継続が難しくなりました。夫と相談して、義家族へは折りを見て報告しようということになったため、妊娠したことは伏せて、体調がすぐれないため少しの間、花嫁修業を休ませてほしいと義母にお願いした私。
すると義母は「あんたなんかと結婚すると言い出す前に、息子にさっさと見合いをさせておけばよかった」「俗っぽい女がうちの跡取りと釣り合うわけがない」「体調が悪いって変な病気にでもかかっているんじゃないの」と、それはもうひどい言いようで……。
怖いくらいに私にやさしく接する義母
それから2週間後、義実家で法事が行われることに。
私はまだ体調がすぐれず、花嫁修業は再開できていませんでしたが、1日くらいなら大丈夫だろうと、参加することにしました。そもそも義母から「家の行事には病気でも参加してもらう」と言われていたので、私に参加しないという選択肢はなかったのですが……。
法事当日、なんと義母は「体調は大丈夫?」「無理はしないでね」と、私をいたわり、心配する言葉をかけてきたのです。本当にあの義母と同一人物なのか疑うほど、やさしくされて私は何だか違和感を覚えました。
気を遣ってくれたのか、「法事が終わったらすぐ帰っていいからね」と言われた私。夫は義姉の結婚のことで話があるそうで、残ってほしいと言われていました。私も一緒に話を聞きたかったのですが、「体調が悪くなっては私が息子に怒られるから」と義母に言われ、法事の後は、夫を残して私だけ先に帰宅することになったのです。
しかし、やはり私は、義家族から心底嫌われてるのだと痛感する出来事が起こりました。みんなで食事をしている最中、親戚の方からお酒を勧められた私。やんわりと断っていたのですが、しつこく勧められて困っていました。
すると夫が、「報告は安定期に入ってからと思っていたのですが、妻は妊娠中で」と断ってくれたのです。すると、それを聞きつけた義家族が、親戚の方々も驚くほどあからさまに私を無視し始めました。
そんな異様な空気のまま法事は終わり、約束通り夫を残し、私だけひとり先に帰宅したのです。
「下品な女ね。妊娠を喜ぶとでも?」
「大事な息子の子を宿してるなんて考えただけでも吐き気がする」
翌日、義母から私に連絡が入りました。法事の席で妊娠報告をした私は、非常識で下品極まりない。親族が集まっているときにわざわざひけらかすなんて、承認欲求が強すぎる。気持ちが悪い。などとひどい言葉が次々と送られてきて……。
最終的には、離婚して出ていけとまで言われました。妊娠報告をしたのは、私ではなく夫。もちろん、注目されたかったわけでもありません。
法事の後、私だけ先に帰らせた理由
私が義母からの言葉に怯え、スマホを見てあ然としていると、夫が「貸して」と言って私のスマホで返信しました。
「あなたみたいな人間と血が繋がってると思うと吐き気がするよ」
実は昨日の法事の後、義母から話があると言われ残された夫は、なんとお見合いをさせられていたのです。騙されてお見合いさせられた夫は、ひどく怒って帰宅しました。
義母は私たちを離婚させるつもりで、夫のお見合い話を進めていたのです。私の体調を気遣って心配したそぶりをしていたのも、ただ私を先に帰らせるため。
「え?」
私からの返信ではないと気付き、一瞬動揺した義母でしたが、お見合いの席で次に会う約束もしたし、夫は私との別れを決めたのだと言ってきました。しかし、また会う約束を取り付けたのは義母で、夫は私と別れるつもりもありません。夫が別れるのは、私ではなく義母と義母の言いなりの義家族。夫は義家族に絶縁を宣言しました。
義母はすぐに『うちの大事な跡取り』と言いますが、夫が継げるものは義実家と名字くらいなもの。義実家は代々、旅館を経営していましたが、経営が悪化し義父の代で廃業しています。長男である夫が、きっと旅館を復活させてくれるはずと義家族から期待されているだけで、夫は今の仕事を辞める気もなく、そんな野望も一切ありません。
夫はすでに、義家族の連絡先をブロックしています。そのため、夫が絶縁を言い渡して以降、義母は私に、夫と話がしたいとしつこく連絡してきます。もちろん、夫は断固拒否。絶縁を諦められない義母は、私たちが済むマンションや私の実家にまで押しかけてくるようになりました。
そのため、私たち夫婦は義家族に知られないよう、黙って引っ越すことに……。
息子のためと言いながら結局は…
こんなにも義母が必死になっているのは、お金のため。廃業し、借金を抱えた義父が、なかなか再就職できないため、生活は夫の仕送り頼みでしたが、夫が縁を切ったことで仕送りもなくなり、生活に困っているのです。
夫から丁寧にお断りしましたが、お見合いもお金のためでした。お見合い相手は裕福な家柄で、結婚した暁には生活費と旅館再開の援助をしてくれるという約束だったようです。夫のためだなんて言っておきながら、結局は自分たちのためだったのです。
義母は、何度も謝罪してきて、私たちの結婚を祝福すべきだった、初産の私をサポートしたいと、心にもないことを言ってきます。反省しているから、義父の仕事が見つかり生活が安定するまで支援してほしいと……。とても反省している人の言葉とは思えませんし、もう謝っても後悔しても遅いのです。
最後に『短い間でしたがお世話になりました』とだけ告げ、私も義母を含めた義家族の連絡先をブロックして、完全に縁を切りました。その後、無事に第一子が誕生。今は幸せいっぱいの毎日を過ごしています。これからも大切な家族とともに、楽しい時間を過ごしていこうと思います!
◇ ◇ ◇
身勝手な都合で子どもを支配しようとすれば、最も大切な絆さえ失ってしまいます。血の繋がりや家柄ではなく、お互いを尊重し、思いやることこそが、家族の礎となるべきなのではないでしょうか。理不尽な関係には勇気を持って別れを告げること。それが、自分たちの幸せを守るための第一歩なのかもしれませんね。この先、家族3人の未来にたくさんの幸せが続くことを願うばかりです。
【取材時期:2025年6月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。