傲慢なエリートA男
「こちらね、今月から入社したA男くん」
上司に紹介された中途採用のA男は、名門大学出身で大企業勤務歴もあるというエリート。「やってやるぜ! 俺の力でこの会社を激変させる!」と、自信満々どころか空気を読まないハイテンションぶりで、私たちはぼうぜんです。それでも、優秀な人材が入るのは歓迎すべきことだと期待していました。
しかし、その期待はすぐに裏切られることになったのです。
「この会社には俺みたいな名門大出身の社員はいないんだな。つまり低学歴の集まりってやつか」と吐き捨てたA男は、私に学歴を尋ねました。
「私は中卒だけど……」。実は、私は家庭の事情で中学卒業後すぐに就職。その後仕事を転々としていた時期があったのです。
「は? 高校も出ていない? ありえね~」と指を差して笑うA男。何も知らない彼は、学歴を唯一の物差しにして人を見下し始めたのでした……。
嫌がらせがスタート
A男は、私を標的にした様子。無神経な言動はエスカレートし、ことあるごとに「中卒のくせに」と侮辱してくるのです。さらには、「この会社も裏口入社だろ」などと根拠のない中傷を連発。私は、こんな幼稚な暴言はスルーするのが一番と無視し続けました。ところがある朝……。
上司から「君、昨晩退職届を出したのか?」と問いただされ、仰天です。もちろん、そんなものは出していません。話を聞いて、どうやら何者かが私になりすまし、退職届を提出したということが判明しました。犯人はおそらくA男。昨晩残っていたのは彼だけでしたし、ニヤニヤしながら私を見て、「まぐれで入れた会社にすがりついている中卒女は辞めるのが一番」と言ってのけたからです。
物的証拠がないためA男のことは言えませんでしたが、「私は辞めるつもりは一切ありません」と上司に宣言しました。
その後も彼は陰湿な嫌がらせを続け、私に仕事を押し付けてはミスをなすりつけてきました。いよいよストレスがMAXになった私は、兄に相談する決意を固めました。
負けるな私!
実は兄も中卒でしたが、独学で極めたIT系の仕事で成功し、起業家としてバリバリ稼いでいました。そんな兄が、私の話を聞いてひと言。
「そんなやつは今まで通り無視して、結果で見返せ! 人望と人脈があるお前ならできる!」
この力強い言葉に、私は大きな勇気をもらいました。学歴など関係なく、自分の力を信じて仕事にまい進すべきだと改めて実感し、A男の幼稚な嫌がらせを完全無視。目の前の業務に集中するようにしました。同時に、社内の気になる動きにも目を光らせるように。実力主義のこの職場で、自分の力を証明するには、結果を出すしかない——。そう腹をくくった私は、日々忙殺されながらも、やりがいを感じ始めました。
「もう弱音を吐く暇もないくらい頑張ってやるわ!」と心に誓い、数カ月が過ぎたころ……。ついに大きな転機が訪れたのです。
そう、私は密かに反撃の準備を整えていました。
大口契約を自慢され…
ある日A男が、「俺がまとめた契約、3億だぜ~♪」と上機嫌で自慢。無視を貫く私に、なんとその契約書を投げつけてきたのです。そこで私は淡々と返しました。
「あらそう。こっちは5億だよ?」と。
「は……?」とA男がうろたえているところに、上司がニコニコしながら登場しました。
「いや~、彼女のおかげで今後のわが社の発展が楽しみだ! 真面目で気が利いて、お客様のニーズをばっちりつかんでくれたから、5億の契約が成立したんだな」
A男は信じられない様子で、「この女が5億の契約?」と絶叫。挙句に、上司の目の前で、「中卒のお前が大口契約なんて取れるわけねーだろ! どんな汚い手を使ったんだよ? 」と言ったのです。
私は、特大ブーメランをお見舞いしてやることにしました。
「あら、それはこっちのセリフよ? たたけばホコリが出るのはあなたのほうでしょ。私は不正なんて発想すらしたことがないから、想像もつかないけれど……。汚い手を使っているのは、そっちよね」
学歴だけでは得られない人脈
「私は社歴が長いから、いろいろな部署に知り合いがいてね。経理の子が困っていたのよ、うちの部署だけお金の流れがおかしいって。それで、私も協力して調べてみたら……。誰かさんが大口契約をゲットするために、会社のお金を勝手に使って高額の接待や贈り物をしていたみたいなのよね」
A男は真っ赤になったり真っ青になったりしながら、あぐあぐうなっています。
「ちなみに私、人事にも仲の良い友人がいてね。誰かさんの学歴が怪しいって言うから調べたら、有名大卒のはずが違うじゃない。前職の企業名も偽証だった。私の退職届を勝手に提出したのもあなたよね?」
ここまで黙って聞いていた上司は、ついに激怒しました。「今の話は本当か?」
「え、と、それは、その……」
「君は、とんでもないことをして契約を取っているようだな? 高額接待に賄賂? 学歴詐称をした上に、先輩の退職届を捏造? 君のことは徹底調査して後日処分を決めるから、自宅待機していなさい」
数日後。上司の話によると、調査の結果、A男の悪行が次々に判明。経理や人事の担当者たちが証言し、証拠も出てきたのです。当然ながら、彼が決めた3憶の契約は白紙に。相手方ともよく話し、警察沙汰にしない代わりに、A男は会社にお金を返済させられ、自主退職という形で辞めていきました。
一方の私は、その後も別の大口契約を取ることができ、なんと会社から表彰されました。もちろん誠実な営業活動の成果です。これからもバリバリ頑張っていきたいと思います。
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学歴自慢だけでなく数々の嫌がらせをしていたA男は、かなりのブラックな人物でしたね。結末も身から出たサビ。会社としては、法的にもギリギリだったかもしれませんが、早々に判明してよかったですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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