初の海外旅行にワクワクしていた母
当時20代であった母と友人は、初の海外旅行にワクワクしながら飛行機に乗り込みました。機内でも旅行の計画についておしゃべりに花を咲かせたり、日本とは違うメニューや味付けの機内食にはしゃいだり、途中、給油でシンガポールに寄った際にも買い物を楽しんだりと、オーストラリアに到着する前から休暇を楽しんでいました。
空港で出迎えたのは警察犬!
オーストラリアに到着すると、飛行機から降りる乗客を出迎えるように、大勢の現地警官と警察犬が左右に並んでいました。利発そうな顔をした大きなシェパード(警察犬)の姿を初めて間近で見た動物好きの母と友人は、これから起きる出来事など予想もせずに「かわいい!」と大喜び。
なんだか物々しい雰囲気の中、警官の間を1人ずつ通りながら先に進んでいくようにという案内にも、母と友人は海外旅行が初めてだったゆえに「海外は全部こんなものなのかしら?」と、何も疑問に思いませんでした。この状況も異文化に接する旅の貴重な経験と言わんばかりに、自分たちの順番を待ちました。
列も進んでいく中、それまでおとなしくおすわりをしていた警察犬が突然激しく吠えて暴れだし、同時に乗客の1人が警官に取り押さえられました。
後に聞くところによると、給油で寄ったシンガポールから麻薬の密売人が母たちの乗っていた飛行機に乗り合わせており、その情報を入手していた現地警官たちが大勢待機していた、ということだったらしいのです。
この時点で初めて、母と友人は「イレギュラーな事態が起こっている」ことにようやく気が付きました。
警察犬にまさかの反応
母と友人がいよいよ警官の前を通る番になりました。当然やましいことはないので堂々と通過しようとすると、なんと先ほど吠えていた警察犬が、友人の持っていた紙袋に近づいてきて顔を紙袋の中に突っ込んだまま静止したのです。
一瞬でその場の空気がピリピリとしたものに変わり、背筋に冷たい汗を感じました。でも、言葉は通じないかもしれないけれど、態度であれば伝わると思った母と友人は、「やましいことは一切ありません!」と言葉にするかのように胸を張り、堂々とした態度を取るようにしました。
その後、しばらくしても警察犬が先ほどのように激しく吠えることもなく、ただずっと紙袋の中に頭を突っ込んだままであることを不思議に思った警官が中身をそっと確認すると、中には機内で出たハンバーガーが入っていました。
友人もハンバーガーを入れていたことは失念しており、勇ましい警察犬のなんともいえない、かわいらしい”失敗”に、その場の雰囲気は一気に和やかなものに変わりました。母と友人は無事、オーストラリア国内へ迎え入れていただくことができました。
ただ、さすがというべきでしょうか。そのハンバーガーには一切口をつけられていなかったそうです。
まとめ
とっさの事態であっても毅然(きぜん)とした態度で正当性を主張したという母と友人の話を聞き、もし私だったらきっと、不安からパニックになってオロオロとしてしまい、結果的に無罪であっても、何倍もの時間や手間がかかっていたのではないかと感じました。
現在、年老いた母からも「もっとどっしりと、物腰・態度を構えなさい」とアドバイスを受けることがあります。当時の母たちの年から考えれば、倍くらいは生きている私ですが、どうすれば「堂々とできるのか」を考えて、今後も年を重ねていきたいと思っています。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
著者:磯辺みなほ/30代女性。ゲーマー。発達障害持ちの夫と2人暮らし。大変なことも多い中、それ以上にネタと笑顔にあふれる毎日を送っている
イラスト/マメ美
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年5月)
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