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人工授精をするのはどんな時?流れや成功率は?健康保険は適用される?

この記事では人口受精(AIH)について、医師監修のもと解説します。人工授精は、排卵日を予測し、排卵の少し前から排卵直後までの期間に子宮内に人工的に精子を注入し、受精がおこなわれる卵管膨大部に到達する精子の数を増加させることで妊娠の確率を上げる方法です。

この記事の監修者
監修者プロファイル

医師福岡 正恒 先生
産婦人科 | 産婦人科医

京都大学医学部卒。同大学院修了後、京都大学助手、講師を経て、平成11年より産科婦人科福岡医院院長。京都大学在職中は、婦人科病棟や産科病棟などを担当。またこの間、英国エジンバラ大学・生殖生物学研究所に留学。日本産科婦人科学会・産婦人科専門医、京都大学医学博士。
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治療のイメージ

 

不妊症の原因はさまざまで、治療も簡便なものから段階を追っておこなわれます。タイミング法や卵巣刺激で妊娠に至らなかった場合、人工授精(AIH)へステップアップします。今回は、人工授精(AIH)についてくわしく解説します。

 

人工授精とは?

人工授精は、排卵日を予測し、排卵の少し前から排卵直後までの期間に子宮内に人工的に精子を注入し、受精がおこなわれる卵管膨大部に到達する精子の数を増加させることで妊娠の確率を上げる方法です。

 

人工授精では採取された精液をそのまま使うのではなく、受精能力の高い精子を選別・濃縮して使います。また、無排卵の場合、あるいは排卵がある場合でも妊娠の確立を上げる目的で排卵誘発剤を使って排卵誘発をおこなう場合もあります。

 

現在日本で認可されている方法として、AIH(配偶者間人工授精)とADH(非配偶者間人工授精:夫以外の男性から提供された精子を用いた人工授精)があります。ただし、ADHは、この方法以外妊娠の可能性がない、あるいはこの方法以外で妊娠した場合、母子に重大な危険が及ぶと判断された場合にのみおこなわれます。

 

人工授精(AIH)の対象となるケース

人工授精(AIH)の場合、精子が子宮の中に入って以降の過程は、通常の授精までと同じなので、卵管閉塞など卵管に問題がある場合、人工授精(AIH)の対象にはなりません。人工授精(AIH)の対象となるのは以下のようなケースです。

 

●男性因子
 ・乏精子症(1,500 x 10⁴/ml以下)
 ・精子無力症(運動率40%以下)
 ・性機能障害(勃起不全、逆行性射精)
●頸管粘液分泌不全
●抗精子抗体保有
●性交障害(強度の腟狭窄、腟けいれん、陰茎の変形)
●原因不明の不妊(タイミング法からのステップアップ)

 

人工授精(AIH)の流れ

●人工授精(AIH)当日まで
排卵誘発をおこなう場合は、生理終了前後から内服または注射が開始されます。排卵誘発剤により卵巣を刺激をすることで、「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」をきたす可能性があるので、注意が必要です。

(注:内服薬は月経周期5日目より開始)

 

そして定期的に受診し、尿検査、血液検査、超音波検査などをおこない、排卵日を予測し、人工授精(AIH)の日程を決めます。施設によっては、排卵のきっかけを作り出す薬剤であるhCGを注射する場合がありますが、その場合はhCG投与後34~40時間に人工授精(AIH)をおこないます。

 

人工授精(AIH)の日程が決まったら、夫婦で体調管理を万全にしましょう。風邪予防したり、睡眠をきちんと取る、バランスの良い食生活を過ごす、体を冷やさないように冷たい飲食は控えるなど、生活習慣を整えることも大切です。男性は人工授精(AIH)前の3~5日間は禁欲期間となります。

 

●人工授精(AIH)当日
人工授精(AIH)当日、男性は自宅、もしくは病院でマスターベーションにより所定の容器に精液を採取します。自宅で精液を採取する場合は2時間以内に受診します。そして、採取された精液から受精能力の高い精子を選別し、不要な物質の除去をおこない、濃縮した状態で使用されます。

 

精子の準備ができたら、排尿を済ませ、内診台に上がります。超音波で卵胞を確認したあと、腟内を洗浄し、専用のカテーテルに精液がはいった注射器を接続して、精子を子宮内に注入します。5~15分程安静にして終了です。場合によっては、出血、痛みが生じることもあります。また、感染予防のために抗生剤が処方されることもあります。

 

●人工授精(AIH)後
人工授精(AIH)後、排卵と黄体機能の確認をします。状況によってプロゲステロンやhCGの投与(黄体補充)をおこなう場合もあります。そして生理開始予定日を過ぎても生理が来ない場合、妊娠判定をおこないます。

 

人工授精(AIH)の際の通院日や通院回数は施設によって異なります。あらかじめスケジュールを確認しておくと安心です。

 

人工授精(AIH)の成功率は?

人工受精は、受精能力の高い精子を選別し、精子が子宮内にたどり着くまでの過程を省略することで妊娠の確率を上げる方法です。ですので、人工授精(AIH)をおこなったからといって劇的に妊娠率が上昇するというわけではありません。自然妊娠同様、女性の年齢が高くなるにつれて妊娠率は低くなる傾向にあります。

 

一般的に人工授精(AIH)の治療期間は6周期程度の施設が多いようです。乏精子症など、男性側の要因による不妊のために人工授精(AIH)をおこなった場合、3~6回人工授精(AIH)をおこなって、妊娠に至らない場合は体外受精や顕微授精にステップアップします。また、原因不明の不妊では、希望に応じて6周期以上のおこなう場合もあるようですが、女性が35歳以上の場合は、早い段階でステップアップするようです。

 

人工授精(AIH)の費用について

人工授精(AIH)自体の費用は、健康保険適用外です。クロミッドなどの排卵誘発剤の内服や注射は、健康保険がほとんど適用されます。病院によってかかる費用が異なるので、確認するとよいでしょう。

 

まとめ

晩婚化にともない、不妊治療を受ける夫婦の年齢層が上昇してきているため、妊娠する確率が低いとも言われています。人工授精(AIH)はタイミング法からのステップアップとして選択されることが多い治療法です。不妊治療を始めても、なかなか赤ちゃんを授からない場合もあります。どの方法をどの適度の期間実践するのかなど、夫婦で話し合い、医療機関に相談し、納得されたうえで治療を続けていくことが必要です。

 


※参考:『病気が見えるVol.9 婦人科・乳腺外科』(メディックメディア)

 

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