女性の「排卵」と男性の「射精」
結婚したら、そのうち自然に妊娠するもの……と思っていませんか?
ところが、なかなか妊娠しなくて、「あれ、また生理が来ちゃった」。そして、気がついたら1年経っていた……なんてことも。これから妊活をスタートする人、妊活中の人は、ぜひ妊娠のメカニズムを知っておきましょう。
女性の体にある卵巣には卵子の元(原始卵胞)があり、毎月、「排卵」に向けていくつかの卵子が育っていきます。そのうちのひとつが大きく育ち、卵巣から飛び出します。これが「排卵」です。卵子が育つのも排卵するのも、ホルモンの働きによって起こります。
排卵した卵子は、卵管の先から取り込まれて、卵管膨大部に進み、そこで精子を待ちます。卵子が受精できるのは、約24時間と言われます。一方、男性のほうは、陰嚢の中にある精巣で毎日、膨大な数の精子がつくられています。
たくさんの精子、「受精」できるのはひとつだけ
排卵のころ、セックスによって「射精」された精子は、腟から子宮へ、そしてその先にある卵管へと向かいます。膨大な数の精子が放出されたものの、精子にとっては長いみ道のり、途中でどんどん脱落していきます。また、射精された精子の寿命は48〜72時間程度と言われます。その間に、卵子にたどりつかなくてはいけません。
子宮につながった卵管は左右に1つずつあり、どちらかの卵管に卵子が待っています。精子が左右どちらの卵管に進むのか、これも運命の分かれ道です。そして、やっと卵管膨大部までたどりついた精子たち。ひとつの精子が卵子にアタックして合体すると、他の精子は入れなくなります。精子と卵子がひとつになること、それが「受精」です。
ふかふかベッドの子宮内膜に「着床」
受精卵は、細胞分裂を繰り返しながら、卵管から子宮へと移動していきます。このとき子宮では、ホルモンの影響で子宮内膜が厚くなっています。それは、まるでふかふかのベッドのよう。
子宮に受精卵がたどりつき、子宮内膜に潜り込んで根をはるのが「着床」。つまり、妊娠です。着床から出産まで約260日、赤ちゃんは子宮の中で育ちます。もしも妊娠しなければ、子宮内膜ははがれ落ちて体外に排出されます。それが生理(月経)です。
妊娠までのプロセスは複雑&神秘的
妊娠までのプロセスは、大きくとらえると「排卵」「射精」「受精」「着床」の4つです。これらが絶妙のタイミングでうまく重なって、初めて妊娠するのです。ということは、どこか1つでもうまくいかないと、妊娠には至らないということになります。
女性はちゃんと排卵しているか、卵管は通っているか、男性は元気な精子がたくさんいるか、精子は卵管までたどりついて受精したか、受精卵は細胞分裂したか、着床はうまくいったか……。細かく考えていくと、妊娠までには、たくさんのハードルがあります。もちろん、たまたまタイミングが合わなかった、というケースもあるでしょう。
たったひとつの精子と卵子が出会って、“命”になる。それは、とても神秘的なことではないでしょうか。
チャンスを生かすタイミング法
精子は毎日つくられますが、卵子は生まれたときに数が決まっていて、増えることはありません。
最近は「卵子の老化」という言葉も耳にします。加齢とともに卵子の数が減っていったり、正常な卵子が排卵される可能性が下がっていったりするのですが、そうした状況も妊娠しにくさに影響していると考えられます。
そして、排卵はだいたい月1回。そのチャンスをうまく生かそうと、排卵日近くに性交渉を持つ「タイミング法」にトライするカップルも多いものです。とはいえ、排卵日の特定は自分では難しいこともあり、また排卵日を勘違いしている場合もあります。基礎体温を計り、自分の月経周期を把握するとともに何度かトライしても妊娠しないときは、産婦人科で相談してみるといいでしょう。もしかすると、タイミング以外のなんらかの問題が隠れているかもしれません。

監修者・著者
助産師 REIKO
医療短期大学専攻科(助産学専攻)卒業後、大学附属病院NICU・産婦人科病棟勤務。 大学附属病院で助産師をしながら、私立大学大学院医療看護学研究科修士課程修了。その後、私立大学看護学部母性看護学助教を経て、現在ベビーカレンダーで医療系の記事執筆・監修に携わる。

著者
ライター 高井紀子
NPO法人Fineスタッフ
北海道生まれ。編集者・ライター。広報誌、雑誌、書籍、ウェブサイトなどで、妊活や不妊治療に関する企画・記事を数多く手がける。不妊体験者を支援するNPO法人Fineスタッフ。コミュニティFM「渋谷ラジオ」に出演中。趣味は月を見ること、温泉めぐり、ボルダリングなど。健康マスター(ベーシック)。
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