幼少期の思い出
「ねぇ! 今度はブランコに乗ろ!」
「わかったわかった。ブランコは逃げないんだから、そんなに引っ張らないでよA子」
5歳年下のA子は、幼いころからずっと一緒に遊んできた幼なじみです。A子はとある企業の社長の一人娘で、幼いころからどこか特別な雰囲気を持っていました。
ブランコに並んで座ると、A子がぽつりと言いました。
「私を助けてくれるのはあなただけでしょ?」
「幼なじみなんだから当然だろ」
あのとき握った小さな手の温もりは、今も忘れられません。
再会と職場での挑戦
現在、僕は生活用品メーカーのマーケティング部に所属しています。主任を任され、新入社員の研修や会議の進行も担当する立場になりました。
そんなとき、新入社員として入社してきたのが、他ならぬA子でした。彼女はこの企業の社長の娘。そう、僕はA子の父が社長を務める会社で働いているのです。
昔からの知り合いということでA子を気にかけているのですが……A子は実は人見知りをするタイプです。昔から周りの人と話をすることが苦手で、僕以外に本心をさらけ出せる人はいないかもしれません。そのため、会社でも同僚との距離をなかなか縮められていない様子。
特に、別部署のBさんとはぎこちない関係でした。
「Bさん、私に話しかけるときには、先に主任に話を通してくれます?」
「えぇ…? なんでそんなに冷たいわけ?」
僕は彼女の態度を見て、同僚との橋渡しをする必要があると感じました。
社会人としての成長
ある日、僕はA子を会議室に呼び出しました。
「Bさんへの態度だけど…先輩にあんな態度をとったらダメだよ」
A子は一瞬不満げな顔をしましたが、やがてゆっくりと話し始めました。
「私に近づく人は、たとえ仕事であっても肩書きやお金だけを見ているように感じるの。ありのままの私を見てくれるのはあなただけ…」僕は幼なじみとしての彼女の気持ちを理解していましたが、同時に社会人として独り立ちしてほしいと思っていました。
「コミュニケーションが足りていないのもあるかな? 僕がサポートするから、少しずつでいい。他の社員とも話してみよう」
A子はしぶしぶ頷きましたが、その決意が後に大きな成果を生むことになります。
新しい一歩と才能の開花
数日後、A子が作成した市場分析資料が社内で話題になりました。
「この競合分析、すごく的確だね!」
「ブランドメッセージの案もすごく良いわ」
A子はコミュニケーションをとることは苦手でしたが、仕事はとても丁寧で、優秀だということを僕は知っていました。彼女は恥ずかしそうにしながらも、社員たちと会話を交わすようになりました。僕は遠くからそっと親指を立てて彼女を応援しました。
さらに、海外展開を視野に入れているプロジェクトの会議で、彼女の留学経験と知識が光りました。
「海外はエコやサステナビリティへの意識が高い傾向にあるの。販売する国の文化に合わせてコピーライティングを調整するべきだわ」
その堂々とした意見に、会議室は一瞬静まり返り、次の瞬間には大きな称賛の声が上がりました。僕が「周りと話したほうが良い」というアドバイスをしてから、彼女はあっという間に打ち解けたようです。
Bとの対立と真実
しかし、そんな中でもBとの軋轢は続いていました。どうしてそんなにBのことを嫌うのか聞いてみると衝撃の事実が。
「だって、Bは自分のSNSであなたの悪口を大量に書き込んでいるのよ。会社の評判が悪くなるようなことだって…」
Bは自分のSNSを使い、会社の主任は全然仕事をしていないで遊んでばかり、A子も社長令嬢だから調子に乗るな、というような内容を書き込んでいたのです。
「A子さんは主任とばかり…」BはどうやらA子が僕とばかり話していることに嫉妬したようでした。
「Bさんは、社長令嬢である私を自分の立場をよくするために利用しようとしているのではないかしら?」
A子は、Bが社長令嬢であるA子と近づき、社長とのつながりを得ようと話しているところを目撃していたのです。「あいつを落とせば、俺の将来も安泰かなw」と同僚に話していたようです。僕もBに言いました。
「自分の立場のためだけに人を利用しようとする人は、仲良くなれなくて当然じゃないですかね」
毅然とした態度で伝えると、Bは静かに頷いていました。
幼なじみの支え
Bの思惑とSNSでの投稿が社内に広まると、みんなA子の味方をしてくれたようです。
自分の好き勝手に行動していたBは、社内で白い目で見られるように。今ではA子にしつこく話しかけることもなくおとなしく仕事をしているようです。
Bの一件が落ち着いたころ、A子は職場の仲間たちと楽しそうにランチに行くようになっていました。
「もっと部署内で交流しましょうよ!」
「はい、私で良ければ喜んで…!」
僕はそんな彼女の姿を見て、心の底から安堵しました。しかし同時に、どこか少しだけ寂しさも感じていました。
すると、彼女がこっそり僕の耳元で囁きました。
「会社で楽しく過ごせるようになっても、私の一番はあなただよ?」
その言葉に、胸が熱くなるのを感じました。
幼なじみとして支え続けた彼女が、職場で自分の力を発揮し、仲間に認められていく姿は何よりうれしいものでした。彼女が前に進めるのなら、僕はこれからも隣で見守り続けたいと思います。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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