察してくれない夫
娘が生まれてから、夫は「察してほしい」ということが増えてきました。ある日、私がリビングで家事をしていると、夫がスマホを指差し「充電してくれた?」というのです。 私は「充電?してないよ?」と答えると、夫は不機嫌そうに「はぁ?察してよ!」とブチギレし始めたのです。そして「妻なら気づいて当たり前!」と言い張るのです。その言葉に私は「いくら妻でも……言わないとわかる訳ないじゃない!」と理不尽さを覚えました。
さらに別の日、朝、くしゃみをしていた夫。しかし、特に不調というわけでもなかったのでいつも通り接していると急に不機嫌に……。理由を聞くと「察してよ」とひと言。よくよく聞いてみると「くしゃみをしてるんだから、風邪薬を用意して持ってくるのが当然だ!」と言うのです。 私はそのたびに、「そんなの、わからないよ……」と心の中でつぶやきながらも、そのたびに私は黙って対応し続けました。
この察してばかりの日々が日常化してから、夫との会話は減り、常に地雷を踏まないように気を使う毎日。何をしても怒られ、何もしなくても怒られる……。そんな日々に、私はすっかり疲れ切っていました。
誕生日のこと、そして決意
夫の誕生日が近づいたある日、私はさりげなく「誕生日当日、何か食べたいものある?」と夫に尋ねました。すると夫はいつも通り「任せるよ」のひと言。私は心の中で「絶対、当日になって文句言うじゃん……」と思いつつ、近所のファミレスを予約しました。
そして当日。仕事帰りの夫と駅で待ち合わせをして、店の前に着くと夫が「はぁ!?なんでファミレス?」と顔をしかめるのです。そして「寿司がよかった!もう帰る!」と文句を言い出したのです。私が「え?任せるって言ったよね?」と言うと、「俺が最近寿司を食べてないの知ってるだろ?食べたいって察してくれてもいいだろ!」と言い放ったのです。私が「言わなきゃわからないでしょ」と言い返すと、夫は舌打ちし、1人で帰ってしまったのです。
私は呆然と立ち尽くしましたが、隣にいた娘が私の手を握って「ママ、予約してるんでしょ?せっかくだからご飯食べよ」と言ってくれたのです。娘と2人でファミレスに入ると、私のスマホが震えました。画面を見ると「もう駅のホームまで来たぞ!電車乗っていいのか!?」と夫から察してのメッセージが。娘がチラリと画面を見て「うわぁ……!引き留めてほしいって言えばいいのに!」と笑いながらひと言。
娘の言葉に、胸の奥で何かがすっと冷えていくのを感じました。変わらない夫に合わせ続ける日々は、もう終わらせようと心に決めたのです。その瞬間、私の中で離婚への決意が静かに固まったのです。
離婚、そして新しい日々へ
翌日、仕事から帰宅した夫に私は「昨日の態度を見て決めたの。離婚しよう」と静かに切り出しました。夫は一瞬きょとんとしたあと、「はぁ!?なんでだよ!」と声を荒げました。
私は淡々とこれまでの出来事を話しました。察してほしいばかりの態度、誕生日の一件……。夫は最初こそ反論していましたが、やがて黙り込み「娘が生まれてから、俺のことは二の次になったみたいで寂しかったんだ。もっと構ってほしかったんだ」と呟きました。その言葉に、私は心の中で「どこまでも察してばかりの夫なんだな」とため息をつきました。私は「寂しかったのはわかった。でも、言葉にしなければ伝わらないよ?」と伝えました。すると夫は「……わかってる。本当にごめん」と言い、ゆっくりと離婚届にサインをするのでした。
こうして私は、娘と新しい生活を始めることになったのです。その後、誰かの顔色をうかがうことなく、自由で穏やかな日々を過ごしています。
◇ ◇ ◇
“察してほしい”は魔法の言葉ではありません。長年一緒にいても、相手の気持ちは言わなければわからないもの。お互いに思い合うためにも、“察すること”ではなく、“伝え合うこと”が大事なのかもしれません。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。