突然の宣告
ある日の夕方、ゴミ出しから戻ると、アパートの前に腕組みした大家さんが立っていました。私を見た途端、大家さんが「おい、ちょっと」とニヤニヤしながら呼び止めてきました。その瞬間、私は嫌な予感が走りました。すると大家さんは「来月から家賃を10万上げる!払えないなら出ていけ!」と言うのです!
耳を疑うような言葉に、私は「え……?」としか返せませんでした。いくらなんでも来月から家賃10万アップなんてありえない……!立ち尽くす私をよそに、大家さんは「シングルなら手当もらってるんだろ?家賃くらい余裕で払えるだろうが」と嫌味を言ってきたのです。まるで私が困るのを楽しんでいるかのような口ぶりで……。戸惑う私を見て満足そうに「まぁ、考えてくれ」とひと言残し立ち去るのでした。
すると、私の隣にいた娘が袖をぎゅっと握り「ママ、この家そんなにいい家じゃないよ。ちゃんとした人のところに行こうよ」と呟いたのです。その言葉に、「ここから出よう。もう、この人に振り回されるのはやめよう」と心の奥で決意を固めました。
大家の企み
後日、アパートの住人と立ち話をしていると、そこで驚くべき事実を耳にしたのです!アパートの住人が「もしかして、賃料アップの話をされなかった?実はね、あなたを追い出して、自分の孫夫婦を入れるつもりらしいのよ」と言うのです。
詳しく聞くと、大家はまだ若くてお金のない孫夫婦をこのアパートに入居させる計画を立てていたと言うのです! そのために“シングルで引っ越しやすそうな私”をターゲットにしたようなのです。「家賃10万アップ」なんて完全なはったり……。実際、契約更新時でもそんな大幅値上げは通りません。
私は大家さんのところへ向かい「家賃10万アップは無理なので、このアパートを出ます」と伝えました。 一瞬、大家の口元がニヤリと歪み、勝ち誇ったような表情になりました。 まるで「計画通り」と言わんばかりのその顔を、私は心に刻みました。その瞬間こそ、大家の誤算の始まりだったのです。
大家の誤算
そして迎えた引っ越し当日。 娘と段ボールを運び出していると、大家が腕を組んで立ち、ニヤニヤとこちらを見ていました。「お前が出ていけば、あとは孫夫婦が来てくれる」そんな声が聞こえてきそうな態度で……。 しかし、その計画はあっけなく崩れ去ることになったのです。
数時間後、内見に来た大家の孫夫婦は部屋に入った途端「え、ここ……壁、シミだらけじゃない?」「天井の雨漏り跡もひどいし……カビ臭くない?」と眉をひそめひと言。築年数の古さ、メンテナンス不足、冬場の底冷え。若い夫婦がわざわざ住みたいと思うはずもありません。 孫夫婦は一通り部屋を見回した後、首を横に振り、大家に向かって「……ごめん、初めて部屋の中を見たけどビックリ!ここは無理」と言い放ったのです。その言葉を聞いた瞬間、大家の顔から血の気が引いていくのがわかりました。今までの余裕は消え、しぼんだ声で「……こんなはずじゃなかったのに」と漏らすのでした。私はその横を通り過ぎ「思った通り!人を追い出す前に、家の手入れをしたほうがいいですよ」と大家さんに聞こえるように呟きました。
すると、背後から大家が近づいてきて「やっぱり家賃10万アップはナシ!このまま住んでもいいぞ?」と言うのです。しかし、私には関係のないこと。私は娘と2人で実家へと戻り穏やかな日々を送っています。私が出た後、ボロボロのアパートは借りてがつかず家賃値下げしたようです。
◇ ◇ ◇
大家の横暴な態度に屈することなく、冷静に状況を判断し、娘の言葉に支えられて行動した結果、思いがけず良い方向へと事態が展開しました。間違った行いをすればいつか自分に返ってくるということを改めて実感しました。娘と穏やかな新生活を送れるようなり、あのアパートから出て本当に良かったのではないでしょうか? 嫌がらせをされても執着せず新しい道を探すことも時には大事なのかもしれませんね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。