海外に長期出張に行っていた夫。帰国まで2週間というタイミングで送られてきたメールを見て、私は目を疑いました。
「帰国したら、うちの両親との同居を進めようと思う」と夫。しかも、すでに義両親には話を通してしまっているとのことでした。
夫からの一方的な同居宣言
夫が海外出張に行くたびに、私は義両親の対応に追われてました。義両親は頻繁にわが家に押しかけ、勝手に私のサブスクアカウントを使ってリビングのテレビで韓国ドラマや映画を見て、食事やおやつを要求してくるのです。
しかも、食事や飲み物を出したら出したで「味つけが濃い」「量が少ない」など文句ばかり。「私にも予定があるので来るのを控えてほしい」と伝えても聞き入れられず、留守にしていると「息子がいない間に浮気でもしているのか」と疑いの目を向けられる始末。
夫も海外で頑張っているんだから……と思って我慢してきましたが、それもそろそろ限界でした。最近ではチャイムの音を聞くだけで、鳥肌が立つようになっていたのです。
私は今の状況を伝え、義両親との同居は絶対に無理だと繰り返し強く訴えました。しかし、夫は「実は新居も仮契約しちゃったし、話が進んでるんだよね……」と取り合ってくれなかったのです。
タワマンに目がくらんだ妹の裏切り
2週間後、予定通り夫が帰国。同居の話は私の知らないところでどんどん進んでいるようでした。わが家でやりたい放題の義両親は、同居していない今でさえこんなに苦痛なのに、それが毎日のことになるのかと考えるとため息しか出ません。
そんなとき、妹から思わぬ連絡が入ります。「お姉ちゃん、旦那さんと別れてくれない? 私、彼と結婚したいの」
最初は冗談だと思いました。しかし、妹の声は真剣そのもの。昔から私のものをうらやましがるところはありましたが、まさか夫に手を出すとは……。
夫とは両家顔合わせのときに連絡先を交換したそう。それ以来、ちょこちょこ連絡を取り、少しずつ距離が近付いたと話します。今では海外出張にこっそりついて行くこともあったようです。
ただでさえ気持ちが落ち込んでいたところで発覚した、夫と妹の裏切り。正直、もう何も考えたくないし、何も感じたくありませんでした。それくらい、私の心は疲れ切っていたのです。
「ああ、そうなんだ」くらいの薄い反応しかしない私に、妹は不満だったよう。もっと悔しがってほしかったのでしょう。「彼、私のために新居買ってくれるんだよ! 駅近のタワマンの最上階!」と続けました。
「彼とタワマンに住むの♡ 幸せな結婚生活を送るから、お姉ちゃんもう諦めて! 私に譲って!」
夫が同居のための新居を仮契約していたことは知っていましたが、その新居がどこなのかは知りませんでした。きっと妹の言うタワマンが義両親と住むための新居なのでしょう。
私は「いろいろひっくるめて持っていって。その家、きっとすごいオプションついてくるからね」と言って電話を切りました。嬉しそうにしている妹の声を聞いて、吹っ切れたのです。
その日の夜、夫に離婚を切り出しました。夫は拍子抜けしたようですが、すぐに離婚届にサインしてくれました。夫も元から同居を渋る私と別れて妹と一緒になるつもりだったのでしょう。
地獄絵図になった新婚生活
数カ月後、再び妹から連絡が入りました。「結婚してタワマンに引っ越したら、彼のご両親がいたの! 一緒に住むなんて聞いてない!」私の予想通り、元夫は私と別れた後すぐに妹にプロポーズしたようです。
妹曰く、広い新居にはすでに義両親の家具や荷物が運び込まれていたそうで、妹は「これから4人で暮らしましょう」と当たり前のように告げられたと言います。
しかも、元義母は妹の服装や持ち物に口を出してくるそう。派手な服やアクセサリーは全否定! 「嫁らしくしなさい」といかにもなエプロンを渡されたのだとか。朝早く起こされて朝食を作らされ、スーパーのお総菜を出せば盛大にため息をつかれるそうです。
元夫も「うちに嫁に来たんだから、うちの両親の言うことを聞くのが当然」と言って、妹の味方にはなってくれないとのことでした。妹が経験しているすべてが私に振りかかっていたかと思うとゾッとします。
だからと言って今更妹の味方にはなれません。「私から奪ってまで手に入れたかった生活でしょ? 自分が選んだ道だからね」と突き放すと、「こんなの全然楽しくない!」と妹は激しく泣き出してしまいました。
妹が奪った私の生活、本当に幸せ?
しばらくして、今度は元夫から「戻ってきてくれないか?」と連絡がありました。元夫の前では猫をかぶっていたようですが、妹はもともと気の強い子。その妹が本性を見せ始め、元義両親と真っ向から衝突するようになったそう。毎日大げんかを繰り広げ、家の中はめちゃくちゃになっているのだとか……。
「もっと従順な子だと思っていたのに……」「お前なら、うちの両親とうまくやれただろ?」と言って復縁を迫ってきた夫。しかし、私は夫への愛情からただ耐え忍んでいただけなのです。
しかし、両親の世話をさせる嫁をあてがうために妹に乗り換えて、同居を進めるような元夫に、私の愛情は微塵も残っていませんでした。
「揉めるたびに母さんから呼び出されて頻繁に早退していたら、プロジェクトのリーダーから降りることになっちゃって……ローンも残ってるのに」「だから、お前が帰ってきてくれれば全部元に戻ると思うんだ!」と夫。
「うちの妹もだけど……あなたも、あなたのご両親もみんな、自分のことしか考えてないよね。すごくお似合いだと思うから、そのまま一緒に暮らし続ければいいと思う」「私は二度とあなたたちと会うつもりはないから」と告げると、「そ、そんな……」と元夫はひどくショックを受けたようでした。
その後、妹は3カ月で限界を迎え、実家に逃げ帰ったそうです。母から聞いたところによると、妹は「同居を隠されていた」と言って慰謝料を請求しているそう。それに対して元義両親は逆ギレして、泥沼状態なのだとか。
共通の友人によると、元夫は妹からも元義両親からも責められ、仕事でもミスを連発。信用を失い、出世コースから外れてしまったそうです。
一方の私は、静かなひとり暮らしを楽しんでいます。タワマンでの暮らしに人並みの憧れはありますが、私にとっては手狭なくらいの部屋のほうがちょうどいい――身の丈に合った暮らしをしつつ、心の安定を保っていくことのほうが大切だと今まさに実感しています。
【取材時期:2025年7月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。