冷たい上司?はじまりは誤解から
「今度のプロジェクト、どう思う?」
「面白いと思うけど……俺はメンバーに選ばれないんじゃないかな」
同僚に声をかけられたとき、つい弱気なことを口にしてしまいました。その瞬間、視線を感じて振り返ると、上司のAさんがじっと僕を見ていました。 「やる気がないって思われたのかな……」と冷や汗をかいたのを覚えています。
他の人にはにこやかに声をかけるのに、僕には素っ気ないAさん。話しかけても返事がなく、無視されることもしばしば。周囲の人からも「Aさん、お前にだけ冷たいよな」と言われる始末でした。
しかし、最初から冷たかったわけではありませんでした。入社したばかりだった僕に、Aさんは教育係として本当に親切にしてくれました。出張の準備や仕事の進め方まで丁寧に教えてくれて、僕は心強かったのを覚えています。
それが、数カ月前から急に仕事以外で会話をしてくれなくなったのです。僕は何か怒らせた覚えもなく、ただ戸惑うばかりでした。
誤解したまま迎えた出張
そんな状況のまま時間は過ぎ、僕は仕事でアピールしようと必死に動きました。誰かが困っていれば助けに行き、急な商談も引き受けました。こうして疲れ切った夜、デスクに差し入れのドリンク剤とメモが置いてあったのです。
“お疲れ様!無理しちゃだめだよ! A”
Aさんからの差し入れが僕はとてもうれしかったです。冷たいように見えても、Aさんは僕を気にかけてくれていたのだと思えました。
そして翌週。新しいプロジェクトのサブリーダーに僕が選ばれ、リーダーはAさん。2人で現地視察で海外へ行くことになりました。
出張前日、Aさんが髪を切ってきたので、僕は「すごく似合ってます」と口にしました。その瞬間、彼女は顔を真っ赤にして書類をぐしゃぐしゃに握りしめたのです。小さな声で「うれしい」と呟いたのも聞こえました。
「え、嫌われてるわけじゃない……?」そのときから、僕の中で彼女への見方が少しずつ変わり始めました。
出張先で知った本当の気持ち
出張当日。空港に現れたAさんは、新調したスーツ姿でいつも以上に輝いて見えました。飛行機の中では緊張で固まる僕の手を握り、「大丈夫、私がついてるから」と励ましてくれて……。「俺…Aさんのことが好きなのか?」と気付かされた瞬間でした。
その後、視察先に向かうと現地スタッフから「2人は恋人?」と聞かれました。狼狽えてしまうと、僕を見ながら「近々そうなる予定です」と彼女。「えっ、どういうこと!?」と混乱する僕をよそに、Aさんは自然に微笑んでいました。
小さな声に隠された本音
ホテルに戻り、Aさんと話をしていたときのこと。Aさんの声がところどころ聞きにくくて、僕が聞き返す場面がありました。Aさんは、「ごめんなさい。緊張すると声が小さくなっちゃって…」と言いました。そして覚悟を決めたような顔つきになり、
「好きな人の前だと特に」
それを聞いた瞬間、すべての点が線になって繋がりました。僕にだけ返事がなかったのも、無視されていると思ったのも、実は声が小さすぎて聞こえていなかっただけだったのでした。
「じゃあ…Aさんの好きな人って…俺ですか?」勇気を出して聞いた僕に、彼女は真っ赤になって両手でハートを作ってくれました。
こうして僕たちは付き合うことになりました。冷たいと思っていた上司は、実は小声すぎるだけのやさしい人でした。そして今は、僕にとってかけがえのない恋人です。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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