私は「子どもの話はしないと約束してもらった」という夫の言葉を信じ、しぶしぶ義実家へ向かいました。しかし、顔を合わせるなり、義母はさっそく「いつになったら孫の顔が見れるのかしら」と催促してきたのです。
さらに義母は「嫁としての自覚を持って努力しなさい」と、子どもができない原因がすべて私にあるかのように責め立ててきます。夫は私をかばうどころか、義母に同調し、自分も被害者であるかのような態度を取るのでした。
最近、子どもを連れた夫の元カノの姿を見かけたという義母は、大きなため息をつきながら「こんなことなら、元カノと結婚していれば良かったわね。そうすれば今ごろ、孫の顔も見られただろうに……」と、嘆きます。
それを聞いた夫は、「俺の元カノに負けないよう、不妊治療でもすれば?」と、まるで人ごとのように私に言ったのです。
義母からは孫の催促だけでなく、夫の元カノと比較までされ、夫にまでそんな言い方をされて、私は思わず離婚を考えていました。
夫から常軌を逸した恐ろしい提案…
地獄のような義実家帰省から自宅へ戻ると、夫は「少し言い過ぎた」と謝罪してくれましたが、心からの反省は感じられませんでした。気持ちが晴れない私は自分の両親に一連の出来事を相談。両親は「焦る必要も、自分を責める必要もないよ。私たちは何があってもあなたの味方だからね」とやさしく励ましてくれ、私は少しだけ前向きな気持ちを取り戻しました。
しかしその数カ月後、事態はさらに悪化します。最近、仕事で帰りが遅い日が続いていた夫が、珍しく早く帰宅したかと思うと、「大事な話がある」と真剣な表情で切り出してきました。
「元カノが離婚したんだ。だから、彼女の子を俺も一緒に育てることにした!」そう言うと、夫は私に離婚届を突きつけてきたのです。あまりに突然のことで、私は言葉を失いました。聞けば、義母が元カノと連絡を取り合っており、いずれ夫の子を産むという、信じられない約束まで交わしているというのです。
夫が最近、残業と言い帰りが遅かったのも、実際は元カノ親子と会い、交流を深めるための時間だったそう。夫は「子どももすっかり俺に懐いてくれてさっ!」と自慢げに話すのです。
不倫を告白され、元カノと再婚するため時間を費やしていたと聞かされ……私はもうあきれるしかありませんでした。私が離婚を受け入れると、喜ぶのかと思いきや、「いや? ちょっと待てよ?」と何やら考え込む夫。そして、名案を思いついたかのように衝撃の提案をしてきました。
「離婚したら世間体が悪いし、会社でも結婚に失敗したやつと思われるし……君も1人になったら寂しいだろ? どうせ子どももできないんだから、元カノ親子と一緒に暮らそう! そしたらみんな幸せじゃないか!」
なんと夫は、離婚宣言を撤回。世間体を気にして、同居案を出してきたのです。常軌を逸しているとしか思えない発言に、私はドン引き……。あまりの異常さに恐怖すら感じた私は、「離婚以外の選択肢はない」と告げ、その足で実家へ帰りました。
大混乱の家族会議
数日後、今後のことについて両家で話し合う場が設けられました。その場には元カノも同席し、夫がみんなを説得するように自分の考えを話し始め……。
「彼女は君とも仲良くしたいって言ってるよ? 彼女は子育てがラクになるし、子どもができない君も子育てを経験できるし、一石二鳥じゃない? 2人とも俺が選んだんだから、きっとうまくやっていけるよ!」
実際、元カノはシングルになってお金に困っており、子どもの世話を押し付けられる相手を求めていたため、私と暮らすことは都合がよかったようです。
そして、夫の考えに賛同し、「あなたたち4人で仲良く暮らせばいいじゃない!」と義母は言います。さらに、「戸籍も傷つかず、子どもも得られるのだから良い話ではないか」と義父も賛同。
夫は義両親の言葉にうなずき、元カノは「そういうことだから、これからよろしくね!」と私に意地悪そうな笑顔を向けます。さすがに我慢の限界……私が怒りをぶちまけそうになると、静観していた私の母が「そんな馬鹿げた話を誰が受け入れるというんです? 戸籍に傷がつくほうがよほどマシです」と一喝してくれました。
そして母は、「そもそも結婚は子どもを作ることだけが目的なのですか? 夫婦の問題は夫婦で解決すべきです。それに、不妊の原因が娘にあるかのような口ぶりなのはなぜです?」と、怒りをあらわに。そんな母に続けて私は「病院で検査もしていますが、私に問題はありませんでした」と自分に不妊の原因がないことを告げました。
根拠もなく不妊の原因を私に押し付け、自分たちは問題ないと思い込んでいた夫と義両親は青ざめ、みるみるうちに意気消沈していきました。
おかしな義家族のその後…
その後、私は何を言われても離婚する意思を貫きました。結局、夫は私と離婚し、元カノと再婚することに。こうして新たな生活を始めた元夫たち。しかし、ただ単に元夫の収入をあてにしたかった元カノと、孫が欲しかった義母。利害が一致していただけの関係性だったため、性格が合わずいがみ合う結果に……。
さらには、自由奔放な元カノに振り回される日々に、最終的には全員が彼女を持て余し、1年ももたず離婚に至ったそう。私は離婚の際に、弁護士に依頼し、元夫と元カノの2人に対して不貞行為に対する慰謝料を請求しました。そのため、2人は再婚後も離婚した今も変わらず、経済的に苦しい生活が続いていると聞いています。
一方、私は実家に戻り、両親と穏やかに暮らしています。おかしな家族のせいで人生を台無しにされかけましたが、無事に抜け出すことができて本当に良かったと思っています。これからは、自分の人生をしっかりと前を向いて歩んでいくつもりです。
◇ ◇ ◇
夫婦の問題は、まず何よりも2人で真摯に向き合うべきものです。責任転嫁や思いやりのない言動は、信頼関係を崩壊させるだけ。困難なときこそ、お互いを想い、誠実に向き合いたいものですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。