本社異動の辞令に悩む僕
「聞いたぞ! お前、本社勤務になるんだってな。いいなあ〜こんな地方支社から出ていけるんだから」と声をかけてきたA男。彼は同期入社で、一緒に新人研修を受けた仲ですが、勝手に僕をライバル視しているよう。
「まあね……」と僕が言葉を濁していると、後輩女性が通りかかりました。
「辞令が出たと聞きましたが、本社だったんですね! さすがです」
それでも浮かない顔の僕に、A男は「本社勤務の辞令が出ているのにうれしくないのか? この俺を差し置いてだぞ?」と質問。仕方がないので僕は、「実はまだ迷っていて」と正直に答えました。
A男が本社へ
そんな僕にA男は、驚きの発言をしました。
「本社は高学歴な社員が多いのに、高卒のお前がいけるんだからありがたいと思えよ! そんなに自信がないなら大卒の俺が本社に行ってやる」
後輩女性は「そんな言い方しなくても!」と庇ってくれましたが、僕はA男に理由を説明。
「実は、母が体調を崩していて。本社よりこっちのほうが実家に近いから、あまりここを離れたくないんだ。それに……」
そのとき、上司がA男を呼び、話の途中で彼は去っていきました。
1週間後、僕は母の体調不良を理由に異動を断ることに。そして僕の代わりに、A男が本社異動となったのでした。
本社の厳しさにA男は…
それから半年が過ぎました。地方支社に残った僕は体調不良の母を支えながら、仲間たちと協力し新規企業と契約を結ぶことに成功。本社に行かずとも、充実した日々を過ごしていました。
そんな中、A男から久々に連絡が。
「本社の上司は本当に厳しくて……。それに社員同士もギスギスしていて、仕事がやりにくいんだ」
涙ながらにそう語るA男に、僕は「うん、知っていたよ。それも理由で僕は本社への異動を断ったんだ」と言いました。というのも、僕は1年ほど前、1カ月だけ本社勤務をした経験がありました。その際、ノルマを達成できない社員に上司がひどい言葉を投げかけたり、社員同士で手柄を奪い合ったりする姿を目の当たりにしていたのです。
「限界なら、こっちに戻ってきたらどうかな? 僕も上司に掛け合ってみるから」
そう言うと、A男は「本当か? 頼むよ!」とのこと。そして1カ月後、A男は地方支社に戻ってきたのでした。
これまでは、学歴や本社勤務といったことにこだわりがあったA男ですが、今回の経験で、社員が一致団結し、力を合わせながら仕事をする環境のほうが自分に合っていると学んだよう。僕の学歴をバカにする発言もなくなり、以前よりも楽しく一緒に仕事をすることができるようになったのでした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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