寿司店で思わぬ再会…背後からの声の主は?
今日は少し特別な夕食を楽しもうと、娘と一緒に寿司屋を訪れました。席に着いて間もなく、背後から「お久しぶり〜」という声が。振り返ると、そこには元カノと、その隣に座る高校時代の同級生の姿がありました。どうやら2人は付き合っているよう。
元カノが「こんなところで何してるの?」と声をかけてきたので、「……お寿司を食べに」と答えると、「見ればわかるわよ」と冷たい返事。さらに探るような視線を向け、「なんでいるの?高級寿司なんて大丈夫?ここで散財したら、娘さんにおもちゃも買ってあげられないんじゃない?子どもがかわいそう」と続けてきます。
私は一呼吸おき、「……お気遣いありがとう。でも、大丈夫です」とだけ返しました。楽しそうな娘の姿を見つめながら、余計な言葉を口にするのはやめることにしました。
娘の“ひと言”に店内が静まり返る!?
お寿司を待っていると、娘が首をかしげました。
「パパ、どうして今日は“貸切”じゃないの?知らない人がお店にいるの?」
その声に、周囲が一瞬静まり返ります。元カノと同級生が「え!?」と驚いた声を上げました。私は落ち着いて「今日はね、パパのお弟子さんが自分のお店をオープンしたから、そのお祝いに来たんだよ」と答えました。
おそらく、娘が私のお店で食事をするとき、従業員しかいないので“貸切”だと思っているのかもしれません。私が説明すると、娘は「なーんだ!」と笑顔を見せます。すると同級生が鼻で笑いながら「子どもの勘違いだろ。ここは地元でおいしいと評判の寿司店で修行した大将の店なんだぞ?そんな人と知り合いなわけ……」
そのとき、少し遅れて妻が店に入ってきて、きっぱりと「なにを言ってるんですか。その“寿司店”こそ、主人の店ですよ」言い放ちました。店内の視線が一斉にこちらへ集まり……。
妻が差し出した画面を見て、2人の顔色が一変…
2人が驚くのも無理はありません。学生時代の私は目立つタイプではなく、どちらかといえばさえない存在でした。元カノと付き合っていたころも、忙しいうえに給料は安く、いつか自分の店を持つことを夢見て必死に貯金する日々。そのため、デートはいつも安い店ばかりでした。華やかな世界を好む彼女は、やがて別の男性と付き合うようになり……。捨てられたも同然の形で、付き合いは終わりました。
そして今、元カノと同級生は信じられないといった表情を浮かべています。すると妻がスマホを取り出し、取材記事が載っているサイトを見せました。「ほら、地元で評判のお店として紹介されています。名前もインタビューも載ってますよ」
2人は「ほ、本当だ……」と真っ青に。ちょうどそのとき、板場からこの店の店主がやって来ました。私の前に立ち、「本日はご来店ありがとうございます。自分の店を持つことができたのは、◯◯さん(私の名前)のおかげです」と言ったのです。
店主の丁寧な挨拶に、2人は言葉を失ったまま固まっていました。さらに店主は娘に向かってにこやかに「将来のグルメさんへ、特製の玉子焼きをどうぞ」と話しかけます。娘がうれしそうに「いただきます!」と声を上げると、元カノは視線を泳がせ、同級生は箸を持ったまま動けずにいました。
食事を終えた帰り際、元カノが…!?
食事を終えて席を立ち、トイレへ向かう途中のこと。元カノが 「私たち、忙しくてすれ違って別れることになっちゃったけど……よかったら今度、お店の話を聞かせて。2人で食事しない?」と声をかけてきました。私は微笑みながら 「今は“家族の時間”を一番にしているから。お店のことを知りたいなら、うちのサイトを見て」と答え、それ以上は何も言わずに席へ戻りました。
そして帰り際――。“時価”のお寿司を注文していた元カノと同級生は、伝票を見つめたまま呆然としていました。私は軽く会釈し、そのままお店をあとに。
帰宅後、元カノから再びお誘いのLINEが届きました。しかし私は既読をつけることなく、静かにブロック。今の私は、頼りになる妻と元気いっぱいの娘、そして誇りを持てる仕事に囲まれた日々を送っています。過去を振り返っている暇など、もうありません。
◇ ◇ ◇
元カノは本当の彼の姿を知る機会を、自ら手放してしまったのかもしれません。彼はいま、自分の店を持ち、家族と過ごす日々を何よりも大事にしています。私たちも彼のように、本当に大切なものを忘れずにいたいですね。
【取材時期:2025年8月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。