見下す同僚と、支えてくれる同僚
同僚Aはことあるごとに「そんな小さいお弁当でたりる?生活が大変なの?」「給料が上がってないの?」と口にしてきます。波風を立てたくない私は、それを受け流してきました。救いだったのは、もうひとりの同期である女性Bの存在。
場を荒立てずに、必要なことをスッと言える人で、娘が発熱して私が急遽早退したときも、何も言わずに仕事を引き受けてくれました。後日お礼を言いたくて食事に誘うと、娘ともすぐに打ち解け、手紙をやり取りしたり、一緒に料理をしたり、わが家へ遊びに来てくれるように。同僚Bのハンバーグは、いつの間にか娘の“特別メニュー”になりました。本当に感謝しているのですが……。
「ママがいなくて寂しいでしょ」と言われた娘は…!
そんなある日、娘と同僚Bと出かけた帰り道、思いがけず同僚Aに出会いました。同僚Aは私が同僚Bといることに驚いた様子。すると彼女は「その子が娘? ママがいなくて寂しいでしょ〜」と、わざわざ古傷をえぐるような言葉を投げかけてきたのです。
制止しようとした私よりも先に、娘がきっぱりと「ママはいるよ」とひと言。そう言うと、娘は一緒にいた同僚Bのもとへ駆け寄り、抱きつきました。娘にとって“ママ”とは法律上の関係ではなく、日々そばで支えてくれる人を指す呼び名になっていたのです。
意表を突かれた同僚Aは、先日の社外イベントで同僚Bが“やらかした”と得意げに批判を始めました。私はすぐに、あれは運送中のトラブルで同僚Bの責任ではないと説明しましたが、同僚Aは鼻で笑い「本当かしら?」と取り合いません。
さらにこれまでの同僚Bのミスを持ち出し、挙げ句の果てには娘に向かって「そんな人をママと呼ぶな!」と言い放ったのです。娘は涙を浮かべながらも、「◯◯ちゃん(同僚Bの名前)は私とパパの味方で、お手紙もくれて、一緒に遊んでくれる。だから絶対ママなの」とはっきり答えました。そのひと言で、私の胸に積もっていた感謝と覚悟が形になっていくのを感じました。――ただ、同僚Aの暴走はこれで終わらなかったのです。
身の回りで起こり始めた“妙な出来事”
それから、私の身の回りで妙な出来事が増えていきました。デスクに置いていた文房具が消える(後日、同僚Aが使っているのを見かける)。会社専用スマホには無言電話が続く。会社の駐輪場では必ず同僚Aに遭遇する――。疑いたくない気持ちはありましたが、話を聞いてみることにしました。
仕事終わりに「少し話をしたい」と声をかけると、同僚Aはニヤリと笑いました。駐輪場で毎日顔を合わせること、そして身の回りで続く不審な出来事。「まさか関係しているわけじゃないよね?」と問いかけると――そこに現れたのは、今まで見たことのない同僚Aの姿でした。
「やっと気づいてくれたの?ようやく2人きりになれたね。私たちはいずれ結ばれるんだから」「あなたのものは私のもの。ただ預かっていただけ」――支離滅裂な言葉を並べ立てる同僚Aに、私ははっきりと「迷惑だからやめてほしい」と告げました。そして、気持ちがないことも……。後から同僚Aの後輩に聞いたところ、どうやら同僚Aは私を狙っていたようでーー同僚Bと一緒にいるのを見て動揺していたそうです。
不審な出来事の結末。そして私が選んだ道は…!
その翌日から同僚Aは無断欠勤を続け、そのまま退職。そして私は、同僚Bに正面から気持ちを伝えました。「もう少し、距離を縮めてもいいかな」すると同僚Bは頬を赤らめながら「うん」と答えてくれ、少しよそよそしかった距離が一歩近づいた瞬間でした。
その後、私たちはゆっくりと交際を重ね、やがて結婚。同僚Bは“娘の本当のママ”になってくれました。あの日、娘が言った「ママはいるよ」というひと言が、私たちが“家族”になるきっかけを作ってくれたのです。これからも娘を大切に、家族仲良く暮らしていきたいと思います。
◇ ◇ ◇
同僚Aもシングルファザーである男性に好意を寄せていたようですが、その表し方が間違っていましたね。一歩間違えば警察沙汰になっていたかもしれず……。最後には同僚Bが“ママ”となり、温かい家庭を築けているようで本当によかったです。
【取材時期:2025年8月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。