しかし、あるときから夫の様子が少しずつ変わっていきました。休日も「仕事が入った」と言って出かけるようになり、娘との約束を平気で破るようになりました。
夜遅くまで帰ってこない日が次第に増え、スマートフォンを肌身離さず持ち歩くようになりました。
嫌な予感は、ほどなくして現実になりました。
幸せだった日常が、音を立てて崩れた日
夫は会社の若い秘書と浮気していたのです。
休日出勤だと言って家を出た日、ふたりで並んで歩く姿を偶然見かけた瞬間、体の力が抜けました。
信じたくない。でも、目の前の光景がすべてを物語っていました。
その夜、遅い時間に帰って来た夫に「……あなた、不倫してるでしょ?」と聞くと、「あ……ばれてたか。会社の秘書と付き合ってるんだ。ゆくゆくは彼女と結婚しようと思っている。慰謝料も養育費も払うから、お前は娘を連れて出て行ってほしい」と言いました。
衝撃的な夫の言葉に言い返す気力もなく、その日はそのまま寝室へ行き、夫の裏切りのショックと怒りで眠れぬ夜を過ごしました。
そんなある夜、なんと夫が家に無断で浮気相手を連れて来ました。秘書は私を上から下まで舐めるように一瞥し、ニヤッと笑って「ごめんなさいね。オバサンは出て行ってもらえます?」と言ったのです。
その瞬間、私の中で何かが静かに切れた気がしました。
支えてくれたのは、友だちのやさしさ
家を出たあとの私は、不安と孤独で押しつぶされそうでした。
でも、そのとき私を救ってくれたのは、いつも笑って話を聞いてくれた友人たち。
「部屋ならうちの親戚が貸してくれるって!」
「子どもを預ける場所がなかったら、いつでも頼って!」
「ご飯はタダでうちの家にいつでも食べにおいで!」
――その言葉ひとつひとつが、冷えた心に温もりをくれました。
気持ちを整理するために、私はSNSに日常の4コマイラストを投稿し始めました。
「ママの絵、世界中の人に見てもらえるといいね!」
そう言って笑う娘の声が力をくれました。
投稿を続けるうちにフォロワーが少しずつ増え、イラストの仕事が入るようになりました。
新しい暮らし、そして“本当の幸せ”
離婚から2年後。私はイラストの仕事で生計を立てられるようになりました。娘と一緒に、小さなマンションで穏やかに暮らしています。娘との生活は小さな幸せにあふれ、本当に離婚してよかったと思えるほど。
ある日、私は買い物の帰りに、駅前で偶然元夫と再会しました。
以前よりやつれた様子で、「お前……元気そうだな」と声をかけられました。
私は「娘と二人で、元気に暮らしています」とだけ答えました。短い会話のあと、元夫はその場を離れていきました。後に知ったことですが、彼の会社は経営不振に陥り、お金がなくなった夫は不倫相手に捨てられ、すぐに別れたそうです。
この一件を通して、私は「幸せは誰かに与えられるものではなく、自分でつくっていくもの」だと実感しました。離婚を経て環境は大きく変わりましたが、今は娘と穏やかに暮らしながら、自分の力で少しずつ前に進んでいます。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。