「院長の娘と結婚する」夫の裏切りが判明
ある日、帰宅した夫が 「俺、院長の娘と結婚する。向こうの家とも話はついてる」と言い放ったのです。 さらに夫が「次期院長の座も決まっているんだ。邪魔しないでくれ」と冷たい言葉を投げかけてきたのです。
あまりにも突然のことに理解が追いつかない私はあ然とするばかりで……。そんな私をよそに夫は「式の日取りはすでに進んでいる。離婚届も記入済みでお前と娘のアパートも押さえた。明後日の朝に出ていく予定だ」と言うのです。「慰謝料も養育費も“多め”に払う」と言い軽く笑ったのでした。
医師という仕事は過酷だと信じて、私はできる限り支えてきました。それなのに、こんな形で裏切られるなんて悔しくてたまりませんでした。夫は出世欲が強い人だとは思っていましたが、ここまでとは……。その夜、娘の寝息を聞きながら現実と向き合い、離婚届にサイン。引っ越しと転職の準備を始めました。
私だけが知らなかった段取り
その後、看護師として別の病院へ転職し慌ただしい日々を送っていました。シングル生活も慣れてきたある日のこと、元夫と共通の知り合いのタイムラインに白い教会の写真が流れてきました。その奥には元夫とウエディングドレスをまとった女性の姿がありました。コメント欄には「ご結婚おめでとう」と祝福のメッセージが……。
日付は、私が離婚届に判を押した半年後。つまり、あの「院長の娘と結婚するから」という宣言は、かなり前から再婚の話が動いていたということ。段取りも日取りも挨拶も、私だけが知らなかったということが判明したのです。数日後、元同僚から「彼、職場で『家庭も落ち着きましたので』って挨拶してたよ」と連絡がありました。私は手を止めて、落ち着いたのは「そちら側の家庭でしょ」と呟きました。捨てられた私と娘の生活はまだまだこれから……。ギュッと胸が痛むのでした。
翌朝、出勤前に「もう周りの報告の波には乗らない。娘の生活は私が守る」と心に決めました。――よし、前へ。
離婚から3年後。ある噂が……
離婚して3年の月日が流れました。久しぶりに、元夫が居る病院の前を娘と通りかかりました。すると病院の近くには人気がなく、背後から「ここ、院長が変わったみたいね」「前と雰囲気が違うからもう通ってないけど……」 と噂話が聞こえてきました。
信号待ちの間、ついスマホで検索すると口コミは低評価がずらり! 表示上は「説明が短すぎる」「無愛想で話を聞いてくれない」などの書き込みが目につき、“院長が変わってから評価が下がった”という声もチラホラ。さらに、「このまま閉院かも」という噂まで飛び交っているようなのです。
私は画面を閉じ、「……もう、関係ない」とひと言。娘の手をぎゅっと握り、今の幸せな生活を大事にしようと改めて思ったのでした。
◇ ◇ ◇
地位や名誉は輝かしく見えますが、幸せは肩書きではなく“約束を守る日常”にあります。裏切りは形を変えて当人に返ってきます。眩しさより温かさを選ぶ判断が、長く続く幸せへの近道となるでしょう。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。