弟夫婦からの見下し
弟は昔から要領がよく、社交的。
一方の僕は不器用で、地味な会社員。
親戚の集まりで顔を合わせるたび、弟はこんなふうに言ってきました。
「兄さん夫婦、まだあの安アパートに住んでるの?
うちは今度、軽井沢に別荘を買う予定なんだ」
そのたびに、僕は苦笑いで受け流すしかありませんでした。 妻は穏やかに微笑んでいましたが、内心は悔しくてたまりません。
「絶対に見返してやる」
そう心に誓った僕は、本業の傍らで独学でプログラミングを学び始めました。 そして、誰にも話さずに子ども向け教育アプリの開発を進めていったのです。
甥の「知らないの?」のひとこと
数年後の週末。
家族でショッピングモールに出かけたとき、偶然弟夫婦と再会しました。
「おい兄さん、相変わらず地味な格好してるな(笑)」
「うちの子、今度は私立に行くんだ。兄さんとこにはムリでしょ?」
聞き飽きた嘲笑に、僕は何も言い返しませんでした。
そのとき、弟の息子――甥がぽつりとつぶやいたのです。
「パパ、ママ、この人知らないの?」
「お前の伯父さんだろ?」と笑う弟に、甥は目を輝かせて言いました。
「ちがうよ! この人、“K-sensei”だ!
ぼく、いつも動画見てる! すごく有名なんだよ!」
スカッと逆転!本当の顔がバレた瞬間
“K-sensei”――それは僕が教育アプリのチャンネルで使っている配信者名。
趣味で始めた活動はいつしか大ヒットし、いまでは本業の収入を超えるほどになっていました。
「……まさか兄さんが?」
僕がスマホでチャンネルの管理画面を見せると、
再生数と登録者数を見た弟夫婦の顔がみるみる青ざめていきました。
長年バカにしてきた兄が、
自分たちの子どもの“憧れの存在”だった――その事実に、二人は絶句。
その表情を見た瞬間、胸の奥につかえていたものがスッと消えました。
これまでひけらかすつもりはなかったけれど、あの瞬間ばかりは、心の中でガッツポーズをしていました(笑)。
今では全国の子どもたちが僕のアプリを使ってくれています。
見返したい気持ちから始まった挑戦が、
誰かの学びや夢につながる――それがいちばんの誇りです。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。