仕事への意識が強い私は、いわゆるバリキャリで高収入です。そんな私を彼はとても気に入ってくれているようでした。そして、しきりに結婚を急いでくるのです。どうやら、共通の友人から私の実家がお金持ちだと聞いたらしく……。
2人とも30代で結婚を意識したお付き合いではありましたが、私は少し急ぎすぎではないかと感じていました。私が返事を渋っていると、「まずはお試し期間を作ろう」と彼から同棲を提案されたのです。
彼の態度が急変、そして突然の別れ
彼の提案を承諾し、私のマンションで一緒に暮らすことにした私たち。しかし私は、完璧な妻を想定した姿を期待されているような気がして、プレッシャーを感じていました。実は私、料理が苦手なのです。作れないわけではないのですが、お付き合いしてまだ3カ月の彼には、このように知られていないことも多いのです。
同棲を目前に控え、ときどき私の家に泊まりにくるようになった彼。朝、いつもより早く起きて彼のために簡単な朝食を準備したり、一緒に家を出て出勤したり、結婚生活ってこんな感じなのかなと、想像していました。しかし、数回目のお泊まりをした日の翌朝、彼が突然、態度を急変させたのです……。
「朝食が納豆とみそ汁って貧乏臭っ!」
「実家は金持ちなのになんで?」
「同棲はキャンセルで」
「は?」
私は彼の発言に耳を疑いました。納豆とみそ汁の何がいけないの!? その上彼は、私が頑張って作ったナスの煮びたしや、お取り寄せしたつくだ煮もバカにしたのです。「こんなに君がババ臭くて貧乏臭いなんて思わなかったよ」と、すっかり私に幻滅している彼。価値観がまったく違うと言い、別れまで切り出してきました。
実のところ、私も最初から価値観が合わないかもしれないとは思っていました。でも、お互い妥協は必要だし、許容範囲で合わせられるかもしれないと思い、お付き合いを続けてきたのです。
実際には、こんなにも違いがあったとは……彼のような考えの人とは、きっとこの先、私がどれだけ努力しても理解し合えないでしょう。むしろ、振ってくれて良かったのかもしれません。
止まらない暴言と嫌がらせ
別れ際、彼はさんざん私に文句を言ってきました。
「女なんだから、料理くらい頑張らないと。資産家の娘だと聞いていたけど、うそだったのか!? 家柄がいいわけじゃないなら、あんな貧乏臭い朝食でも納得だわ! 貧乏って、にじみ出ちゃうものなんだな」
彼はため息混じりに暴言を重ねました。こんな人と、一瞬でも結婚を考えていたなんて……私は思わず、自分で自分を疑ってしまいました。もう何も言い返す気になれず、ただ黙って彼の暴言が終わるのを待ちました。
しかし、このときの私の態度が気に食わなかったのか、別れた後もSNSなどで、私を「貧乏人」と揶揄するような投稿を始めた彼。やめてと伝えると……。
「名前を書いていないのに、自分のことを書かれていると思っているのか? 被害妄想はやめろよ。てか、俺の投稿をチェックしてるなんて、俺のことが忘れられないのか? でもごめんな、執着されては困る。君みたいな貧乏人とでは、俺は釣り合わないよ」
私を見下し、バカにし、私が彼に執着していると自惚れてきました。しかし、彼がSNSに投稿しているのは、知人などが見れば明らかに私とわかる内容。貧乏だとバカにされるのはいいですが、「インテリアのセンスが悪い」などと部屋の中の写真を載せられ、私のプライベートを晒されるのは許せませんでした。
投稿を消してほしいと伝えると、「だまされたのは俺だ!」と逆ギレする始末。何にだまされたと言うのでしょう。私は彼にうそなどついていないし、だましたつもりもありません。私の実家がお金持ちだと聞いて、勝手なイメージをしていたのは彼なのに。
さらに彼は、私との交際を黒歴史だと周りに嘆いています。金持ちだと思っていた私の実家からの援助や、お嬢様育ちの私との優雅な暮らしを期待していたようですが、本当は貧乏人だったことが判明し、悔しかったのでしょう。
いつまでもネチネチ『貧乏人』と言って見下してきます。しかし、私は何も隠していないので、ここまで言われる筋合いはないのですが……。
まさかのプロポーズに絶句
彼と別れてから1カ月。嫌がらせも落ち着いてきて、ホッとしていた私のところに、また彼から連絡が。共通の知り合いが私と撮った写真をSNSに投稿したようで、それを見つけ、彼は慌てふためいて連絡してきたのです。
私と知り合いと一緒に写真に写っていたのは、地元では有名な企業の社長。実はその人は父の友人で、先日、父が所有する別荘で行われたパーティーに参加していたのです。写真は、そのときのものでした。
私がうそをついていなかったと知った彼は、再び態度を急変。突然私の家にやってきたかと思えば……。
「お嬢様なのに、庶民的な朝ごはんを食べていることに感動した。金に困ったことが一切ないのに、控えめで謙虚、倹約家だなんて尊敬する。そんなすてきな君の彼氏になれて光栄だよ。改めて言わせてほしい。僕を選んでくれてありがとう。君を全力で幸せにするよ。結婚してください」
彼は目をキラキラ輝かせ、プロポーズしてきました。私に暴言を吐いて自ら別れを切り出したことを忘れたのでしょうか。別れたはずなのに、それを強引になかったことにしてきて……あまりに身勝手で都合が良くて、吐き気がしました。
彼の発言にドン引きし、私が拒否すると、今度は怒り出した彼。付き合っていたころのように彼の暴言を黙って聞いて、終わったようなので、「もうあなたとは別れています。しつこく付きまとうなら警察や弁護士に相談し、法的に適切な対応を取ります」と告げると、彼は肩を落として帰っていきました。
その後、私は彼の連絡先をブロックし、すぐに引っ越しました。今はもう彼がどこで何をしているか知りませんが、結婚してしまう前に彼の本性に気づけて本当に良かったなと思います。今回は失敗しましたが、次は尊敬し合える、すてきなパートナーを見つけたいと思います。
◇ ◇ ◇
お金は大切なものですが、それだけを大切にしても幸せはやってこないのではないでしょうか。一生をともにするパートナーを選ぶとき、お金や家柄、ステータスではなく、相手の内面や人間性をきちんと見て、相手を尊敬するのはもちろん、相手からも尊敬してもらえるよう、自分の人間性を磨きたいものですね。
【取材時期:2025年9月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。