なぜ?夫が子どもを焦る理由とは
ある日、夫から「妊娠の検査、してみたか?」と声をかけられました。私は「妊娠検査薬を使ってみたけれど反応はなかったの。少し早かったのかもしれないから、日にちを空けてまた試してみるね」と伝えました。しかし、夫は「きっと今回も妊娠してないよ。いつになったら子どもができるんだ」と落胆をあらわにしました。
お互いに検査をして問題がないことはわかっています。すると夫は「俺がどうしてこんなに子どもを欲しているかわかるか?」と尋ねてきました。私が「あなたのご両親が望んでいるからだよね」と返すと、彼は「そうだ。急かされているんだ。由緒ある家なんだから、早く跡取りを作れと」と打ち明けました。
そして夫はさらに、「お前は料理も掃除も申し分ない。あとは子どもができれば完璧だ」と言いました。私は「はい」と答えましたが……期待に応えたい気持ちと、どこかモヤモヤとした気持ちが残りました。
「妊娠したよ」夫に報告すると…!?
数カ月たったある日、「妊娠したよ!」——私は検査薬で陽性が出たことを夫に伝え、念のため受診も済ませて医師から妊娠していると言われたことを報告しました。夫は「本当か。ようやくだな」とうなずいたので、私は「これでお義父さんとお義母さんを喜ばせてあげられるね」と微笑みました。
ところが、夫はすぐに表情を引き締め、「いや、喜ぶのはまだ早い」と言いました。「俺たちが欲しいのは家の跡取りだ。つまり男の子だ。性別はまだわからないんだろ?」と続けます。私が「性別はまだわからないけど……」と答えると、夫は「わかり次第教えろ。両親への連絡はそれからだ」と言い切りました。
ただ、ひとつ不安なことがありました。私は「もしおなかの子が女の子だったら、どうするの?」と尋ねると、夫は「育てるしかないな」と淡々と答えます。私はその言葉にホッとし、「よかった」と息をつきました。ところが次の瞬間、「でも女だったら、俺は子どもに興味はないかな。お前が責任をもって育てろ」と言ったのです。私はおなかにそっと手を当て、静かに呼吸を整えました。
喜びも束の間、夫の発言に凍りつき…!
それから数カ月、おなかの赤ちゃんの性別がわかりました。産婦人科で「おなかの子は男の子ですね」と告げられ、私はすぐに夫へ報告しました。彼は喜び、「わが家の大事な跡取りだ。宝物だな」とまで言いました。私は胸をなで下ろし、「これでお義父さんとお義母さんにも喜んでもらえるね」と微笑みました。
ところが、私の安堵に水を差すように、夫は「子どものDNA鑑定をする」と告げてきたのです。「どうして?」と私が尋ねると、夫は「調べないと本当に俺の子どもかわからないだろ」と言い切ります。私は思わず言葉を失い、「私が浮気しているかもしれないということ?」とたしかめました。彼は「それがわからないから調べる。親にも鑑定しろと言われている」と平然と答えました。
しばし沈黙ののち、私は「私のこと、信じてくれてないんだね」と言いました。すると夫は「やましいことがないなら鑑定を受ければいい。嫌がるなら浮気してるんだろ」と突き放します。私はおなかに手を当てながら、冷静になろうと深呼吸をしました。
「元気で大きい子」と伝えたら、夫の態度が一変!?
出産直後、スマホに「出産お疲れさま。今日はもう遅いから、顔を見に行くのは明日でいいな」と夫からメッセージが届きました。立ち会いどころか、お見舞いにも来ない――わかっていたはずなのに、胸の奥がひやりとしました。彼は「俺がいてもいなくても結果は変わらないだろ」と言うので、私は「そうですね。私ひとりでも出産できました。元気で大きい子です」とだけ返しました。
そのひと言に、彼は食いつきました。「大きい? おかしいな。俺はそんなに大きい赤ん坊じゃなかったけど。やっぱりDNA鑑定しないとな。手続きしておいてくれ」。喜びをわかち合えると思っていたのに……このとき、私のなかで夫に対する何かが壊れました。私は「わかりました。では、離婚の手続きもしておきます」と打ち返しました。すぐに「は? 何の話だ。離婚ってなんだ?」と電話が鳴り、彼の苛立った声が病室に響きました。
私は静かに「もう疲れました。あなたとの生活に。いつも試練を与えられているみたいで、息が詰まります。それに、あなたは私の不貞を疑いました。どれほど傷ついたか、わかりますか」と問いかけました。彼は鼻で笑い、「それだけか。そんなことで別れたいとは、がっかりだ。そんなことを言い出すなんて、やっぱり浮気してたんだろ?」と言ってきます。
私は「浮気なんてしていません。検査なら受けます。いくらでも」ときっぱり答えました。すると彼は「どうせデータを捏造するつもりだろ。結果は俺が受け取る。もし違ったら慰謝料を請求する。覚悟しておけ」と畳みかけます。「覚悟しろ、ですか?それは、こちらのセリフです」
DNA鑑定の結果を知った夫。その後…
DNA鑑定の結果が出ているはずなのに連絡がないことが気になり、私は夫に確認しました。すると「今から連絡しようと思っていた」と濁すばかり。私は「やっぱり私が正しかったでしょう?」と告げました。ほどなくして、夫は「子どもは俺の子でほぼ間違いない」と渋々認めました。私は深く息を吐きましたが、彼は「由緒ある家の跡取りなのだから必要な検査だった」と偉そうに言い張ります。
そこで私は、夫が誇る“由緒ある家”はとうに没落している――それなのにプライドだけが残っている――彼の実家について調べるなかで地元の人を通じて知ったと伝えました。さらに、彼は“私との間に子どもができなかったときの保険”だったのかはわかりませんが、別の女性とも付き合っていたのです。DNA鑑定に異様にこだわる様子を見て、逆に夫のほうがあやしいのでは?と思い、調査会社に依頼して発覚しました。
恥ずかしい話ですが、私はこれまで男性とお付き合いした経験がほとんどなく、夫の言動が“普通”だと勘違いしていたのです。けれど母親になり、ようやく間違っていたとはっきりわかりました。――もはや、彼のことなどどうでもよくなり……。
私たちは離婚し、彼に慰謝料を請求しました。離婚が決まったあと、あれほど傲慢だった夫は正気を失い、今まで見たこともないような姿になっていました。私の心を救ってくれたのは、息子です。わが子のために、これからは強く生きていこうと思います。
◇ ◇ ◇
夫婦の関係は“信頼”があってこそ成り立つもので、常に相手を疑うような関係ではいずれすれ違ってしまいますよね。パートナーの言動に違和感を覚えたときは、ひとりで抱え込まずに親や友人など、身近な人へ相談してみるのも自分を守る第一歩。また、「これってDV?」と悩んだときは、公共の相談窓口を利用するのもひとつの方法です(DV相談プラス:0120-279-889 ※24時間・専門の相談員が対応)。心身ともに穏やかに過ごせる環境を整えていきたいですね。
【取材時期:2025年9月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。