義母はいつも私を見下したように言います。
「家の跡継ぎを産める嫁じゃないとね」
長男の嫁としてプレッシャーをかけられる毎日に、私は心の中でため息をつくことが増えました。
2人目の性別を知った義母の言葉
そんなある日、私は2人目を妊娠。夫は涙ぐみながら喜んでくれ、娘も「赤ちゃん、早く会いたい!」とおなかをなでてくれました。でも義母に報告すると、反応はまるで違いました。
「今度こそ男の子でしょうね?」
検診の結果、2人目も女の子だと分かり、正直に伝えました。すると、「あんた、本当に“男の子を産む気”あるの? 女ばっかりで、将来どうするの? 誰がこの家を継ぐのよ」と信じがたい言葉が、まるで刃物のように胸に突き刺さりました。
夫は義母を叱ってくれたものの、義母は「冗談よ」と言い訳するばかり。私は新しい命を喜ぶどころか責めてばかりの義母に心の底からがっかりしました。
義祖母との再会がくれた言葉
そんな折、親戚の法事で久しぶりに夫の祖母――つまり義母の義母(義祖母)に会いました。妊娠の報告をすると、義祖母はにっこり笑って言いました。
「男の子とか女の子とか関係ないじゃない!どんな命も素晴らしいのよ」
私はあっけにとられ、義母が普段から「跡継ぎがいないと困る」「女の子ばかりじゃねぇ」と言っていることを話しました。
すると義祖母は顔をしかめ、少し悲しそうに言いました。
「私はそうは思わないわ。男の子でも女の子でも、どんな命も尊いのに……。あの子は昔から“家を守るのは男”って考えが強いのよ。でも私は、子どもが笑って生きていける家のほうがずっと大事だと思ってる。」
その言葉に、胸の奥がじんわり温かくなりました。私はこの人のように、やさしく強い母になりたいと思いました。
出産、そして決意
数カ月後、無事に次女を出産。産後の入院中、義母が病室に顔を出しました。
「また女? 跡継ぎを産めない役立たずはいらん!」
その瞬間、そばにいた夫が勢いよく立ち上がりました。声を荒らげた夫の顔は、見たことがないほど真剣でした。
「母さん、いい加減にしてくれ! 子どもの性別で人の価値を決めるなんて、時代錯誤にもほどがある! もうそんな言葉、二度と俺の家族の前で言わないでくれ!」
病室の空気が一瞬で凍りつきました。義母は顔をしかめ、「冗談よ、そんなに怒らなくても」と小さくつぶやきながら目をそらしました。私は胸の奥が熱くなり、そっと夫の手を握り、静かに言いました。
「退院後、しばらく家には戻りません。娘たちが安心して過ごせる場所を探して、家を出て行きます」
義母は何も言い返せず、そのまま病室を出ていきました。
数日後、義祖母が見舞いに来てくれました。義母の話をすると、義祖母は少し考えてから、やさしく言いました。
「うちの離れが空いてるの。少し古いけれど、手入れしているからちゃんと住めるわ。落ち着くまでの間、そこで暮らすのはどう? 家族なんだから、助け合いましょうね」
義祖母のやさしい言葉に、思わず涙があふれて止まりませんでした。
義母の末路
退院後しばらくして、私たちは引っ越しました。夫も「母さんとは少し距離を置こう」と言ってくれ、今は義母と最低限の連絡だけを取っています。
義母は今も“家のため”と言い続けているけれど、もう誰も相手にしなくなったそうです。親戚付き合いも減り、近所でも“少し頑固な人”と距離を置かれていると聞きました。最近では、「どうしてこうなったのかしら」とつぶやいていた、と夫から聞いたことがあります。
新しい家で過ごす日々は、毎日笑い声で満ちています。義祖母はときどき遊びに来ては家事を手伝ってくれたり、娘と庭で花を摘んだり、お菓子を作ったりと、とても助かっています。
「ママ、赤ちゃんもかわいいね!」
娘のその言葉に、私の胸が温かく満ちていきました。これからは家族4人、助け合って生きていこうと思います。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。