進学を断念、馬鹿にされながらも地道に努力
高校3年生の秋、僕の人生は大きく変わりました。親に病気が見つかったんです。治療費のこともあり、大学進学は断念せざるを得ませんでした。正直、悔しかったです。でも、家族を支えることが何より最優先。
就職活動は想像以上に苦労の連続。地方の高卒という条件では、選択肢が限られていたのです。何社も断られ続け、ようやく決まったのが地元の家族経営の小さな会社でした。
配属された営業部は、部長は社長の息子、副部長はその親戚という完全に家族経営の構成。この2人が、とにかく曲者でした。自分たちはほとんど何もせず、仕事は僕に丸投げ。それなのに威張り散らして、ことあるごとに嫌味を言ってくるのです。
「高卒だから、やっぱり使えないな」
「低学歴にはこの仕事は無理か」
最初は悔しくて、夜一人で泣いたこともありました。でも、ここで諦めたら親を支えられない。そう思って、歯を食いしばって働き続けました。営業の基礎がわからないなら、自分で勉強するしかない。休日も図書館に通い、営業に関する本を片っ端から読みました。先輩社員に教えを乞い、断られても何度も頭を下げました。
地道な努力の結果、少しずつ取引先企業の方々に信頼してもらえるようになりました。最初は冷たかったお客様が、次第に僕を名前で呼んでくれるようになる。その積み重ねが、何よりの支えでした。
部長の重大ミスが発覚！
入社して4年が経ったある日、書類を整理していた僕は、とんでもないことに気づきました。大口取引先への納品日が、契約書と実際のスケジュールで1週間もズレていたのです。このままでは相手企業に多大な迷惑をかけてしまう。しかも、納品できなければ先方の生産ラインが止まってしまう最悪のケースも。
急いで確認すると、ミスをしたのは部長でした。期日を入力する際、完全に間違えていたのです。僕は必死で対応しました。製造部門に頭を下げて優先対応をお願いし、運送会社にも無理を言って特別便を手配。週末も返上で、なんとか間に合わせることができました。
正直、ホッとしました。これで取引先との信頼関係も守れる……そう思っていたのですが。
数日後、部長が取引先のB部長と面談する場に、僕も同席することになりました。そこで部長が口にした言葉に、僕は耳を疑いました。
「このたびはご心配をおかけして申し訳ございませんでした。原因は彼のミスです。なにかしら処分しますので、どうかご容赦ください」
部長は平然と、自分のミスを僕に押し付けたのです。「やはり高卒はダメですね。今後はもっと教育を徹底します」
その言葉を聞いたとき、僕は何も言えませんでした。反論すれば、部長との関係がさらに悪化する。でも、このまま黙っていることが正しいのか……頭の中が真っ白になりました。
真実を知っていた人、そして大企業からスカウト
しかし次の瞬間、B部長がきっぱりと言いました。
「あなたのミスだということは、彼が途中で確認連絡をくれた時点でわかっています」
静かな、しかし毅然とした声でした。「彼が必死に対応してくれなければ、我が社は大きな損害を被るところでした。彼には感謝していますよ」
部長の顔が真っ青になるのが見えました。B部長は続けました。「差し出がましいようですが……」と、僕の方を向いて言いました。「君の将来を考えると、今の環境は望ましくないのではないですか」
その言葉に、僕は思わず涙が出そうになりました。自分の努力を、ちゃんと見てくれている人がいる。評価してくれる人がいる――そう実感した瞬間でした。
その日の夜、B部長から個人的に連絡がありました。「もしよければ、うちで働きませんか」
大企業からのスカウト。信じられませんでした。でも、これは僕が地道に積み重ねてきた努力への、正当な評価なのだと思いました。もう、理不尽な環境で我慢する必要はない。自分を正当に評価してくれる場所で、もっと成長したい――。僕は決心しました。
転職は順調に進み、僕は念願の大企業で働くことに。給与も待遇も、前の会社とは比較にならないほど良くなりました。何より、学歴ではなく実力で評価してもらえる環境が、本当に嬉しかったのです。
因果応報の結末
その後、人づてに聞いた話では、あの事件をきっかけに元の会社は取引を打ち切られたそうです。大口の取引を失ったダメージは大きく、会社はかなり苦しい状況に陥っていると聞きました。
今、僕は充実した毎日を送っています。かつて取引相手だった大企業で、やりがいのある仕事を任せてもらい、自分のスキルを磨き続けています。
学歴ではなく、その人の努力と人柄を見てくれる人は必ずいる。そして、人を見下したり、理不尽に扱ったりする人には、いつか必ず報いが来る――。
辛い時期もありましたが、諦めずに努力を続けてきて本当に良かった。そして、僕を正当に評価してくれたB部長には、今でも心から感謝しています。
※AI生成画像を使用しています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
