最近増えてきている「妊娠糖尿病」。通常では、糖尿病や妊娠糖尿病になった場合、出産をあきらめる、あるいは、帝王切開でしか出産ができないといわれてきました。
ところが、糖質コントロールされた食事を指導・提供することで、自然分娩の実績をあげている産婦人科があります。宗田哲男院長が率いる宗田マタニティクリニックです。
宗田院長がすすめる「低糖質食事法」とはどんなものなのか、なぜ自然分娩が可能なのかを教えてもらいました。
"低糖質"な食事は、なぜ「糖尿病」に効果がある?
3大栄養素の「炭水化物」「脂質」は、人間の活動のエネルギーで、体を作るのは「たんぱく質」といわれています。それらの中から、「糖質」が「ブドウ糖」に、「脂質」は「ケトン体」に変わって、人間は活動しています。この「ケトン体」は、「ブドウ糖」がなくなったあとに使われるエネルギー源で、赤ちゃんは、最初はこのケトン体だけで活動しているのだそうです。
糖尿病の方は、この「ブドウ糖」を消化する「インスリン」が少ないため、血糖値が高くなるといわれています。そのため、「インスリン」を注射して血糖値を低くしてきたのが通常の糖尿病対策でした。
ところが、ここ最近、「インスリン」を使わずに、そもそもの「ブドウ糖」を減らして血糖値を上げない方法も広がりつつあります。この方法こそが、まさに宗田院長のすすめる「低糖質食事法」です。
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「低糖質食事法」に基づいた「糖質制限食」って?
宗田マタニティクリニックでは、患者さんの症状によっても変わりますが、一番厳しいもので糖質を含む食品を、全体の食事の60gくらいまで落とすという「糖質制限食」を指導・提供しています。ほかにも、糖質の多い主食を1食だけにする方法や、主食を2食のみにする方法があります。
「炭水化物」は、「糖質」と「食物繊維」でできているので、スイーツなど以外にも、主食の「ごはん」「麺類」「パン」が糖質の代表格になります。上で述べた主食を減らす方法のほかに、たとえばパンやスイーツなら、小麦粉より低糖質なふすま粉を使ったパンやスイーツに変えるなどの工夫をしています。また、海藻類やきのこ、葉もの野菜なども多く摂ることが大切なんだとか。
ただし、カロリーは減らさないということも「低糖質食事法」のポイントとなるので、「脂質」「たんぱく質」を主体に、肉や魚、卵やチーズはしっかりと食べられます。
「糖質制限食」で気を付けたい、糖質の多い食品って?
<ごはん・パン・麺>
ごはんやパン、麺類などの食品の成分はほとんどが糖質です。糖質制限食には、ふすま粉を使ったパンや糖質オフの麺類などを使うのがベストです。
<肉・魚>
肉や魚は、たんぱく質も多く、ケトン体の元となる脂質も多いため、たっぷりと摂りたい食品です。ただし、唐揚げやコロッケ、魚の加工品などは、糖質が多いため注意が必要です。
<卵、乳製品、大豆>
卵やチーズ、大豆製品は糖質が低いので、糖質制限食にはおすすめです。牛乳には乳糖という糖質が含まれているので少量に。
<野菜・果物>
たんぱく質を筋肉に変えたり、消化するのに必要なビタミンCやBなど、多くのビタミンとミネラル、食物繊維などが豊富な「野菜」はしっかり摂りたいところ。ただし、じゃがいもなどのいも類、にんじん、玉ねぎなどは糖質が多く含まれています。また、果物も糖質がいっぱい。糖質制限食にはアボカド、青菜、ブロッコリーなどがおすすめです。
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「糖質制限食」で血糖値が下がり、帝王切開が減る!
妊娠糖尿病の妊婦さんが、宗田マタニティクリニックで糖質制限をしたところ、グラフのように血糖値が下がりました。これは1名の例ですが、このような結果になる妊婦さんが多いとのことです。
また、クリニック内での妊娠糖質病の妊婦さんの帝王切開率の件数も減り、自然分娩で健康な赤ちゃんが産まれています。一般的に、糖尿病の妊婦さんの帝王切開でない自然分娩での出産は、健康な赤ちゃんを産むことは難しいとされていました。
食事療法で糖尿病や妊娠糖尿病が改善し、自然分娩で出産できるうえに、赤ちゃんの心配もないということで患者さんには大変よろこばれています。クリニックには、「糖質制限してよかった」「体が生まれ変わったみたい」「みんなに知ってもらいたい」というよろこびの声がたくさん集まっているそうです。
クックパッドベビーの産婦人科コーナーでは、宗田マタニティクリニックの「低糖質食事法」を取り入れた「産院ごはん」を詳しくご紹介しています。実際にクリニックではそんなメニューが提供されているのか、ぜひご覧になってみてください。(TEXT:堀口)