【助産師監修】陣痛とは? 正常な陣痛の流れと病院に行くタイミング

この記事の監修者
監修者プロファイル

助産師松田玲子

医療短期大学専攻科(助産学専攻)卒業後、大学附属病院NICU・産婦人科病棟勤務。 大学附属病院で助産師をしながら、私立大学大学院医療看護学研究科修士課程修了。その後、私立大学看護学部母性看護学助教を経て、現在ベビーカレンダーで医療系の記事執筆・監修に携わる。

陣痛イメージ

 

出産予定日が近づくと、「あともう少しで赤ちゃんに会える!」とワクワクしている人も多いでしょう。その反面、「陣痛ってどのようなものだろう?」と不安になることも。少しでも安心して、前向きな気持ちで出産に臨むためには、陣痛のことをあらかじめ知っておくことが大切です。今回は陣痛について、陣痛の流れや痛みの強さ、また陣痛が起こったときの対処法や病院に行くタイミングについて紹介します。

 

 

陣痛と陣痛周期について

陣痛は、医学的には繰り返し起こる子宮筋の収縮を言いますが、一般的には子宮の収縮に伴う痛みのことを指しています。子宮の収縮はずっと続くものではなく、収縮して痛みを感じる時期(陣痛発作)と、収縮が収まり痛みが落ち着く時期(陣痛間欠)が交互に訪れます。この陣痛発作と陣痛間欠を合わせたものを「陣痛周期」といいます。

 

 

 

正常の陣痛について

正常な陣痛の場合、お産が進むにつれて陣痛が徐々に強くなり(子宮内圧の上昇) 、発作は長く続き、陣痛周期は短くなっていきます。陣痛が短い周期で繰り返すことによって子宮口が広がり、赤ちゃんが子宮から出て狭い産道を通過するのを助けてくれるのです。

 

「子宮口全開大」という子宮口が10cm開くころの陣痛周期は2分、そのうち発作は1分ほどになります。一方、痛みが弱く、陣痛周期が長くなると「微弱陣痛」と呼ばれる状態となり、分娩が進まなくなることがあります。逆に、子宮の収縮が強くなりすぎたり、陣痛周期が短くなりすぎたりすると「過強陣痛」となって子宮破裂や胎児機能不全などのリスクが高くなります。陣痛は適度な強さや適切な周期で繰り返すことが重要です。
 

陣痛周期 表

 

 

陣痛の流れについて

陣痛は「出産のときに起こるもの」というイメージがありませんか? 確かに出産のときの陣痛は赤ちゃんを産むために欠かせないものです。しかし、出産の準備として妊娠中に起こるものやお産が終わった産褥期(さんじょくき)に起こるものもあり、それぞれ異なる役割を果たしています。

 

陣痛を時期によって「妊娠陣痛」「分娩陣痛」「後陣痛」の3つに分け、順に見ていきます。

 

妊娠陣痛

妊娠中に起こる子宮収縮は通常、収縮が弱いのでそれほど痛みとしては感じないでしょう。ただし、妊娠陣痛のうち、前駆陣痛は強い痛みを感じることもあるので、「お産が始まった!」と勘違いしてしまう人も少なくありません。

 

前駆陣痛(ぜんくじんつう)

前駆陣痛とは、本格的な陣痛(分娩陣痛)が始まる前、一般的には臨月に入り分娩が近づいた時期にみられる陣痛です。前駆陣痛は分娩陣痛と違い、周期が不規則で、痛みも強くなったり、弱くなったりして、多くはしばらくすると収まってしまいます。また、前駆陣痛の場合、多くはおしるし(粘りけのある少量の出血)がなく、腰の痛みをあまり感じないなどの点も分娩陣痛と異なる点です。

 

前駆陣痛は痛みの感じ方も、前駆陣痛から分娩になるまでの時間も個人差があり、前駆陣痛が始まって数日で分娩になった人もいれば、1週間以上かかったという人もいます。すぐに分娩につながらないとしても、前駆陣痛は子宮収縮の練習として役立ち、さらに、子宮の出口あたりを軟らかくするなど、お母さんの体を分娩に適した状態にしてくれるものです。

 

分娩陣痛

分娩の開始から出産を終える(分娩終了)までの間に起こる陣痛のことです。分娩陣痛は、分娩第1期から第3期までの段階ごとに役割が異なります。

 

1.開口期陣痛(かいこうきじんつう)

陣痛が規則的になり、1時間に6回以上、または陣痛周期が10分以内になったら分娩開始です。開口期陣痛は、分娩第1期(分娩開始〜子宮口全開大まで)に起こる陣痛です。

 

開口期陣痛は、発作が短く、間欠のほうが長い陣痛周期で始まり、次第に発作が長く、陣痛周期は短くなっていくのが一般的な流れです。開口期陣痛が徐々に強くなり、繰り返し起こることによって子宮口が開いていきます。

 

分娩第1期は、分娩期のなかで最も長い期間です。個人差が大きいのですが、平均すると初産婦さんは10~12時間程度かかり、経産婦さんでも4~6時間ほどかかります。そのため、消化のよいものを少し食べ、陣痛が落ち着いている間には少しでもリラックスできるように工夫して体力を温存することが重要です。また、分娩が進み赤ちゃんが下りてくると、思わずいきみたくなります。そのときは呼吸に集中し、できるだけいきみを逃しましょう。 

 

2.娩出期陣痛(べんしゅつきじんつう)

分娩第2期(子宮口全開大か〜赤ちゃんが誕生まで)に起こる陣痛です。分娩第2期も強い陣痛が長く続き、短い時間に何度も繰り返します。また、娩出期陣痛とともに腹圧がかかることで、赤ちゃんを押し出すための大きな力となってくれます。分娩第2期の娩出期陣痛を乗り越えれば、いよいよ赤ちゃんの誕生です。

 

分娩第2期にかかる時間は第1期に比べて短く、初産婦さんは1時間半~2時間程度、経産婦さんは30分~1時間程度です。 

 

3.後産期陣痛(こうさんきじんつう)

分娩第3期(赤ちゃん誕生〜胎盤やへその緒、卵膜などが出るまで)に起こる陣痛です。後産期陣痛は娩出期陣痛に比べれば弱い陣痛ですが、胎盤などの娩出に役立ちます。分娩第3期にかかる時間は初産婦さんでは15~30分程度、経産婦さんの場合は10~20分ほどです。

 

後陣痛(こうじんつう)

産褥期の初め、産褥2~3日までに起こる不規則な子宮収縮のことを後陣痛と呼びます。後陣痛は子宮を元の大きさに戻し(子宮復古)、また、子宮の胎盤が剥がれた部分からの出血を止めるうえで重要なものです。

 

後陣痛は、初産婦さんよりも経産婦さんのほうが痛みを強く感じる傾向があります。経産婦さんの子宮は初産婦さんより大きくなる傾向があるので、元に戻すのに強い収縮が必要になるのが1つの理由です。

 

 

 

陣痛が来たときの対応について

初めての出産の場合、「陣痛が来たらどうしよう」と不安がよぎるときもあるでしょう。正常な陣痛なら、強い陣痛が急に来るわけではないので落ち着いて行動することが大切です。

 

なかには、慌てて病院に連絡したところ「初産で家も近いようだし、シャワーや軽い食事を済ませて、5分くらいの間隔になったら来てくださいね」と言われ、焦りすぎの自分に気づいたという人もいます。お産の経過はさまざまなので早く進む人もいますが、いずれにしても落ち着いて出産に臨むことが重要です。

 

「陣痛かな?」と思うような痛みが現れたら、まず陣痛の間隔を測りましょう。痛みが始まった時間と痛みが続く時間をメモして、陣痛がどのくらいの間隔で来ているかを測ってください。病院に連絡をしたときに、「いつごろから規則的になったか」「現在、どのくらいの間隔か」などを聞かれるので、メモをしておくと落ち着いて答えられます。

 

また、里帰り出産などで遠くにいる旦那さんの立ち会いを希望している場合は、距離にもよりますが陣痛が規則的に起こるようになったら早めに連絡しておくとよいでしょう。

 

<注意してほしいこと>
陣痛の痛みだけでなく、おなかの張り具合や出血、破水などにも注意しましょう。急な激痛や持続的な痛み、おなかが板のように硬くなった場合、また、おしるし(産徴)が月経よりも多い、血液の塊が出た、胎動を感じなくなったなどの場合はすぐに受診してください。

 

破水が起こったときは陣痛の間隔が短くなるのを待たずに、すぐに病院に連絡して指示を仰ぎましょう。入浴やシャワーを控え、大き目の清潔なナプキンを当てて感染を防ぐ必要があります。

 

もし、前駆陣痛だけで気になる症状もなければ普段通りに過ごし、睡眠をしっかりとって出産に必要な体力を備えておきましょう。また、前駆陣痛はお産が近づいているサインです。遠出は控えましょう。

 

 

陣痛が始まってから病院に行くタイミングについて

陣痛が始まってから分娩になるまでの時間は初産婦さんと経産婦さんで異なります。病院から「早めに来るように」など、特に指示を受けていなければ以下の時間が1つの目安です。

 

〇初産婦さんの場合:陣痛の間隔が10分おき

〇経産婦さんの場合:陣痛の間隔が15分おき

 

なお、病院で開催している母親学級や妊娠健診の際に、入院の目安や陣痛の連絡をする際に伝えてほしいことなどを説明してくれたり、配布された資料やホームページに記載してあったりします。念のため、確認しておきましょう。

 

 

<早めに病院 する必要があるのは?>
以下のような場合には、早めの受診をおすすめします。

 

・病院から遠く離れた場所に住んでいる
・病院に行くまでに時間がかかりそう(通勤ラッシュ時など)
・「子宮口が開き始めている」と言われている
・過去の出産で陣痛から分娩までの時間が短かった
・逆子(骨盤位)の場合
・妊娠糖尿病などの合併症がある
・「帝王切開になる可能性もある」と言われている
・前回の分娩が帝王切開だった
・子宮筋腫の核出術をしたことがある
・胎盤の位置が低いと言われた など

 

 

まとめ

出産が近づくと、「陣痛にちゃんと気がつくかな?」「すごく痛かったらどうしよう?」と、いろいろなことが心配になるかもしれません。不安になったら誰かとおしゃべりしたり、呼吸法の練習をしたりしながら出産の日を待ちましょう。

 

痛みがあるのはつらいことですが、陣痛の波を一つひとつ乗り越えることで赤ちゃんの誕生へと1歩、1歩、近づいていきます。 病院に行くときは「ママも頑張るから、一緒に頑張ろうね」と赤ちゃんに話しかけるなど、自分を勇気づける言葉を意識して出産に臨みましょう。

 

参考:

・メディックメディア:病気がみえるvol.10 産科
 

 

 

◆関連動画 出産ドキュメンタリー

 

 

◆陣痛に関連するQ&A

 

 

◆陣痛に関連する体験談

夜中から下痢になり、1時間おきくらいトイレに行っていました。朝方下痢がおさまったので安心していたら昼頃からまた下痢になり、これはもしや陣痛?とやっと気付きました、15時に病院へ着き、16時には出産していました。下痢は陣痛に伴うものだったみたいです。

おなかの痛みが、陣痛なのか下痢のせいなのわからりませんでした。母親に「陣痛は、そんな我慢できるような痛みじゃない」と言われ、下痢のせいかと思い、夜明けまで家に居いました。しかし、やっぱり陣痛のような気がして病院に行ったら即入院、2時間後に生まれました。

陣痛が来る前の日に診察を受けて、出産予定日から遅れているから少し刺激すると言われ、薬を入れられました。そんなこともあったので陣痛とは思わずなんか痛いなぁと下痢かなぁと思っていました。いくらトイレに行ってもおさまらなくて、母親に言って迎えに来てもらい病院へ行きました。その日は出産ラッシュでベッドがいっぱいで、分娩室と診察室を行ったり来たり。結局生まれたのは18時間後でした。

深夜おなかが痛くて目が覚めトイレへ行くと下痢でした。そのとき水っぽいものと透明で粘り気のあるおりものが出て病院へ連絡したのですが、たぶん破水ではないと思うので様子を見るよう言われ、電話を終えたころからなんとなく腹痛が…。間隔を測ると5分でした!ただ痛みがかなり弱かったのと、間隔が10分に伸びたりしたので様子を見ていました。朝一番で病院へ行けばいいかな〜って思っていたら段々痛みが強くなり、明け方母が起きてきたので病院へ送ってもらいました。病院へ着いて約1時間、深夜の陣痛開始から約5時間ほどでのスピード出産でした♪

妊娠40週目の健診で、まだまだ生まれて来そうにない……と院長に言われたその日の夕ごはんで腐ったものを食べてしまい、夜中ぐらいからずっと下痢と腹痛がありました。その明くる日におしるしがあり、まだ腹痛も続いていたのですが、陣痛なのかただの下痢のおなかの痛みなのかわからず1日過ごしていたら、その日の夜中猛烈にお腹が痛くなって。これは下痢の痛みじゃない!と確信したときには陣痛が5分間隔で来ていました。助産師さん曰く、下痢のおなかの痛みが陣痛を促進した可能性が……とのことでした。無事生まれてきてくれてよかったです!

陣痛は焼き肉を食べに行った日に来たので、もしかして下痢? って思ってなかなか確定できませんでした。ちょっと難産だったのですが、焼き肉を食べていたおかげで体力がもったように思います。

朝起きたら、おなかがなんとなく痛くて便秘かな? と思ってトイレにこもりました。でも出なくてなんとなくおなかが重い感じがしていたら、母に「陣痛じゃない?」って言われて、これが陣痛なんだぁって気がつきました。

便秘痛かと思い、病院へ行くのが遅くなってしまいました。でも「まだあと1日くらいかかるでしょう」と言われてのんびりしていたら突然破水し、2時間後には出産。とても慌ただしいお産でした。

出産予定日3日前に14時ごろから軽い生理痛のようなものを感じたけれど、そのときは陣痛とは思いませんでした。でも2、3時間たってもちょくちょく痛いのでまさか? と思いましたが、そこまで痛くないし出産予定日前だったので油断していました。それに便秘だったのでたぶん原因はおなかにたまった便だろうと思っていました。しかし20時になっても21時になっても痛いのでこれは陣痛だと気づき、陣痛が来る時間をメモし、10分間間隔になった3時ごろに病院に連絡し、病院へ向かいました。6時45分に無事出産できましたが、陣痛の初期はあんなに軽い痛みとは思いませんでした。さすがに出産直前は腰がぎゅ−っとなって痛かったけれど、予想と違いました。

出産予定日より3週間早く出産しました。妊娠中ずっと便秘がちだったのですが、当日も出そうで出ない状態の感じになり、トイレにしばらくこもっていたのですが……。おなかに力を入れるのは良くないと思い、諦めたのですが、何とあとから助産師さんにそれが陣痛だったのよ! と言われ驚きでした。夜になり、腰の痛みが我慢できなくなり病院に連絡したら一応準備をして来てと言われ、診てもらったら何と全開の状態! 即分娩室行きでした。

陣痛が来る前の日の夜、とても腰が痛くてたまりませんでした! 朝は少しずつおなかが痛くなってきて、もしかしてこれって? と思い、ノートに時間を書くようにしました。それで、どんどん間隔も狭くなり不安になったので、出産経験のある友人に電話して事情を話し、これが陣痛だということを知りました!

その日は朝から腰がだるいような感じがして、夕方近くなって生理痛のような痛みがあったので、間隔を計りましたが不規則。でも、平均すると10分くらいだったので病院に電話をすると、とりあえず来てくださいとのことだったので、夕食を食べ、飲み物などを買ってから夫と車で産院に向かいました。

私は病院の伝説になるほどの超安産で、初産で陣痛開始から出産まで3時間程度でした。陣痛開始から2時間で出産したわけですが、陣痛は最初から間隔が短く、すぐ入院しました。ただ、出産の2〜3日前から腰がすごく重たく、もうそろそろかな? とわからないながらに思いました。

朝4時からズシズシと腰が痛いような感覚。でも1週間程前からそんなことがあったので、まだまだと思っていました。運良く夫が休みの日だったので、近所に買い物に出かけたりしました。「陣痛ってこんな程度の痛みなはずない。今病院に行ったら、まだまだですよ〜と言われて帰される」と言いながら、我慢していました。だんだん痛みも重くなってきて、よくよく考えると痛みが10分間隔に! 半信半疑で病院へ行ったらそのまま入院。助産師さんからは夜中になると言われたのに、陣痛がどんどん進み、夕方には生まれ、家族もびっくりでした。

 

 

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