【医師監修】妊婦健診の尿検査でわかること

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医師川島 正久 先生
産婦人科 | あんずクリニック産婦人科院長

静岡県磐田市生まれ。平成5年神戸大学医学部卒業、神戸市立中央市民病院/淀川キリスト教病院、磐田市立病院に勤務の後2011年にあんずクリニック産婦人科を開業「お産を通して人々に喜びを与える」をモットーに地域の人々のお役に立てるよう励んでいます。

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助産師古谷真紀

一般社団法人産前産後ケア推進協会プロジェクトリーダー。大学病院勤務を経て、2015年より現職。妊娠中や産後の女性のココロとカラダの相談、ママパパ&赤ちゃんのちょっと気になるコトに日々応えています。

尿検査のイメージ

 

今回は、産婦人科や妊婦健診での尿検査についてお話しします。

 

尿検査でわかることとは

尿には、体内で不要になった老廃物や新たに体内に発生した物質、妊娠や病気などで通常より多く出てくる物質など、さまざまな物質が含まれています。尿の中のこれらの物質を調べることで、病気の重症度や妊娠しているかどうかなどを推定することができます。

 

妊娠の有無

妊娠すると胎盤からhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが産生され、妊娠4週ごろから母体の尿の中に現れるため、尿検査をして妊娠の有無を判定します。hCGは、通常妊娠していない状態や男性では産生されません。妊娠判定薬を使って陽性反応が出たら妊娠している可能性が高いと判断できますが、検査する週数が早すぎると正確な判定ができないこともあります。


産婦人科では尿検査で陽性反応が出た場合でも超音波検査なども併せておこない、流産や子宮外妊娠など、正常ではない妊娠のことがないかどうか、正常妊娠かどうかを確認します。

 

つわりの重症度

妊娠によって吐き気や嘔吐などつわりの症状を経験する妊婦さんも見られますが、つわりの症状が悪化した場合、治療が必要になることがあります。


つわりの症状が悪化した状態を妊娠悪阻(にんしんおそ)と言います。嘔吐を繰り返すことで食べること自体が難しくなり、栄養や代謝が障害されるとケトン体という物質が母体の尿中に現れるため、尿検査をしてつわりの重症度を判定します。ケトン体は健康な人の体内にも存在しますが、その量は多くありません。


 

妊娠中の合併症を知るため

妊婦健診では、妊婦さんと赤ちゃんの健康状態を定期的に確認します。このときにおこなう尿検査は尿蛋白と尿糖の有無をチェックしています。

 

【尿蛋白】
妊娠中に尿蛋白の有無を判定することで、腎機能の低下や妊娠高血圧症候群(HDP)の早期発見に役立てます。妊娠高血圧症候群は妊娠中に血圧が上がり蛋白尿が増加する病気ですが、尿を調べることによって、まだ自覚症状のない段階で合併症を発見することができます。


腎臓や尿路系の病気以外でも、疲労やストレスなどの生理的な影響や検査に提出した尿の量が少ない場合などで一時的に尿蛋白が現れることがあります。尿蛋白+(陽性)の場合、尿に含まれるクレアチニンの比率等他の検査項目の結果と照らし合わせたり、他の症状がないかどうかを総合的に判断して、病的な尿蛋白なのか、一時的なものなのかを判断します。

 

【尿糖】
人間の活動するエネルギー源となる糖は、血液によって全身の細胞や組織へ運ばれて腎臓内で尿が作られるとき、血液中の糖は再吸収されて尿の中には現れません。腎臓や糖尿病などの病気以外でも、糖分の多い飲食物の影響やストレスなどによって一時的に尿糖は現れることがあります。尿糖+(陽性)の場合、他の検査項目の結果と照らし合わせて、病的な尿糖なのか、一時的なものかを判断します。


妊娠糖尿病は尿検査ではなく、血液検査で判定します。尿糖+(陽性)が1回でも出たら糖尿病というわけではありません。また、尿糖-(陰性)でも血液検査で糖尿病と診断されることもあります。

 

尿路系の病気かどうかの診断

妊娠中に起こるトラブルには、腎臓や膀胱など尿路系の原因かどうか鑑別が必要になるものがあります。たとえば妊娠4カ月~5カ月ごろには尿の回数も増え、頻尿を経験する妊婦さんも多いのですが、症状から膀胱炎にかかっているのか検査が必要になることがあります。尿の中に通常より多い白血球や赤血球が認められた場合、膀胱炎の可能性が高いと診断できます。


また、下腹部の痛みとして起こる妊娠中の合併症には尿路結石があり、尿検査による精査が必要になることがあります。

 

胎児の機能を知るため

妊娠中の胎児が作り出し母体の尿に排出されるE3(エストリオール)という物質を測定することで、胎児と胎盤の評価をおこなうことがあります。

 

まとめ

尿検査は採血と違って痛みがなく、いろいろなことがわかる便利な検査ですが、その一方で異常があるかないか判断しにくい場合もあります。異常値とされた場合、いろいろな条件から総合的に判断が必要なこともありますので、実際には担当の医師・助産師に直接相談すると良いでしょう。

 


■参考文献■
産婦人科診療ガイドライン産科編2017

厚生労働省 妊婦健診

日本糖尿病・妊娠学会HP

 

 

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