時代錯誤のモラ夫に…
その日も、家事で大忙しの私は、ワイシャツのアイロンがけを夫に自分でやるようにお願いしたものの、「何で俺がやらなきゃいけないの? それは女の仕事だろう」と突き放し、しまいには「要領が悪い! こっちは急いでるんだ!」と、文句ばかりで何もしてくれません。
結婚する前は、家事も積極的に手伝ってくれていたのに、いつの間にか「家事は女の仕事!」と古臭い考えを押し付けてくるように……。
そんな憂うつな毎日ですが、娘は私が頑張っている姿をちゃんと見ていてくれ、とくに私が作った料理を「おいしい!」と褒めてくれます。
実は、私は料理が得意。とくに料理の土台となるだしにはこだわっていて、各地から昆布や鰹節も取り寄せているほど。私が作った料理をいつも笑顔で食べてくれる愛娘のおかげで、私はつらいことも乗り越えてきたのです。
娘と一緒に仕返しを決意
この日、娘のリクエストで作ったハンバーグでさえ、「何これマズ! もっとおいしく作れよ!」「お前が手抜きしてるのは、一目瞭然なんだ」「とにかく、お前の料理はマズイ! 俺がマズいって言ったらマズいんだよ!」と暴言をまき散らします。
おまけに「俺、やっぱりお前と結婚してよかったな〜。八つ当たりできる相手がいるって最高だ!」と言い出し、そこら中に脱いだ服を投げつけて、自分の部屋へ行ってしまいました。
あまりに理不尽な夫の言動に怒りがこみ上げてくる私。
しかし、怒っていたのは娘も同じでした。
「何あれ……。絶対に許せない。ママにあんなひどいことを言うなんて」
ついに夫への仕返しを誓う私と娘。
話し合いの結果、私と夫の共通の友人である夫妻をわが家に招待することに決めました。
夫に伝えると、とてもうれしそうな様子でしたが、相変わらず「マズい料理で俺に恥をかかせるな!」と減らず口を叩いていました。
かわいそうなパパ…
それから1週間後。自宅に招待した友人夫妻がわが家にやって来ました。
「今日はお招きありがとうございます。私も夫もすごく楽しみにしてたのよ」
穏やかな口調の奥さんからお土産のケーキを受け取った娘。
「ケーキありがとうございます! 今日はママの作ったおいしい料理をたくさん食べてくださいね!」とあいさつする娘に、夫はわざとらしく遮ります。
「噓つきは泥棒の始まりって言うだろうが~。ママの料理はいまいちなんだから、そう言っちゃ嘘になっちゃうだろう」
すぐさま、「おいしい料理の味がわからないなんて味オンチ? 単にママを見下しているだけじゃない! 作った人に感謝できないって、本当にかわいそうなパパ」と返す娘に、夫もタジタジに……。
そんな夫は放っておき、得意料理で友人夫妻をもてなす私。
「どれもおいしい!」と言ってもらえて安心しますが、その横では仏頂面でワインをがぶ飲みする夫がいました。
ギスギスした雰囲気の中、酔っぱらった夫が「本当にこの料理がうまいと思ってます?」と友人夫妻に絡み始めます。
「作った料理って、なんかマズイんです。だから俺はいつも言ってやるんです。うわマズ! まともに料理も作れないのか?ってね」
外面のよい夫の本性が浮き彫りになったところで、友人夫妻の奥さんがこの辺りでは有名な料理研究家であることを明かされます。
「いつもこうやって、妻の作った料理をけなしているの!? ホント信じられないわ!!」
料理のプロである第三者からの制裁を受け、次第に顔が真っ青になっていく夫。
しまいには、私に離婚話を突きつけられ、事の重大さに気づいた夫は泣きながら家を出て行きます。
夫のモラハラぶりは会社でもウワサが広まり、居場所を失ったうえに多額の慰謝料を背負うことになったのでした。
◇ ◇ ◇
妻を見下すことで精神的な満足を得ようとするのは、健全なコミュニケーションとは言えません。いずれ「大人げない人」と、逆に周囲から見下されかねないことを肝に銘じたいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。