返礼品の充実で利用者が増えたふるさと納税ですが、過剰となった返礼品競争を抑制するために2019(令和1)年6月1日から制度が変更となりました。返礼品の上限や条件が定められ、対象とならない自治体も出てきました。年末は駆け込みでのふるさと納税が多い時期ですので、新たなふるさと納税のルールや活用法についてお伝えします。
新しいふるさと納税の制度
2019(令和1)年6月1日に変更となったふるさと納税については、総務大臣が以下の要件に該当した自治体のみをふるさと納税の対象として指定することとなりました。その要件とは、以下のとおりです。
(1)寄付金の募集を適正に実施する自治体
(2)返礼品を送付する場合は、以下の2要件を満たす自治体
①返礼品の返戻割合を3割以下とすること、②返礼品を地場産品とすること
この要件に該当しない小山町(静岡県)、泉佐野市(大阪府)、高野町(和歌山県)、みやき町(佐賀県)と申し出を行わなかった東京都の5団体(2019年6月1日現在)に寄付(ふるさと納税)を行っても、所得税・住民税の控除対象とはなりません。なお2019年10月現在、泉佐野市が国地方係争処理委員会に審査の申し出を行い、結論は出ていない状況です。
新しいふるさと納税と返礼品の考え方
新制度では返礼品が寄付金の3割以下になったため、単純に返戻品が欲しい場合にはお得度が減った形になりました。例えば、旧制度では1万円の寄付(ふるさと納税)に対し5000円相当のお米やお肉などの返礼品が届いたこともありますが、新制度ではお米やお肉などにしても3000円相当が上限となっています。自己負担額が2000円ですので(※)1万円の寄付をした場合は1000円程度のお得度合いとなります。そのため、自己負担額が2000円以内の範囲であれば、寄付金額を増やした方がお得な度合いが増える形となります。
【寄付金の比較例】
寄付金1万円の場合
返礼品上限3,000円 自己負担2,000円 所得税・住民税還付額 8,000円
寄付金3万円の場合
返礼品上限9,000円 自己負担2,000円 所得税・住民税還付額28,000円
返礼品の要件に上限額や地場産品が求められているため、各自治体も工夫を凝らし、花火大会やキャンプ・バーベキュー、地元施設のレジャー券等の体験型のものや、寄付をした人限定の見学ツアーなど独自色が強くなっています。また、返礼品はないものの被災地への寄付も自己負担2000円でできますので、被災地支援を考えている人は従来のふるさと納税と合わせて、利用を検討してみましょう。
6月1日以前にふるさと納税で返礼品を受け取っていた人には物足りない制度変更ですが、本来の目的である出身地や応援したい自治体に寄付をすることで、地場産品の返礼品を受け取れるという形になりました。上記の比較にもあるように制度変更後の3割を上限とした返礼品でも、寄付金額次第では実質負担より返礼品の価値が高くなる場合もあります。今後も自己負担額が2,000円となる寄付の上限を確認した上で、ふるさと納税の利用を引き続き検討されると良いでしょう。
※ふるさと納税は所得などに応じた範囲内の寄付であれば、2,000円のみが実質負担となります。(範囲を超えて寄付をすると自己負担額が2,000円以上に増える)一例として、ある地方自治体に1万円を寄付して、返礼品として5,000円相当のお米をもらったとします。それだけでは、1万円を払って5,000円のお米をもらっただけになりますが、2,000円を超えた部分は手続きすれば、所得税・住民税が8,000円が減額されるので、実質2,000円で5,000円のお米を手に入れたことになるのです。