こんにちは、小児科医の保田典子です。私生活では3人の子どもを育児中です。
夏の暑さが本格化する時期は、ベビーカーに乗った赤ちゃんが熱中症のような症状を訴えることも。
大人が思っている以上に、赤ちゃんは暑さの影響を受けやすいもの。注意したいポイントをお伝えします。
赤ちゃんは熱中症になりやすい
ご存知の方も多いかとは思いますが、小児は成人より体の中の水分比率が多く、かつ体積がそもそも小さいので、少し水分を失っただけでも、大人よりも水分喪失の影響が大きくなります。
体積が小さく、体重あたりの表面積は広いため、外気温に体温が影響されやすいという側面もあります。そのため、ちょっと汗をかいただけでも熱中症になりやすいのです。
今年は「朝起きたら熱中症の症状だった」という子もたくさん診察しています。
ベビーカーは大人が感じるよりもずっと暑い
熱中症の危険因子として、暑さ指数(WBGT)が使われることが多いですが、その暑さ指数の測定は、大人の身長に近い150cmを指標にしています。
環境省の「熱中症予防情報サイト」によると、
「子ども、車いすの方を想定した50cmの高さでは大人を想定した高さ150cmに比べ、暑さ指数は平均して0.1~0.3℃高くなります。風が弱く、日射が強いときには2℃程度高くなった事例もありました。また、子ども・車いすを想定した50cmの高さでは大人の高さの150cmに比べ、地表面の影響を受けやすいため、体感温度はさらに高くなります」
と警告しています。
たとえば、気温32℃のとき、幼児の身長50cmの高さでは35℃を超えるそうです。地面から近いベビーカーに乗った赤ちゃんの体感温度は、大人よりも高いのです。
さらに、日焼け対策として幌(ほろ)などの日除けを使用すると、ベビーカー内に熱がこもり、大人が感じるよりもずっと暑い環境になってしまう可能性があります。
熱中症の症状チェックポイント
熱中症は、進行に応じて3段階に分けられます。
第1段階
●汗だくになる
●水分を欲しがる
この段階であれば、水分をとって体を冷やしてあげれば、熱中症というほどにはなりません。
第2段階
●発熱しているように体が熱い
●機嫌が悪い
●少しぐったりしている
屋外でこの状態に気づいたら、すぐに涼しい場所へ移動し、水分がとれそうならしっかり水分補給します。また同時に、脇の下や首のうしろを、氷枕などを使って冷やしてあげてください。
第3段階
●汗が出なくなることもある
●ぐったりしている
●意識がもうろうとしている
この状態になっていたら、赤信号です。すぐに病院を受診しましょう。
赤ちゃんは大人よりも脱水になりやすいので、急激に症状が出ることもあります。
暑い日はこまめに状態をみてあげてください。
また、体温が40℃を超えている、意識障害やけいれんがある場合は、すぐに救急車を呼んでください。
お子さんに上記の症状がないか、暑い日はよくチェックしてみてください。風邪症状など何もなかったのに、急に元気がなくなるのは熱中症のサインということもあります。
暑い日にベビーカーでお出かけするポイント
①一番暑い時間帯は避ける
11時から16時までが熱中症発生リスクが一番高い時間帯です。特に、一番気温の高い14時前後のお出かけは避けたほうが良いでしょう。
②こまめに様子を見る&水分補給
とにかくこまめな水分補給を心がけましょう。夏でも、赤ちゃんは母乳かミルクだけで大丈夫ですが、頻繁に授乳するのが難しい場合や特に暑い日などは、麦茶などを準備しておいて、10分~15分おきなど、こまめに飲ませるようにしましょう。
水分補給と同時に顔色なども見て状態をチェックすることも大切。ずっとベビーカーに座らせっぱなし、寝かせっぱなしではなく、たまに抱っこしたりしてベビーカーから出してあげると、赤ちゃんがどれだけ汗をかいているか、体が暑くなりすぎていないかなどもチェックできて、さらにベビーカー内の気温も下げることができるので良いでしょう。
③風通しを良くする
風通しが良いと、ベビーカー内の気温上昇も防げます。日除けカバーの使用も注意したほうがよいのですが、幌をガバッとあけて直射日光を浴びるのも良くないので、日陰を作りつつ、風の通り道を作るようにしましょう。
携帯用の扇風機なども有効だと思います。その場合はお子さんが扇風機の羽を触らないように工夫してくださいね。
ベビーカーに敷くひんやりとしたシートを敷いたりするのもよいですが、効果は限定的です。ベビーカー内の気温調節や水分補給をメインで気をつけて、補助的にグッズを利用する気持ちでいましょう。
外出は、赤ちゃんにとって家では味わえない刺激を与えられ、体力づくりにも良いです。しっかり対策して、安心してお出かけできるといいですね。