こんにちは。小児科医の保田典子です。今回はきょうだい喧嘩について。どんなに仲良しなきょうだいでも、特に年齢が近ければ「喧嘩がない」ということはないと思います。
そんなきょうだい喧嘩で、親御さんに知っておいていただきたいNG行動についてお話ししたいと思います。
きょうだい喧嘩はあって良い!
2~3歳の子どもは脳の「前頭前野」と呼ばれる場所の機能が未発達で、自分の衝動を抑えることが苦手です。かつ、まだ言語も発展途上なので、自分の気持ちをうまく言葉で表現できない分、手が出てしまうという側面があります。
そんな子どもたち同士ですから、遠慮しない仲であるきょうだいが相手なら、喧嘩があって当然です。
親としては「きょうだい喧嘩はやめて!」と思ってしまいがちですが、喧嘩の中で
●自分の気持ちの表現の仕方
●殴ったり殴られたりすると痛いこと
●怒った気持ちのおさめ方
などを学んでいきます。
ひとりっ子だと喧嘩の経験は少ないですし、必ずしも必要な経験ではありませんが、良い社会勉強の場であると思います。
喧嘩の仲裁はNGです!
基本的に、親がきょうだい喧嘩の仲裁をするのはNGと考えてください。
その理由は、
●仲裁されてしまうと、子どもの気持ちの行き場がなくなってしまう
●「親は自分の味方をしてくれない」という気持ちが積み重なる
●喧嘩を自分で収める方法を学ぶ場がなくなってしまう
からです。
せっかく喧嘩の中から学べることを、親が仲裁することで学べなくなってしまうわけですね。何のために(もちろんしなくてもいいのですが)喧嘩したのだかわからなくなってしまいます。
親はフェアな立場でいたほうが良いワケ
きょうだい喧嘩は上の子が優勢なことが多いので、親はつい下の子の味方をしてしまいがちです。
そんなご家庭の上の子のお子さんは「うちの親はいつも味方してくれない」という気持ちが残ってしまい、これは大きくなってからも引きずります(子どもの「親に自分を見てほしい」気持ちって本当に大きいのだなと感じます)。
きょうだい喧嘩で仲裁するときは、下の子に限らずどちらかの味方ばかりしてしまわないように気をつけましょう。
大ケガをしそうなときだけ止める
親が割り込んでいいのは「大ケガにつながりそうなとき」です。わが家では、素手できょうだい喧嘩しているうちは様子を見ていますが、物で殴ろうとしたときは止めています。
このときも、喧嘩を仲裁するのではなく、「物を使って殴ること」が良くないので、そこだけを叱ります。
子どもの告げ口への対応法
子どもって不思議なもので、わが家もどんなに仲裁をしなくても、なぜか「〇〇が□□してきた」などと言いつけてきます。
そのとき、その言いつけで〇〇の子を叱るのではなく、「□□してきたんだね」、「~~な気持ちだったんだね」、「××するのは良くないよね」と、言いつけてきた子の気持ちを代弁してあげることに留めるようにしましょう。
相手のきょうだいにも言い分があるはずなので、言いつけてきたほうの言うことで叱るのはフェアではないですし、喧嘩で学べることは「自分の気持ちの表現方法」なのですから。
きょうだい喧嘩で社会性や表現力を育もう
多くのお子さんは、きょうだい喧嘩は激しくても、お友だちとは小競り合いくらいで終わることが多いです。また、きょうだい喧嘩の場合でも、激しい喧嘩とはいっても、大ケガになるまで発展したという子もあまりいません。
きょうだい喧嘩をするのは当たり前! その子どもたちの姿を見て「社会性を育んでいるんだな」と眺めて見守るくらいの気持ちでいましょう。
きっと「喧嘩するほど仲がいい」はずです! 本当に危ないときは注意したほうがいいですが、きょうだい喧嘩も成長のうちだと思って、見守りたいですね。