貯蓄(預貯金や有価証券の運用等)を始めたい、増やしたいと考えている人は多いと思いますが、上手にできない、長く続かないという人も多いのが実情です。貯蓄を増やすには、単純に考えると支出を減らすか、収入を増やすか、のいずれかが必要です。月3万円程度の貯蓄を増やすために、今回と次回で具体的にできる方法をいくつかお伝えします。月3万円でも貯蓄が継続できれば、15年で540万円、30年で1080万円と決して少なくない金額になります。
そこで今回は「支出」についてできることをお伝えしてまいります。
1.支出の削減の王道は固定費を削減することです。
固定費を削減する場合には、プランや内容の比較や手続きの煩雑さもあり、後回しになることも少なくないのですが、固定費は一度設定してしまえば、その効果も継続できるため、貯蓄を増やしたい場合は優先して取り組むと良いでしょう。なお、ご家庭ごとや個人ごとにできる項目は異なりますので、以下の項目が改善できないか(他社への変更、プランの見直し、解約等)確認・検討をしましょう。
①光熱費・通信費(電気代、ガス代、固定電話、携帯電話、インターネット回線、プロバイダなど)
ほとんどのご家庭で使う光熱費・通信費は電力・ガスの自由化や格安SIM(MVNO)の登場により、以前より選択肢が増えています。また、電気とガス、固定電話と携帯電話とインターネット回線等を組み合わせると割り引かれるプランも増えています。組み合わせのプランを利用するか、単体のプランを利用するかは料金の合計や特典などを比較すると良いでしょう。
スマートフォンは2021年3月からキャリア3社でキャリアメールが使えず、インターネット等での店舗外の手続きを条件に料金が安い新プランが登場し、格安SIMを取り扱う業者も増えています。また、KDDIのサブブランドであるUQモバイルやソフトバンクのサブブランドであるワイモバイルもキャリアから変更する選択肢として考えられます。業務や趣味などで通信品質が安定しているものが必要な人や通信エリアが複数選べない場合は現状維持もやむを得ませんが、自宅に固定回線を引きWi-Fi等に接続している場合などでは、通信料金を下げられるプランや通信会社を選択できれば、月1,000円以下~3,000円程度まで通信料金を下げることができますので、変更を検討すると良いでしょう。
②住宅費(住宅ローン<借り換え・繰り上げ返済>、家賃など)
住宅ローンの借入金利は2022年後半から固定金利が上がり始めています。2023年3月時点で、フラット35(35年固定)で1.96%~3.27%、主な銀行の変動金利で0.289%~2.675%となっています。現在、住宅ローンを利用している方は現在の借入金利より1%程度下げることができれば、固定費の削減ができる可能性が高まります。
例えば、借入額3,000万円・返済期間30年のローンを年1.0%と年2.0%の金利で比較すると、月の返済額で約15,000円、支払総額で約540万円の差となります。なお、ローンの借り換えには手数料がかかるため、総額で支払の削減になるかを計算したうえで、借り換えを検討してみましょう。また、手元の資金に余裕があり普通預金・定期預金にその資金が集中している人は繰り上げ返済をすることで今後支払う利息がどれだけ削減できるか試算して、可能な場合は繰り上げ返済をすると良いでしょう。
③保険料(生命保険、医療保険、自動車保険など)
2018年3月以前に定期保険・収入保障保険等の死亡保険に加入している人は健康状態が加入時より悪くなっていなければ、新たに同様の保険に切り替えることで保険料が下がる可能性があります。また、たばこを吸っていない人が死亡保険の加入時に非喫煙者の割引を受けていない場合には、非喫煙者割引の適用を受けられる保険に加入することで保険料が下がる可能性もあります。また、勤務先の団体・グループ保険や共済等に切り替えると生命保険より保険料を抑えることができる場合もあります。
自動車保険や医療保険等はインターネット専業の保険会社やいくつかの保険会社で比較すると現在の保険料より下がることや内容が充実する可能性があります。
なお、貯蓄性のある保険(学資保険、終身保険、個人年金、養老保険など)は低金利の影響が大きい2023年3月現在では、取扱いがなかったり返戻率が低かったりする場合もあります。そのため、マイナス金利の影響を受ける前(目安として2017年3月以前)に加入した貯蓄性のある保険については、保険料の支払いが可能な場合には、できる限り解約せず継続するようにしましょう。
④サブスクリプション・定期購入
サブスクリプションや定期購入(新聞・雑誌の定期購読、有料の動画や音楽配信、スマートフォンやPCなどのアプリ、ウォーターサーバー、通信販売<食品・サプリメント>など)しているものに関しては、不必要なものや利用頻度の低いものは解約をするか、都度の購入に変更できないか、またはプランの変更はできないかを確認し、可能な場合は解約または変更の手続きをしましょう。
⑤月会費・年会費
月会費や年会費(クレジットカード、ジム・カルチャースクール、スーパー・ネットショッピングなど)に関しても利用頻度の低いものは解約できないか、プランの変更はできないか確認し、可能な場合は解約または変更の手続きをしましょう。
2.変動する費用は毎月の予算を設定し、使い過ぎを防ぎましょう
貯蓄ができない人は、使っている金額を把握していない場合が多いです。そのため、固定費以外の変動する費用については、毎月の予算を設定すると良いでしょう。以前からよく使われている方法ですが、毎月使う金額を項目別に封筒に分け、予算額と使った金額を記入し、使った金額を確認すると使い過ぎが防げます。
なお、当初の予算を超えた場合は、翌月の予算で調整をし、不足している状況が数か月続く場合には、予算設定がそもそも合っていない可能性もありますので、その場合には全体の予算を見直しましょう。
主な変動費としては、食費、日用品費、交通費、医療費、交際費、美容費、夫婦の小遣い、予備費等が想定できます。また、ご自身やご家族で必要な項目を設定しても良いです。外食の頻度が多いご家庭では、食材費と外食費を分けたり、お酒やタバコ、珈琲などの嗜好品への費用が多い場合には独自に項目を設定したりするとことも検討しましょう。
支出の傾向を把握し、使い過ぎを防ぐことが目的ですので、細かく家計簿の記録をすることが苦手な方は、当面は大まかな記録でも良いでしょう。最終的には、支出の状況を把握したうえで、家計の流れを「収入」-「支出」=「貯蓄」ではなく、「収入」-「貯蓄」=「支出」にして、貯蓄を予算化することです。
今回は支出について、固定費の削減と変動費の予算化を中心にお伝えいたしました。既に対策しているものや対策が難しいものもあると思いますが、一つでもできることから始めてみましょう。次回は貯める方法や副業についてお伝えする予定です。