貯蓄(預貯金や有価証券の運用等)を始めたい、増やしたいと考えている人は多いと思いますが、上手にできない、長く続かないという人も多いのが実情です。貯蓄を増やすには、単純に考えると支出を減らすか、収入を増やすか、のいずれかが必要です。支出を減らし、収入を増やしたおかねはそのままにしてしまうと生活費などに紛れて貯蓄額が把握しにくくなります。今回は貯め方についてできることをお伝えしてまいります。
1.将来使うためのお金を貯めるには生活口座とは別の口座にしましょう
固定費などを削減し、副業などで収入を増やしたとしても、それをしっかりと貯めなければ貯蓄を増やすことはできません。貯蓄する目的としては、お子さんの進学費用や住宅購入資金などがあると思いますが、必要な期間や金額を事前に把握しておきましょう。
例えば、15年後の進学費用に400万円が必要で、利率を0とした場合には、毎月22,223円の貯蓄が必要です。目的と期間、金額が決まったらこれを確実に貯められるように貯め方を工夫しましょう。普段の光熱費や通信費、クレジットカード等の振替をする生活口座とは別の口座で貯めることによって、残高が多いことによる安心感からの使い過ぎを防げ、具体的な貯蓄額が分かり易くなります。なお、毎月生活口座から貯蓄用の口座に移すことでも対応できますが、自動的に貯蓄できると確実性が高まりますので、次項以降でその方法についてお伝えします。
2.積立定期預金は元本割れしたくない人に向いています
いつでも元本割れしないもので貯めたい場合は、毎月積立の定期預金(積立預金、積立定期預金など金融機関によって名称が異なります)が適しています。勤務先に財形貯蓄の制度があれば、給与から直接積立ができます。定期預金は、普通預金等と合わせて1000万円以内であれば銀行等が破たんしても保障されますし、中途で解約した場合でも利息は減るものの元本は保証されますので、元本をいつでも下回りたくない人は積立定期預金が向いています。なお、マイナス金利の影響を受けていますので、2023年4月時点では、年利0.01%~0.02%の金融機関が多く、ほとんど利息は期待できません。また、2022年からは預金金利より物価の上昇率が高い状況となっていますので、相対的に預貯金の価値が下がっているため、当初に想定した金額では不足する可能性があることは意識されると良いでしょう(例えば、5年後に200万円の自動車を購入しようとして貯蓄をした場合でも、5年後には250万円が必要になる可能性があります)。
3.学資保険は受け取れる時期と返戻率を確認しましょう
学資保険(こども保険、こども共済など保険会社等によって名称が異なります)は毎月(半年に1回・年に1回にまとめて支払うこともできます)保険料を支払い、満期に学資金を受け取れる保険です。また、契約者(多くの場合は父親か母親)が亡くなった場合には、その後保険料を支払わなくても満期まで保険が継続されます。将来の学費を貯めつつ、生命保険の役割も果たす商品ですが、2016年に始まったマイナス金利の影響で以前より返戻率(払い込んだ保険料総額に対して満期で受け取れる金額の率)が低くなってきています。また、中途解約をする場合には、解約する時期によっては元本割れする可能性があります。なお、受取時期を20歳、22歳などの18歳以降に設定しているものや払込期限を10歳や12歳などに早めているものも増えてきました。保険会社によっては死亡保険の部分を手厚くする一方で満期を迎えても元本割れするものもあるため、加入する際には満期の返戻率や受け取れる時期を確認するようにしましょう。
4.外貨建保険や変額保険はリスクや種類を確認しましょう
学資保険の返戻率低下や販売停止の代替商品として、多くの保険会社や保険代理店で外貨建保険(アメリカドルやオーストラリアドルでの積立)や変額保険(株式・債券等で積立・運用する)の提案・販売が増えています。外貨や株式・債券で運用すれば、従来の学資保険よりプラスになる可能性が期待できる反面、為替相場や経済状況によっては元本割れする可能性もあります。2022年にはアメリカドルが1月には1ドル115円前後でしたが、10月には150円を超えた局面があり、購入時期によってはプラス評価になった人がいる一方、短期的には10%を超えるマイナス評価になった人もいます。15年から20年の積立・長期運用であれば、短期で運用するよりリスクを低減することもできますが、常に元本を確保することはほとんどできません。貯蓄性のある保険は終身保険タイプ(保障期間が一生涯)と養老保険タイプ(保障期間が一定期間)の2種類に分かれますが、多くの場合は養老保険タイプの方が返戻率は高い場合がほとんどです。検討する際には、価格が変動する要因や保険の種類も合わせて確認するようにしましょう。保険の担当者の説明を聞いて理解・納得ができない場合には、別の方法での積立を考えた方が良いでしょう。外貨建の運用は保険だけでなく、積立預金やMMF、投資信託等の商品もあるため、ご自身やご家族に適したものを選ぶと良いでしょう。
5.つみたてNISAはいつでも現金化できます
つみたてNISAは2018年から始まった、成人が1年あたり40万円までの金融庁が指定した投資信託(2023年4月7日時点で225種類)を最長20年間、非課税で積立ができる制度です。積立の目的は子どもの教育費の準備に限らず、定期預金や保険と異なり、当初から満期が決まっているものではないため時価での評価とはなりますが、いつでも換金ができます。
通常の運用や預金の場合は収益や利息に対し20.315%掛かる所得税・住民税が、この制度を使うと0になることが主なメリットです。その一方で元本保証はなく、選択肢が多いため自分で投資対象を組み合わせる必要がある点がデメリットです。
4.の外貨建保険や変額保険と同様に価格変動によって受け取れる金額も上下しますが、投資信託には保険の機能(保険の対象者が亡くなった場合に死亡保険金が家族に支払われる機能)がなく、そのコストがないため、同じ内容の運用であれば、つみたてNISAで投資信託を運用した方が将来手にする金額は多くなります。逆に投資信託は選択肢が多いため、ご自身で判断ができない場合や勧められた内容が理解できない場合には、見送ることも必要と思います。ご自身で勉強をしたり、証券会社・銀行等の担当者やファイナンシャルプランナーなどに適切なアドバイスを受けたりして、上手に活用すれば、毎月積み立てた金額より多くの金額を受け取る可能性が上がるので、まずは最低限の金額(証券会社によっては500円~1000円の場合も)から始めてみることも一つの選択肢と思います。 なお、2024年からはNISA制度が変更となり、1年あたり投資上限が120万円(合計最大1800万円)に上がり、非課税期間も無制限となるため、さらに利用しやすくなる予定です。
どの積立を選ぶにしても、一長一短ですべてにおいて優れている積立方法はありません。そのため、複数の組み合わせができる場合は、最初は手間もかかりますが、バランスの取れた積立をすることができます。例えば、予算が月3万円ある場合には、1万円をつみたてNISAで投資信託を積み立て、1万円を学資保険、1万円を積立定期預金にすれば、受け取る金額の収益を期待しつつ、3分の2は満期まで継続すれば元本も確保できます。元本の確保を優先するか、受け取る金額の増加を優先するか、ご自身やご家族の経験や考え方に基づいてご判断いただければと思います。積立方法が決まらない場合は、生活口座と別の口座に毎月貯めるだけでも将来の貯蓄額は変わります。支出を減らし、収入を増やした分を貯めるためにも確実な貯まる仕組みを使うこと検討してみましょう。
※なお、本記事は、特定の運用商品・保険商品を推奨するものではありません。価格変動のある外貨建保険、変額保険、投資信託等の運用商品の購入は、ご自身の責任・判断に基づいて実行してください。