たっぷりの白菜を使ったシンプル鍋
劇場設計者や小説家などの顔をもつ、妹尾河童さんが著書『河童のスケッチブック』で紹介していた「ピェンロー鍋」。
著書のなかで、中国に長く住んでいた友人が教えてくれた「広西州の田舎料理」と述べています。
漢字で書くと「扁炉」。「扁」とは「ささやかな」「素朴な」という意味があるそうで、中国の素朴な白菜鍋と紹介していました。
具材は白菜、椎茸、豚肉、鶏肉、春雨とごくごくシンプル。
それでも何人もの友人から催促されるそうですよ。妹尾さんによると「この鍋のいいところは『えいやっ!』と大ざっぱに作っても間違いなく美味しい」とのこと。
『河童のスケッチブック』を参考に作ってみましょう。
妹尾河童さん「ピェンロー鍋」の作り方
材料(5人分)
- 白菜…1玉
- 干し椎茸…50g(水に浸けて戻しておく)
- 豚バラ肉の薄切り…500g
- 鶏もも肉…500g
- 春雨…1袋
- ごま油…適量
調味料
- あら塩…適量
- 一味唐辛子…少々
今回はざっくり2~3人前作ることに。春雨は様子を見て追加していきました。
白菜は、1/2玉を使用しました。それでも白菜の量が多いので、大きな鍋を使用するのがおすすめです。
材料の補足
『河童のスケッチブック』では中国山東省龍口(りゅうこう)の「緑豆春雨」が溶けてドロドロにならないと勧められていました。
産地の記載はありませんでしたが、今回は中国産を使用。
ごま油は極上品より、色が付いていて香りの強い普通のもの。あら塩は精製した卓上塩でないものがいいとの記載もあったので、参考にしてください。
作り方①材料を切る
白菜は5cmのザク切りにし、根元と葉先に分けておきます。豚バラ肉と鶏もも肉は食べやすい大きさに切っておきましょう。
作り方②白菜を煮る
大きい鍋に白菜の白い部分を入れ、たっぷりの水と干し椎茸の戻し汁を加えて、火をつけてください。
椎茸は食べやすい大きさにスライスしておきます。
作り方③他の具材を入れる
沸騰したら豚肉、鶏肉、椎茸を入れ、ごま油を大さじ4ほど入れてください。材料を鍋に入れる順序や火加減に気をつかう必要はないとのこと。
とはいえ、強火だと吹きこぼれてしまうため、様子を見ながら調整するのがよいでしょう。
作り方④残りの白菜を入れて煮る
しばらく煮て、残りの白菜の葉を追加してください。
この時点で我が家の特大鍋はてんこ盛りですが、煮えるとかさが減るので安心してくださいね。
煮る時間の目安は40分。途中でアクを取りながら煮込みました。
作り方⑤春雨を入れる
最後に春雨を入れて、食べる直前にごま油を”の”の字を書くように再度たっぷりと垂らせば、できあがり。
春雨は煮すぎないよう注意してくださいね。
調味料のあら塩と一味唐辛子は、後から器に入れるので、用意しておきます。
【実食】優しさの中に感じる滋味深さ
作り方は簡単ですが、大事なのはここから。
鍋の中は味付けされていません。器にあら塩を好きな分だけ、一味唐辛子を少々入れて、鍋のスープで溶かしていただきます。少し塩加減が濃いほうがおすすめなのだとか。
入れすぎには注意しながら、味を調整してみてくださいね。
ごま油の芳醇な香りがふわりとただよいました。その香りに導かれるようにスープをひと口。澄み切った味わいと具材の旨みが舌に染み込みます。
最低限の調味料だけなのに、こんなにも豊かな味わいになるとは、何度食べても驚きです。
あれだけ山盛りだった白菜はいつの間にかくたくた。じんわりと広がるスープの旨みをまとい、冬の寒さを忘れさせてくれます。
スープをたっぷり吸い込んだ春雨は、口につるんと滑り込む幸福。
パサつくことなくしっとりやわらかな鶏肉、脂の甘みと肉の旨みが溶け合い、舌の上でほぐれていく豚バラ肉、心を揺さぶる美味しさです。
脂が溶け出ているため、しつこさは感じられません。
塩と一味唐辛子だけで調えた優しくも鋭い味わいが、その存在感をさらに引き立てます。
豚肉が飽きたら鶏肉へ、その逆も然りで、なんとも贅沢な鍋なのでしょう。
締めはピェンロー粥で
最後はご飯(分量外)を加えて、ピェンロー粥にすると余すことなく味わえます。
同じように塩と一味唐辛子で味付けをして、卵(分量外)を割り入れました。素材の美味しさを存分に吸い込んだ粥は絶品ですよ。
この冬はピェンロー鍋を
今回は1/2玉の白菜を使ったのですが、一番はじめに平らげたのは白菜でした。それほど白菜が美味しくなります。
この冬を乗り切れるような力強ささえ感じられるピェンロー鍋。ぜひ作ってみてください。
出典:妹尾河童. 河童のスケッチブック.文春文庫,1999, p.224-227.