離婚して帰ってきた幼馴染
私は看護師として働いていて、月に数回は夜勤もこなしています。今日は夜勤明けに夕飯の買い物を済ませてしまおうと思っていたのですが、ちょうどそこに夫からメッセージが届きました。
どうやら今日は仕事帰りに実家へ行くようで、夕飯はいらないとのこと。私が不規則な勤務なので、夫は一緒に食事ができる時間を大事にしてくれています。だから、よほどの理由があるのだろうと思い、私は何も聞かずに了承しました。
その夜、夫は深夜になって帰宅。家に着くなり夫は「実は……」と、幼馴染のことを話し出しました。夫には家が隣同士のリカコさんという幼馴染がいるのですが、そのリカコさんがご主人のDVと浮気が原因で、逃げるように実家に戻ってきたとのこと。着の身着のままで出てきてしまったので、荷物を取りに帰るのに一緒に来てほしいと相談されたのだそうです。
リカコさんは私たちの結婚式に出席してくれたので、私も顔は知っています。とても控えめで、かわいらしい女性です。あの華奢な体でDVを受けていたなんて……。想像するだけでおそろしいです。夫も事情を知り、できる限り協力すると言ったそうなのですが、そこで厄介なことが起こってしまったのです。
まさかの人物の突然の訪問
夫の話によると、駅から少し距離がある義実家には、駅からタクシーで向かったようなのですが、隣の幼馴染の家に入るところを義母に見られてしまい、話を聞かれてしまったと……。実は義母は、近所中に噂話を拡散するスピーカー。
「ご近所さんの問題は地域の問題!」と、本人に悪気がないのがこれまた厄介なのです。デリケートな話だけに、口止めはしたらしいですが、噂好きの義母が黙っているかどうかはわからないと夫は言います。
リカコさんは相当精神的に参っているようで、近所中で噂をされたら外出すらままならない状態になるんじゃないかと、夫は心配していました。そんなわけで、しばらくは様子を見に行かなくてはいけなくなるから、自分のことは気にせず食事をしてほしいと言われ、私も了承したのですが……。
それから2週間ほどしたある夜。今日は夫から職場の飲み会があると聞いていたので、私はデリバリーで夕飯を済ませ、ゆっくり過ごしていました。そこに、インターホンが鳴り響きます……。荷物が届く予定もなく、一体誰だろう? そう思って出てみると、そこにいたのは、まさかの義母とリカコさん。私が慌てて出迎えると「今日は話があって来たの。」そう義母が言い、リカコさんが続きます。
「私、ユウタの子どもを妊娠しています。夫から逃げて実家に戻ってきたのは、この子を産むためです。」そう言って、私に離婚届を差し出してきました。それをすぐに書いて、ここから立ち去ってほしいと言ってきたのです。
私は、頭が真っ白に……。しかし、おなかの中に子どもがいるとなると、私がいくら抵抗しても無駄だということは明らか。数分考え、私は決めました。
え?夫から届いたとぼけたメッセージ
「離婚届が置いてあったけど」
「どういうこと?」
日付が変わり、夫からとぼけたようなメッセージが届きました。
「離婚で許されるんだから感謝してよ」
思わずそう言ってしまった私。
「え?」
夫は何も心当たりがないといったような口ぶりだったので、私はさっきあった出来事を話しました。そして、長い間私を裏切っていたことは、しっかり謝ってほしいと告げたのですが、夫は何も知らないの一点張り。しばらく押し問答を続けていると、夫が突然「母さんか……!」と言って、やり取りは終了しました。
それから1時間ほど経ったころ、夫から電話がかかってきました。出てみると、夫に促され「……ごめんなさい」と弱々しく謝る義母の声が聞こえます。何を謝られているのか理解できなかった私に、夫が話を整理してくれました。
義母に振り回された結果…
実は、義母はずっとリカコさんに嫁に来てほしいと思っていて、実家に戻ってきたことを知り、またそんな思いが再燃したそう。さらに、リカコさんが望まない妊娠をしていることがわかると、息子と一緒に育てればいいと連日リカコさんに言い続けたのです。最初は相手にしていなかったリカコさんも、説得し続けられた結果、疲れて折れてしまい、義母に言われるがまま、離婚届を持って私に会いにきたのでした。つまり、リカコさんのおなかの子は、夫の子ではありません。そして、リカコさんと夫は、幼馴染以上の関係ではなかったのです。
夫はその場で義母と絶縁を宣言。そして、私とは別れたくないと言ってくれました。私たちは無事に仲直りして、リカコさんからも、事情を知ったリカコさんのご両親からも何度も謝罪をしてもらいました。
ご近所に「孫ができる」なんて話して回っていた義母。しかし、義母のせいでざわついていたご近所に、リカコさんのお母さんが、すべてを丁寧に訂正し、お詫びしたことで、義母はすっかり白い目で見られるようになったのだとか。自分が噂の中心になってからは、まわりの目が気になって、引きこもり生活を送っているそうです。おかげで、私たちの生活は平穏を取り戻すことができました。
◇ ◇ ◇
何度もしつこく説得されて、折れてしまいたくなる気持ちもわかりますが、嘘をついたり騙したりして他人を陥れてはいけませんよね。反省して謝罪したリカコさんのように、義母も自分の罪を認めて、しっかりと反省し、残りの人生を誠実に生きていってほしいものです。誰も傷つけないために、トラブルを引き起こさないために、誰かのプライベートな話を聞いてしまったら、誰にも言わず心にしまっておきたいですね。
【取材時期:2024年11月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。