仕事から帰ってきた夫に「お弁当どうだった?いつもより彩りにもこだわってみたの!」と言うと、夫は「はぁ?なんだよ、その確認は」とつっけんどんな態度。
「お前は旦那様においしい弁当を作るのが仕事」「できて当然の質問なんてしてんじゃねーよ!」と夫に言われて、私はぽかん。
「どうかしたの……?何かあった?」とおそるおそる聞いてみると、夫は「今までの俺が間違ってたんだ」「専業主婦なんて寄生虫みたいなもんなんだから、毎日毎日『ありがとう』だの『がんばってるね』だの、甘やかしすぎたな」と言い出して……?
亭主関白な上司の悪影響
どうやら、夫は先月来たばかりの上司に影響を受けているようでした。その上司は45歳で営業統括部長に就き、年収3,000万円オーバー。毎日高級外車を乗り回し、豪邸に住んでいるのだそう。
「尊敬する部長に教わったんだけど、男は妻に頭下げちゃダメなんだってよ」「部長の奥さんは朝5時に起きて送り出してくれるんだぞ」「部長の家庭を見習えば、俺だってもっと昇進するはず、勝ち組になれるはずなんだ!」
会社は会社、家は家。家での横柄な態度が会社での昇進につながるとは到底思えませんでした。そもそも、専業主婦の私を見下すような夫の態度は本当に不快でした。
しかし、私がやめるように言っても、夫は「俺の昇進がかかってるんだぞ!旦那様に非協力的なんて、なんてダメな嫁なんだ!」「部長に教わったとおり、これからはもっと厳しく躾けてやるからな!」と聞き入れてくれなかったのです。
幼稚園の先生が気付いた息子の変化
3カ月後――。
部長の悪影響を受け、夫の言動はますます悪化。5歳の息子の前でも「こんなの食えるか!手抜きしやがって」「女は黙って言うこと聞け!」と言うようになったのです。
私が反抗すると、「部長は奥さんが口答えしたら離婚届を突きつけて謝らせるんだってよ」「俺も明日離婚届もらってくるわ!記入しておけよ!」と言う始末。
そして、夫の影響は息子にも及んでいたのです。
猿真似夫の末路と上司の嘘
1カ月後――。
仕事から帰宅途中の夫からメッセージが届きました。
「今日の弁当なんなんだよ!海苔がベチャついてて、会社で恥かいたじゃねーか!」「部長にお前の作った弁当見せたら、『こんな不出来な嫁さんをもらってお前も苦労するな』って笑ってたよ」
今朝は息子が熱を出したので、いつもより短い時間でお弁当を作ったのです。夫も息子の発熱を知っていたはずなのに、お弁当の海苔だけでこの言われよう……。私の堪忍袋の緒が切れる音がしました。
「もう我慢の限界……いい加減にしてよ!」「息子が幼稚園で女の子に『寄生虫!』『女は黙って従え!』って言うようになったの!私の息子が歪んだ子になるのなんて見たくない!」
夫は「えっ」と一瞬怯んだものの、すぐさま「息子が歪むのはお前の育て方が悪いからだ!」「お前が至らないから、俺が厳しくしてやってんだよ!」と言い返してきました。
「もっと努力しろよ!出来損ないが!」
「俺に逆らうなら離婚だぞ!わかったか!」
「もう離婚してるけど?」
「え?」
以前、部長の真似をして本当に離婚届を持ってきて「サインしろ、お前が逆らったらすぐに出す」と言ってきた夫。私はそれを「逆らう覚悟があるなら離婚届を出していい」と解釈しました。
「だから出してやったの」「もうあなたにおとなしく従う妻はいません」「これからは好き放題に逆らうので、その覚悟として先週のうちに離婚届を出しました」と言うと、夫は「えええええ!?」と驚いていました。
「お、俺はただちょっと威圧しただけで……落ち着いて考えようよ……」「こんなので離婚なんて大袈裟だよ、部長はこういう形でもうまくいってるんだ。だからお前が我慢すれば俺たちだって……」と言う夫。
「人の尊厳を踏みにじるような態度のあなたとは一緒に暮らせません」「あなたの暴言で傷つくのも、息子の心が歪んでいくのを見るのも、もう嫌なの」「そんなに部長が好きなら、部長と結婚したら?一度、寄生虫扱いされてみなさいよ!」と徹底的に反抗した私。
「それに、お前も息子も俺なしで生きていけるわけないだろ?路頭に迷うだけだぞ?」「専業主婦なんて離婚したら、ただの無職なんだからな!」と、また私を威圧しようとしてきた夫。
しかし、私はすでに動いていたのです。「仕事は紹介してもらえそうだし、その間の生活費には慰謝料をあてるつもり」「あなたの暴言や罵倒はすべて録音してあるし、園での息子の変化についても証言は取れてる」「慰謝料も養育費もしっかり払ってもらいますからね」と言うと、「そ、そんな……」と夫。
その後――。
元夫の暴言の録音が決め手となり、私はかなりの慰謝料と養育費をもらうことができました。元夫からは「やり直したい」としつこく連絡が来たので、私は元夫が尊敬する部長の真実を教えてあげることに。
実は、息子の担任の先生はその部長の元奥様。先生はとんでもない亭主関白に耐えかねて、離婚したそうです。部長は部下である元夫の前で、見栄を張り、嘘をついていただけなのです。
「『僕も妻を寄生虫呼ばわりして離婚されました』『同じ独り身としてどうしたらいいか教えてください』って聞いてみたら?」と言うと、元夫はひどくショックを受けているようでした。
私は息子を連れ、実家へ帰りました。時間は少しかかりましたが、暴言もだいぶ落ち着き、元のやさしい息子に戻ってくれたので一安心しています。声をかけてくれた部長の元奥様には感謝の気持ちでいっぱいです。
【取材時期:2024年11月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。