「ここまでずっと我慢してきたけど、俺はもう限界なんだ!」と言い出した夫。夫曰く、私の実家が会社を経営しているせいで、なんとなく引け目を感じていたらしいのです。
だからと言って、この出産直前のタイミングで言い出さなくても……と思った私。挙句には、夫は「俺は父親にはなれない!」「お前とは離婚する!」と理不尽なことを言い出したのです。
出産直前に消えた夫
「俺をもっと認めてくれて、俺が一番だって言ってくれる人と出会った」「本当は子どもが生まれるまでに覚悟を決めるつもりだったんだ……なのに、こんなに早く生まれるなんて聞いてない!」と夫。
最近夫が思い悩んでいるのは感じていましたが、まさかその背景に別の相手の存在があるなんて思いもしませんでした……。私が混乱していると、そのまま夫は電話を切ってしまいました。それから私が何度かけ直しても、夫は出てくれませんでした。
結局、夫は産院には来てくれませんでした。私はわけがわからず、パニック状態で出産。幸いにも、子どもは無事に生まれてきてくれました。
幼子を抱えて帰宅すると、夫の荷物は跡形もなく消えていました。そして、リビングのテーブルの上には記入済みの離婚届と夫の結婚指輪。その横にはメモがあり……私の幼なじみとやり直すといった内容が書かれていたのです……。
幼なじみからのマウンティング
平穏な日々が続いていた、そんなある日──私の夫を奪ったあの幼なじみから、突然連絡が来たのです。
シングルマザーで大変なこともありますが、わが子の成長に目を細める毎日。こんな幸せな日々が、ずっと続くと思っていたのです。
「久しぶりの幼なじみからの連絡にびっくりしちゃった~?」と幼なじみ。「彼と入籍して3年経つから、そろそろ子どもを考えてるんだよね!」「先輩ママとして、いろいろ教えてほしくて連絡したの!」と、無邪気そうに話してきました。
「彼、大手商社のエリートだから私も専業主婦やれてるってわけ」「どう?あんたはそろそろ経営者のお父様に泣きついた?」とあからさまに私を小馬鹿にしてくる幼なじみ。
私は呆れながらも、「父には頼ってないわ」「もともと働いていたし、職場の理解もあるから子育てしながらワーママしてるわよ」と答えました。
すると、幼なじみは「ラクな暮らしもできず、意地張っちゃってお父様に頭も下げられないなんて、本当惨めっていうか……。私とは雲泥の差ね!」と笑ったのです。
「3年前、エリート旦那を奪っちゃってごめんね♡」
「あんたは貧乏暇なし状態かしら?w 私は豪邸でラクさせてもらってまーす♡」
「もしかして知らないの?」
「は?」
勝ち誇っていた幼なじみの転落
「この間、母から聞いたんだけど、彼、私の実家に来たのよ」と話すと、「え?なんで?」とまったく心当たりがない様子の幼なじみ。
実は、元夫は私の父に頭を下げに来たのです。私との離婚のことではなく、「どうか雇ってください」と。藁にもすがる思いだったのでしょう。一流企業で働くエリートだったはずの元夫。しかし、大きなミスをしてリストラ対象となり、私の父の会社に仕事を求めて現れたのだそうです。その場に居合わせた母から聞きました。
どうやら、今月末で会社を辞めなければならないとのことでした。
豪華なタワマンの一室も買ったばかりとのことでしたが、来月からローンも払えなくなるそうです。「妻にも働きに出てほしいと言おうと思っていたけど、『専業主婦最高』『二度と働きたくない』って毎日聞かされて……言えなくて……」と、夫は私の父に泣きついたと言うのです。
「なにそれ……嘘よ……」としばらく呆然としていた幼なじみでしたが、我に返ったように「それで!?もちろん雇ったのよね!?」と聞いてきました。
もちろん、父だって元夫のことを許してはいませんから、雇うはずがありません。それに、今は採用期間でもないし、中途採用だってこの間決まったばかりなのです。
「なんでよ!彼、とっても優秀なのよ!?」「雇ってくれなきゃ、子どものこと考えられないじゃない!」と喚く幼なじみ。
「それよりも、分割にした慰謝料と養育費の支払い、しばらく滞ってるんだけど?」と言うと、「それならお父様のところで雇ってよ!じゃないと、その支払いすらできないのよ!?あんただって困るでしょ!?」と言ってきました。それとこれとは話が別です。
「別のところで就職して稼げばいいだけの話じゃない」「うちの父に頼まなくたっていいでしょう」と言っても、幼なじみは「今すぐ就職しないといけないじゃない!」「だって来月のローンの支払い、迫ってるのよ!?」と聞いてくれません。
「……でも、それって私には関係ないよね?」と私。「そんなひどいこと言わないでよ……!」「私の幸せが崩れていく……」と幼なじみは涙声になっていました。
「私から全部奪っておいて、今さら助けてなんて……都合が良すぎるよ」「金輪際あなたたちと関わるつもりはないから、話がしたいなら弁護士さんを通してね」「あと、早めに滞納してる慰謝料と養育費を支払ってちょうだい!」
ここまで言ってもなお、幼なじみは「お願い、お願いよ、幼なじみとしての一生のお願い!」とすがってきました。
「私たちのことを許してくれなんて言わないから!土下座でもなんでもするから!」「だからせめてお父様に彼を雇うようにお願いして!それと、慰謝料と養育費の支払いは待って!」
「残念ね、あなたの一生のお願いは小学生のとき……掃除当番を代わってあげたときに使ったじゃない」と言って、私はやり取りを終えました。
その後――。
元夫と幼なじみは、それぞれのご両親にお金を借りて、私に残りの慰謝料と養育費を一括で支払ってくれました。マンションは手放し、今は2人でコツコツと働いているようです。
こんな騒動があったにもかかわらず、わが子はすくすくと成長しています。父親がいない分、これからも私が2倍の愛情をかけて育てていきたいと思っています。
【取材時期:2025年3月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。