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女性の20人~30人に1人が多嚢胞性卵巣症候群!予防はできるの?

この記事では多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)について、医師監修のもと解説します。多嚢胞性卵巣症候群は、排卵をしにくい状態です。妊娠のタイミングを測るのも難しいので、妊娠には影響があります。

この記事の監修者
監修者プロファイル

医師天神尚子 先生
産婦人科 | 三鷹レディースクリニック院長

日本医科大学産婦人科入局後、派遣病院を経て、米国ローレンスリバモア国立研究所留学。その後、日本医科大学付属病院講師となり、平成7年5月から三楽病院勤務。日本医科大学付属病院客員講師、三楽病院産婦人科科長を務めた後、退職。2004年2月2日より、三鷹レディースクリニックを開業。
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妊娠を希望しているけれど、生理不順で妊娠のタイミングをはかるのが難しいと感じている人は、もしかすると多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)かもしれません。あまり聞きなれない疾患かもしれませんが、妊娠をすることと深い関わりがある疾患です。今回は、多嚢胞性卵巣症候群による妊娠への影響や治療法などについて解説します。

 

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは?

多嚢胞性卵巣症候群は、20~30人に1人(※1)の女性にみられ、排卵障害を起こす疾患です。排卵が起こらないのは、排卵に関連のある2つの女性ホルモンのアンバランスや卵巣内の男性ホルモンが多いことが原因とされています。

 

通常、排卵には脳から出される黄体化ホルモンと卵巣刺激ホルモンという2つのホルモンが関わっています。しかし、PCOSでは、この2つのホルモンのバランスが崩れて、黄体化ホルモンばかりが過剰に分泌されるため、排卵がうまく行われません。また、血糖値を下げる作用のあるインスリンもPCOSに関連しており、血液の中にインスリンが多く含まれている状態ですと男性ホルモンが増加します。男性ホルモンは、卵胞の成長を妨げたり、卵巣の外の膜を厚くして、排卵をしにくい状態にします。体毛が濃い、ニキビがよくできるといった症状が特徴です。その他に、順調だった生理が不順になった場合や生理周期が35日以上と長い人、肥満などの症状がある人は多嚢胞性卵巣症候群を疑います。

 

症状は1つだけの人や、いくつかを発症している人もいます。多嚢胞性卵巣症候群の確定診断をするときには、月経異常(無月経・希発月経・無排卵月経など)の症状に加えて、血液検査と卵巣の超音波検査が必要です。超音波で卵巣を見ると、多数の小卵胞が見られたり、卵胞の外側に10mm程度の卵胞がぐるりと一周並んでネックレスのようになっています。卵子が十分に成長できないので、排卵されずに卵巣の中で連なっているのです。

 

血液検査では、血液中の男性ホルモンが基準値よりも高いまたは、黄体化ホルモンの値が卵胞刺激ホルモンよりも高いことで診断することができます。  

 


※1 参考:島根大学医学部附属病院 産科婦人科「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS:polycystic ovarian syndrome)

 

多嚢胞性卵巣症候群の妊娠への影響は?

多嚢胞性卵巣症候群は、排卵をしにくい状態です。妊娠のタイミングを測るのも難しいので、妊娠には影響があります。20代では、排卵障害もそれほど進んでいないので、自然妊娠も可能ですが、年齢を重ねるごとに生理周期が延長していき、排卵障害が進むので自然妊娠は難しくなります。症状に気づいて早めに治療を受けることができれば、妊娠の可能性は高くなります。

 

多嚢胞性卵巣症候群の治療

PCOSでは、排卵に問題があることが多いため、排卵を誘発させていく治療をしていきます。その他には、体外受精が行われます。

 

(1)排卵誘発剤を使う
クロミフェンという排卵誘発剤を内服することで、約60%に排卵の効果が現れます。排卵誘発剤の内服による効果がない場合は、注射によるゴナドトロピン療法という排卵誘発剤を使います。

 

卵巣には成長できずにいる卵胞がたくさん待機しているので、排卵誘発剤の注射によってたくさんの卵胞が1度に成長することがあります。そのため、1度に複数の卵子が排卵される可能性があり、多児妊娠のリスクが高くなります。また、たくさんの卵胞が大きくなると、卵巣が大きく腫れてお腹に水が溜まる卵巣過剰刺激症候群を引き起こしてしまう恐れがあります。そのため、内服や注射による治療で排卵がうまくいかないときには、手術や体外受精をすすめられることがあります。

 

(2)卵巣に小さな穴をいくつか開ける手術をする(腹腔鏡下卵巣多孔術:ふくくうきょうからんそうたこうじゅつ)
卵巣に穴を開けることで、自然な排卵を促すことになり、排卵誘発剤の効果も得られやすくなります。術後の自然排卵は70~80と報告されています。手術となると恐怖感がありますが、腹腔鏡を使った手術なので、傷は小さいです。さらに排卵誘発剤のデメリットである卵巣過剰刺激症候群や多児妊娠のリスクもありません。ただし効果は、半年~1年程度で、手術前の状態に戻ってしまうデメリットがあります。

 

(3)糖尿病の薬を使う
インスリン分泌に異常がある人には、糖尿病の治療薬のメトフォルミン(メルビン、グリコラン)の併用によって排卵しにくい状態を改善することが期待できると言われており、排卵率75%前後の報告があります。インスリンの分泌量を抑えることで、卵巣内の男性ホルモンの分泌も減少し、排卵しやすくなるのです。

 

(4)体外受精・胚移殖を行う
排卵誘発剤や手術の効果があまりない場合には、医師から体外受精の話があるかもしれません。体外受精であれば、卵胞の成長コントロールも排卵誘発剤を使う際のリスクも少なく行えます。

 

多嚢胞性卵巣症候群は予防できる?

多嚢胞性卵巣症候群は初潮からずっと生理不順である人が多く、体質や環境などが原因であると指摘されていますが、はっきりとした原因は不明です。一般的な遺伝性のある疾患とも異なるため、予防策はありません。しかし、肥満である場合は、減量することにより月経不順の改善が認められているので、適度な運動やバランスの良い食事などに気をつけていくと良いでしょう。

 

まとめ

生理不順など多嚢胞性卵巣症候群の症状が当てはまるのであれば、早めに産婦人科で検査をしてもらいましょう。妊娠を希望しているなら治療はもちろんですが、治療せずに長期間放置すると、高エストロゲン状態が続き、子宮内膜増殖や子宮内膜ガンといった子宮内膜に異常が起こることがあります。生理不順を軽く見ずに、しっかりと治療しましょう。

 

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