企画を奪われたあの日
なかなか大きな実績につながらず苦戦していたある日。提出した企画が上司に評価され、社内プレゼンに進むことが決まりました。初めてのチャンスに、やる気と緊張が入り混じったのを覚えています。ところが、プレゼン当日、上司のスケジュールミスで僕は会議に出席できなくなり、代わりに上司が僕の企画を発表することに。
その後、戻ってきた上司からは「この企画、俺がリーダーとして進めることになったから。お前はサポートな」と言われました。
一瞬、何を言われているのかわかりませんでした。プレゼンの場で企画の出所は明かされず、周囲は上司の企画だと思い込み、当然のように「さすがです」と上司に称賛を送っていて……。上司も、さも自分の企画であるかのように振る舞っていました。本当は僕の企画なのに……。
そのとき僕は、「自分には何も期待されていなかったのかも」と思ってしまいました。そして、ならばここで区切りをつけるしかない。そう思い、僕は「サポートはできません。すみません。退職します」と会社を辞めることを告げたのです。
意外な理解者が現る…?
退職を申し出た直後、営業部の女性が思わぬ言葉を発しました。「じゃあ、私も辞めます」と。
彼女は営業成績トップの実力者。まさかそんな言葉が返ってくるとは思っていなかった僕は、驚いて言葉を失いました。
すると彼女は続けました。「あの企画、あなたが作ったってことは最初からわかってたよ。上司のものじゃないって、資料を見てたら一目瞭然だったし」。
僕の努力を、彼女は見ていてくれた。そんな事実に、心が震えるような思いがしました。そして僕たちは同時に退職手続きをし、会社を去ることとなったのです。
新天地での挑戦で、再会してしまったのは
転職後、僕たちは同じ会社で働くことになりました。僕は商品開発、彼女は営業と、お互いにこれまでと同じ職種で。会社は人数こそ少ないものの、アットホームな雰囲気で、以前よりもずっとのびのびと仕事ができる環境でした。
そんなある日、新たな取引先候補の企業から商談の依頼が入り、彼女と一緒に訪問することに。先方の担当者は、「最近、御社の評判を耳にしてぜひお会いしたくて」と言ってくれ、僕たちは開発中の製品や企画を丁寧にプレゼンしました。
すると、会議室の扉が開き、思わぬ人物が現れました。なんと、そこにいたのは以前の会社の上司だったのです。先方は複数社から話を聞いたうえで契約先を決めようとしており、僕たちの会社と、元上司がいる会社は競合関係にあったのです。
そして会議の最後、先方の担当者が選んだのは……僕たちの会社でした。その瞬間、心の中で何かが報われたような気がしました。自分たちが手がけた企画が、きちんと評価された。それが何よりうれしかったのです。
一度、企画を取られたくらいで転職なんて……と思う方もいるかもしれません。でも、仕事において「社員みんなと協力し合えること」「自分らしく働ける」というのは大切なことだなと、今実感しています。今の僕は、自分らしく働ける場所で、納得のいく仕事ができています。
そして実は、一緒に転職してきたあの彼女と交際を始めました。僕の唯一の理解者だった彼女は、最高の仕事仲間であり、人生のパートナーになりました。あの日の決断が、今の幸せな未来に繋がったと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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