【医師監修】胎児心拍が確認できない…。稽留流産(けいりゅうりゅうざん)とは?

この記事の監修者
監修者プロファイル

医師天神尚子 先生
産婦人科 | 三鷹レディースクリニック院長

日本医科大学産婦人科入局後、派遣病院を経て、米国ローレンスリバモア国立研究所留学。その後、日本医科大学付属病院講師となり、平成7年5月から三楽病院勤務。日本医科大学付属病院客員講師、三楽病院産婦人科科長を務めた後、退職。2004年2月2日より、三鷹レディースクリニックを開業。

稽留流産

 

妊娠が判明したものの、その後流産となる可能性は誰にでもあります。流産とは、妊娠22週より前に赤ちゃんが亡くなることを言いますが、今回は自然流産の1つ、稽留流産(けいりゅうりゅうざん)についてお話しします。

 

 

稽留流産とは?

稽留流産は、子宮内で赤ちゃんが亡くなって、妊娠が継続できない状態になっても、お母さんから性器出血や下腹部痛などの症状がなく、子宮内に赤ちゃんが留まっている状態のことを言います。

 

稽留流産は、妊娠12週未満に起こることが多く、妊婦さん本人に何も自覚症状がないこともあり、病院での超音波検査で赤ちゃんが亡くなっていることを指摘されることが多いです。また、基礎体温については、赤ちゃんが亡くなっていても黄体ホルモンが分泌されるため、基礎体温は高いままとなります。


稽留流産の診断は、超音波検査(エコー検査)によっておこないます。医師は一度の診察で稽留流産と診断せず、1~2週間の合間をおいてからもう一度診察をして、赤ちゃんの心拍の確認をします。

 

しかし、妊娠8週以降で赤ちゃんの心拍が停止していたり順調に育っていない場合は、1度の診察で稽留流産と診断されることもあります。

 

 

稽留流産と診断されたら

稽留流産と診断された場合は、入院して手術(子宮内容物除去術)をおこなう、あるいは自然待機(自然に子宮内容物が排出されるのを待つ)のいずれかを選択して治療します。

 

子宮内容物除去術をおこなう際は、入院期間は状況や病院によって異なりますが、半日から1泊程度です。麻酔をおこない、胎児や脱落膜など子宮内容物を器械で排出させます。場合によっては、手術の前に子宮頸管を広げる処置をおこなうこともあります。

 

自然待機を選択した場合、急激に下腹部痛が起きて緊急入院になったり、出血が多く輸血が必要なほどの緊急事態になったりすることがあります。そのため、妊婦さんの身体への負担を考えて、計画的に入院し、手術をおこなうことが多いです。

 

 

次の妊娠への影響は?

稽留流産後の妊娠については、女性の心身の回復を待ってからが望ましいでしょう。月経が再開すれば、妊娠できる状態に体が回復しているサインですので、月経が1~2回来た後に妊娠することができます。産婦人科医からも、1~3カ月は避妊するように伝えられるでしょう。また、流産から次回の妊娠までの期間と次回妊娠が成功する確率は関連していません。


原因の有無に関係なく、流産が2回連続で起きたら反復流産、3回以上続く場合は習慣流産と言います。妊娠はできても、流産や死産を繰り返すという場合は、カップルで専門的な治療が必要なこともありますので、流産が続く場合は医師に相談しましょう。

 

 

まとめ

稽留流産は、妊娠12週未満に起こることが多く、妊婦さんの自覚症状のない自然流産の1つです。稽留流産と診断された場合は、入院して手術(子宮内容物除去術)をおこなう、あるいは自然待機(自然に子宮内容物が排出されるのを待つ)のいずれかを選択して治療します。稽留流産後の妊娠については、女性の心身の回復を待ってからが望ましいですが、女性だけでなく、パートナーも傷ついていることもありますので、パートナーと次の妊娠のタイミングについて十分に話し合いましょう。

 

参考:

産婦人科診療ガイドライン産科編2017

日本産婦人科学会HP 病気を知ろう>流産・切迫流産

 

 

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