【助産師監修】戌の日とは? 安産祈願はいつ行く? 服装や費用、腹帯について
おなかに授かった赤ちゃんの健やかな成長と無事の出産を願い、戌の日に「安産祈願」をおこなうケースも珍しくありません。今回は、初めて赤ちゃんを授かったママやパパのために、安産祈願にまつわるさまざまなお役立ち情報を紹介します。
【目次】
「戌の日」に安産祈願をする理由
日本では、古来よりその年を示す動物として「十二支」が親しまれています。実はこの十二支は、「年」だけでなく「日」にも割り振られているのです。12種類の動物が1日1日に割り振られており、「戌(いぬ)の日」はそのうちの11番目の日ということになります。戌の日の次は亥の日、その次は子の日なので、再び戌の日がやってくるのは12日後です。
戌の日は、妊娠・出産に縁起の良い日として古くからお祝いの儀式がおこなわれてきました。なぜ戌なのかというと、犬は一度に出産する子どもの数が多く、しかもお産が軽い場合が多いからです。このため、子だくさんかつ安産の象徴として親しまれるようになりました。戌の日はそんな犬にあやかり、赤ちゃんが無事に生まれてきてくれるよう祈願する日として広まったのです。
戌の日は12日に1度やってくるので、本来はどのタイミングで安産祈願をしても構いません。しかし、実際には妊娠5カ月を迎えた最初の戌の日に安産祈願をおこなうケースが一般的です。妊娠5カ月目になると安定期に入り、赤ちゃんが流産してしまうなどの危険が低下します。この時期に、神社などに出向いて安産祈願をしてもらいます。神社によっては安産祈願に対応していないところもあるので、事前に問い合わせておくと良いでしょう。
また、妊娠5カ月目というのも1つの目安にすぎません。妊娠中の女性の体は非常にデリケートで、安定期とはいえ切迫流産になったり、つわりが完全に治まらなかったりするママも珍しくないのです。安定期だからと油断して動き回ると、赤ちゃんやママに負担がかかって大変な事態になるおそれもあります。
戌の日を重視するのではなく、あくまでも赤ちゃんとママの状態を最優先に考えて安産祈願の予定を立てることが大切です。安産祈願は、妊娠5カ月目の戌の日でないとおこなえないと決まっているわけではありません。万が一、当日に体調が悪くなった場合は日を改めるようにしましょう
2021年の戌の日カレンダー
戌の日は、毎年決まった日になるわけではありません。十二支が順番に割り振られていくため、年によって少しずつ日にちがずれていくのです。安定期を迎える年が翌年になる場合、うっかりしていると妊娠5カ月目の戌の日を逃してしまうので注意しましょう。また、月によっても日にちや曜日がバラバラなので、毎月戌の日がいつなのか確認しておくことが大切です。下記に2021年の戌の日カレンダーを記載するので、参考にしてみましょう。
※★印つきは、大安の日を表しています
■1月
2日★(土)、14日(木)、26日(火)
■2月
7日(日)、19日(金)
■3月
3日(水)、15日(月)、27日(土)
■4月
8日(木)、20日★(火)
■5月
2日★(日)、14日(金)、26日(水)
■6月
7日(月)、19日(土)
■7月
1日(木)、13日(火)、25日(日)
■8月
6日(金)、18日★(水)、30日★(月)
■9月
11日(土)、23日(木・祝)
■10月
5日(火)、17日(日)、29日(金)
■11月
10日(水)、22日(月)
■12月
4日★(土)、16日★(木)、28日★(火)
安産祈願の儀式の1つ「帯祝い」とは?
安産祈願では、お祓いや祈祷のほかに「帯祝い」という儀式をおこなうことも多いです。帯祝いとは、おなかの赤ちゃんの成長や安産などを祈り、妊娠5カ月目の戌の日に「岩田帯」という腹帯をおなかに巻く儀式を指します。帯祝いの歴史は非常に古く、日本最古の書物の1つである古事記にも妊婦さんに帯を巻く記述が登場するほどです。
帯を巻く儀式を「着帯(ちゃくたい)」と呼び、産婦人科や安産祈願をおこなう神社で着帯の儀式をしてくれるケースもあります。古くは帯を妊婦さんの実家側が用意して贈るのが一般的でしたが、現代では慣習にこだわらず、ママが自分で使いたい帯を持参したり、神社から贈られる帯を使用したりするケースも珍しくありません。
安産祈願する際、腹帯は持参しなくても構いません。腹帯の扱いは神社やお寺によって異なり、持参したりおなかに巻いて行ったり、神社やお寺で購入したりとさまざまなスタイルがあります。たとえば、安産の守り神として全国的に有名な水天宮では、腹帯について特別な指定はしていません。持参したい場合は、別途相談してみましょう。また、祈祷済のさらしの腹帯や、腹帯をかたどった小さな布などが販売されており、現地で買うこともできます。富山市中心部で多くの市民に親しまれる日枝神社では、新品の腹帯を持参すればお祓いをしてもらえます。すでに使用中の腹帯は着用したままお祓いも可能です。
一般的には、神社などで祈祷したあとに、ママやパパをはじめ親族などが集まって祝宴を開くことが多いです。祝宴の場所や場所には、特に決まりはありません。料亭やレストランで本格的におこなうケースもあれば、自宅で出前を取るなどしておこなうケースもあります。赤ちゃんとママの体調を第一に考え、体に負担がかからない範囲でお祝いをするようにしましょう。
帯祝いの「腹帯」とはどういうもの?
帯祝いのときに使用される岩田帯はママのおなかに巻きつける“さらし”のことを言い、「ゆはだおび(結肌帯・斎肌帯)」から転じたと言われています。
腹帯は、おなかが大きくなる妊娠5カ月目ごろから着用するのが一般的ですが、おなかの大きさには個人差もあるため、妊娠5カ月目を目安として腹帯を買うとよいでしょう。腹帯は、赤ちゃん用品を販売する店舗やインターネット通販サイトなどで手軽に購入することができます。メーカーや種類によって着用感がかなり異なるので、実際に試着して買ったほうが安心です。
腹帯とは、赤ちゃんの成長と安産を祈って巻くものですが、使用目的はそれだけではありません。妊娠5カ月ごろを過ぎると、赤ちゃんの成長にともなってママのおなかはかなり大きくなってきます。サイズだけでなく重みも増すため、子宮を支える腰に大きな負担がかかって腰痛になることも多いです。そんなときに腹帯を巻くと、下腹部を支え、腰への負担を軽くすることができます。また、おなかの保温というのも服帯の使用目的の1つと言われています。腰痛軽減や保温だけでなく、衝撃や刺激などからおなかを守ることもできるので、赤ちゃんとママにとって役立つアイテムだと言えます。
そして、無事に出産したあとの腹帯は、肌触りも良いので、赤ちゃんの肌着などに仕立て直す人も多いです。次の妊娠を考えていたり、思い出として残したかったりする場合は、大切に保管しておきましょう。使う予定がない場合は、安産祈願をしてもらった神社やお寺に持参すれば、お焚き上げをしてくれます。
腹帯と妊婦帯の違いについて
大きくなったおなかを保護する帯は、詳しく見ると「腹帯」と「妊婦帯」に分けられます。腹帯は、昔ながらのさらしタイプの帯を指し、伝統やしきたりなどを重視したい場合に使用されることが多いです。また、出産後に赤ちゃんの肌着などに仕立て直すこともできるため、思い出として大切に使っていきたい人などにも人気があります。ただ、長いさらしを巻き付けていくため、うまく装着できなかったり着脱に手間がかかったりと、使い勝手が悪くなりがちです。この難点を解決するため、腹帯の機能性をさらに高めて使い勝手を良くした「妊婦帯」が開発されました。
妊婦帯には、特徴が異なるさまざまな種類の帯があります。
腹巻タイプ
腹巻タイプは、伸縮性のある素材ですっぽりとおなか全体をおおうため、保温効果に優れています。あまり締め付けないため、リラックスしたいときにも最適です。帯の圧迫感が苦手な人や、初めて妊婦帯を使う人などは腹巻タイプから始めてみるとよいでしょう。
パンツタイプ
パンツタイプは、その名の通りパンツと一体化した帯です。腹巻タイプよりもサポート力が高く、しっかりとおなかを支えることができます。足を通して穿くためズレにくく、素材も比較的薄手で服を着てもあまりラインが浮き出ません。パンツスタイルが多い人や、出産直前まで働く人などはパンツタイプが安心です。
サポートベルトタイプ
サポートベルトタイプは、ベルト型をしており、締め付け具合を自分で細かく調節できます。立ったまま着脱でき、サポート力もしっかりしているので使い勝手が非常によいです。
骨盤ベルトタイプ
骨盤ベルトタイプは、妊娠中だけでなく産後まで使える帯です。おなかを支えるのはもちろん、産前・産後に緩みがちになる骨盤をガッチリとサポートすることができます。骨盤の緩みや歪みを抑えると、妊娠中の腰痛や恥骨痛を軽減できるだけでなく、産後の骨盤の開きを早く戻せるようになります。腰痛や骨盤の緩みが気になる場合は、骨盤ベルトタイプを選ぶと良いでしょう。
腹帯や妊婦帯と言っても、このように種類によって少しずつ機能が異なります。どの種類を選べばよいかは、着脱のしやすさやサポート力、腰痛軽減やズレにくさなど、それぞれが持つ特徴を正しく見極めて自分に一番合う種類を選ぶことが大切です。赤ちゃん用品を取り扱う店舗などでは、スタッフに相談すると実際に試着しながらおすすめの種類を選んでくれることもあります。自分だけで選べない場合は、プロのアドバイスも聞いてみるとよいでしょう。
安産祈願の場所・服装はどうすればいい?
安産祈願をおこなう場合、一般的には神社やお寺などに出向いて祈祷してもらいます。基本的には自由に神社やお寺などを選ぶことができますが、神社やお寺によっては安産祈願をおこなっていないケースもあるので注意しなければなりません。
日本各地に安産祈願で有名な神社やお寺がありますが、祈祷の内容や費用などがそれぞれで異なります。神社やお寺によって、お守りやお神酒(みき)、腹帯としても使えるさらしなどお祝いの品をもらえることもあるので、事前に内容をよく確認して選ぶとよいでしょう。
また、なかには毎日祈祷をおこなっており、事前予約なしでも安産祈願を受け付けてくれるところもあります。体調に不安がある場合や予定がなかなかハッキリしない場合は、当日でも安産祈願ができる神社やお寺などを選ぶと安心です。
そして、誰と安産祈願に行くかという点も、特に決まりはありません。古くはママとパパ、お姑さんの3人が行くのが慣例のようでしたが、現代ではママがひとりで行くケースもあれば、夫婦だけでなく両家の両親が揃って行くケースもあります。なかには友人と一緒に行くケースもあります。ただし、地域によってはその土地ならではの風習で誰が行くか決まっているケースもあるので、事前に確認しておくとよいでしょう。
安産祈願をおこなう神社やお寺は、神様や仏様がおられる厳かな場所です。このため、格式によっては服装のマナーなどにも注意が必要なことがあります。普段着で問題ないとしている神社やお寺なども多いですが、あまりカジュアルな服装は避け、ワンピースやスーツなど神さまに失礼にあたらないような服装にするのがマナーです。
祈祷は、神社やお寺のなかでも最も神聖な場所である本殿でおこなうことが多いため、素足や露出の多いスカート、短パンなどでは断られてしまう可能性もあります。あくまでも、神様や仏様にお願いをする場所だということを忘れず、きちんとした服装を心がけるようにしましょう。
【ポイント】
・基本的には自由に神社やお寺などを選んでもよい
・安産祈願に行くのは誰でもよい(※但し地域によっては決められているので確認する)
・カジュアルな服装は避ける、できればママはワンピース、パパや他のご家族はスーツなど神様や仏様に失礼に当たらない格好
ママが安産祈願に行けない場合は?
ママの体調やおなかの中の赤ちゃんの状態によっては、安産祈願に行きたくても行けない場合もあります。もちろん、ママが直接行くのが最善ではあるのですが、何よりも大切なのはおなかの赤ちゃんとママの体調です。体調が安定しない場合は無理をせず、安産祈願は諦めて安静につとめるようにしましょう。安産祈願に行けなくても、妊娠中、わが子の安産を願う気持ちを持ち続けていれば十分なので、たとえ行けなかったとしても気にする必要はありません。
体調が悪いものの、どうしても安産祈願に行きたい場合は、代理人に行ってもらうという方法もあります。パパや両親、兄弟姉妹など、家族の代理であれば祈祷を受け付けてくれるところも多いです。また、安産のお守りや祈祷済みの腹帯などを郵送で送ってくれる神社もあるので、代理人も行けないという場合は探してみるとよいでしょう。
【ポイント】
・安産祈願は必ず行かなければならないわけではない
・どうしても安産祈願をしたい場合は代理人(パパや他のご家族)に行ってもらう方法もある ※ご家族の代理であれば祈祷を行ってくれるところもある
・安産のお守りや祈祷済みの腹帯を送ってくれる神社もある
安産祈願するときの流れ(神社の場合)
ここでは、神社に着いてから祈祷をしてもらって帰るまでの流れについて解説します。
1.神社に到着~受付・待合まで
鳥居をくぐる前に一礼します。鳥居の向こうは神様がいる場所なので、きちんとごあいさつをしなければなりません。参道を歩くときは、神様の通り道である真ん中は避けて両端を歩くようにしましょう。
次に、手水で手と口を清めます。本殿の入り口付近に「手水舎(ちょうずしゃ)」という参拝者が身を浄めるために手水を使う建物があります。そこで手や口を洗い身を清め、俗界のけがれを落として身を清めてから神様の前に出ます。
【手水で清める手順】
1.まずは左手、次に右手を洗います。
↓
2.左の手のひらに水を受けて口をすすぎます。
↓
3.再び左手を洗います。
↓
4.最後に柄杓の柄を両手で持ち、水をすくう側を立てるように上げて、持っている柄の部分に水が流れるようにして柄を洗い流します。
以上でお清めは終了です。
※手水で手や口を清めるとき、ひしゃくを直接口につけるのは厳禁です。ひしゃくはほかの人も使うため、直接口を付けないように気をつけましょう。
祈祷所に着いたら、社務所などで安産祈願を申し込みましょう。このとき、祈祷に必要な初穂料を支払うことが多いです。手続きが済んだら、待合室などで自分たちの名前が呼ばれるまで静かに待ちます。神様がいる場所であることを忘れず、雑談など会話をしたり動き回ったりするのは控えましょう。
その後、順番が来たら本殿で祈祷がおこなわれます。混雑する日などは、複数の家族が同時に祈祷することもあります。
2.祈祷
祈祷の際は、軽く頭を下げながら神主さんの祝詞を聞くのがマナーです。祈祷の最中は神主さんまたは巫女さんより指示がある場合もありますのでその指示に従うのがよいでしょう。
場合によっては、ここで「二拝・二拍手・一拝」がおこなわれることもあります。二拝・二拍手・一拝とは、神様への敬意を示す行動のことです。まず2回深く頭を下げ、次に胸の高さで手のひらを合わせて2回手を打ち合わせます。これにより、神様を招いて自分の願いを伝えます。最後にもう一度頭を下げて神様に感謝を伝え、お見送りをします。
神社によっては独自の参拝方法をとっている場合もありますが、これが基本的な祈祷の流れとなります。※祈祷をしている最中は、記念のイベントだからと、写真や動画を撮影したり、スマートフォンをいじったりするのはやめ、きちんとに神様にお祈りましょう。
祈祷が終わると、安産のお守りや腹帯などお祝いの品を受け取ります。(※安産祈願の申込が済んだ時点で渡される神社もあります)。
3.祈祷後~帰るまで
すべての手続きが済んだら、来たときと同じように参道の端を歩いて帰りましょう。
初穂料や御祈祷料(お布施)の目安は?
神社で安産祈願を行う場合は「初穂料」、お寺で安産祈願をおこなう場合は「御祈祷料」または「お布施」が必要になります。初穂料や御祈祷料とは、神主さんや住職さんに祈祷をおこなってもらうための費用のことで、本来は神様や仏様へのお供えという意味合いが強いです。
初穂料や御祈祷料は、あくまでも神様・仏様への感謝の気持ちをお供えするものです。このため、金額は全国一律で決まっているわけではありません。それぞれの施設が独自に金額を設定しており、2,000円~1万円の範囲で支払うケースが多いです。なかには「5,000円以上お志」など、参拝者に任せているところも少なくありません。ホームページなどで費用を明確に記載していないところも多いので、いくら準備すればよいのか悩んでしまう人も多いです。金額に悩んだときは、施設に直接問い合わせてみるのもよいと思います。
実際に初穂料や御祈祷料を支払うタイミングについてですが、一般的には安産祈願の受付のときに現金を支払う場合が多く、事前振込やクレジットカードなどに対応している神社はあまりないので注意しましょう。初穂料や御祈祷料は新札をのし袋に入れて準備しておくのがマナーとしては望ましいですが、施設によってはのし袋を不要としているところもあります。支払い方についても気になる場合は、直接問い合わせてみてもよいと思います。
参拝の事前予約は必要?
安産祈願をする神社またはお寺を決めたら、まず祈祷に事前予約が必要か確認をしましょう。
大きな規模の神社やお寺、安産祈願で有名な神社やお寺の場合は毎日祈祷をおこなっているので事前予約なしでも安産祈願を受け付けてもらえたり、そもそも予約が必要ないというところもありますが、祈祷をする人が大勢いた場合や神主さんや住職さんが不在の場合は、せっかく参拝しても祈祷できない可能性がありますのでホームページや直接電話をするなど確認をしておくことが必要です。
安産祈願で参拝しようと思っている神社やお寺が予約なしの場合は、基本的には先着順で祈祷を申し込むので曜日や時間帯によってはかなり待たされる可能性もあります。有名な神社やお寺では、戌の日や休日になると1時間以上並ばなくてはならないこともあるので注意が必要です。
まとめ
安産祈願は、古くから伝わる儀式ですが、妊娠5カ月目の戌の日に必ずおこなわなければいけない決まりではないですし、腹帯についてもいろいろな種類のものがあったりと、こうでなければいけないというものでもありません。出産の無事を願う儀式をおこなうことはとても大事なことですが、一番大切なのはおなかの中の赤ちゃんとママの体調ですので、ママの体調と相談して安産祈願をおこなうかを判断するとよいでしょう。そして、安産祈願をする場合は、参拝する場所の事前の確認や服装、参拝時のマナーには気をつけるようにしましょう。