不妊治療中は医療保険に加入できないことが多い
不妊治療中の方が新たに民間の医療保険に加入しようとしても、時期や治療内容、タイミング次第では加入を断られます。不妊治療は病気ではありませんが、ホルモン剤の投与や各種検査・処置を伴うこともあり、健康状態に一定のリスクがあるとみなされます。そのため、保険会社によっては不妊治療中の申込みは引き受け不可と判断されます。実際、「不妊治療をしていると言ったら保険加入を断られた」という声はネット上でも珍しくありません。
また、実際の治療を始めていなくても油断はできません。「病院で不妊相談を始めた」「検査だけ受けた」という段階でも、保険の告知では申告が必要です。すでに妊活のため医師の診察を受けている場合は、近いうちに不妊治療に進む可能性が高いため、治療開始前の相談段階であってもリスク因子として扱われるでしょう。
さらに、運良く通常の医療保険に加入できたとしても、多くの場合で「特別条件付き契約」となります。具体的には、子宮や卵巣に関する病気、妊娠・出産に起因する病気は保険金・給付金の支払い対象外(部位不担保)になるケースが少なくありません。保険料も通常より割高に設定される傾向があります。このように、不妊治療中の加入は保険料が高く、しかも保障の対象外項目が多いため、非常にハードルが高いといえるでしょう。
不妊治療を申告しないと告知義務違反になる
不妊治療中であることを故意に申告せずに保険に入るのは絶対に避けましょう。治療内容が軽微な場合を除き、健康状態に関する事実を隠して加入することは告知義務違反に該当します。告知義務違反が発覚した場合、最悪契約解除となり、将来の保険金・給付金も一切受け取れなくなってしまいます。
実際に、不妊治療中であることを申告せず医療保険に加入してしまい、後になってから「もしかして告知漏れでは?」と不安になるケースも見られます。ある保険相談サイトでは、「加入時に不妊治療中だったが大きな病気ではないと思い告知しなかった。これは告知義務違反になるのでは?」という相談が寄せられていました。この相談者は加入から2年以上経って告知漏れに気づいたそうですが、専門家からは「今からでも正直に保険会社に申し出るべき」とのアドバイスがなされています。告知しなかった事実に気付いた時点で保険会社に申し出れば、場合によっては契約継続は認められるでしょう。しかし、そのまま黙っていて後から別件で請求した際に発覚すれば、契約無効や保険金不払いといった重大なリスクが伴います。不妊治療中の方は「告知しなければバレないだろう」などと考えず、最初から正直に申告することが大切です。
加入できても不妊治療はすぐに保障されない
不妊治療中に医療保険に加入できても、すぐに保障を受けられるとは限りません。多くの保険会社は、不妊治療中の契約者に対して妊娠・出産に関する保障に待機期間を設けたり、一定期間は保障対象外とする特約を付けたりするのが一般的です。例えば、出産方法にはよるものの「契約から2〜5年間は妊娠・出産に起因する入院や手術は保障しない」といった条件が付くケースがあります。この場合、加入してすぐの時期に不妊治療や妊娠合併症で入院・手術をしても給付金が受け取れません。契約時には必ず待機期間の有無を確認しましょう。
また、保障内容にも制限があります。公的医療保険の適用範囲に入る治療であれば給付対象となる可能性がありますが、保険会社によって給付条件や対象となる手術の範囲がまちまちです。例えば、体外受精に対する給付金が「1回につき定額〇万円を複数回受け取れる」商品もあれば、「入院給付金の10倍の一時金を1回だけ支給」という商品もあります。一方で、そもそも不妊治療関連の手術は給付対象外とする保険もあります。手術給付金の対象となる治療かどうか、加入から何日以降の治療が保障されるか、帝王切開や異常分娩時の扱いなど、細かな条件をよく確認することが大切です。
不妊治療で医療保険に入れなくなる2つの理由
異常妊娠や異常分娩の可能性が高くなるため
不妊治療を経て妊娠・出産した場合、異常妊娠・異常分娩となるリスクが高まることが指摘されています。例えば、体外受精など高度生殖医療で妊娠したケースでは、自然妊娠と比べて子宮外妊娠などの異常妊娠の発生率が上がる可能性があると、近年の研究で判明しました。また、不妊治療中の女性が出産に至った場合、帝王切開による分娩となるケースが多いです。なかには問題なく自然分娩できる方もいますが、全体的な傾向として、不妊治療歴がある場合は何らかの異常を伴うリスクが高くなります。
そのため、不妊治療中の方が医療保険に申し込むと、加入自体はOKでも妊娠・出産に関する保障を一定期間適用しない特別条件を付けるのが一般的です。不妊治療をしていると異常分娩などのリスクを抱えやすくなるため、保険会社は慎重になり保険医療に入りにくくなります。
不妊の原因となる女性疾病を抱えていることが多いため
不妊治療を受けている女性の多くは、不妊の原因となり得る持病を抱えている場合があります。例えば、子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、卵巣機能異常などは不妊症の原因としてよく見られる疾患です。手術が必要になるケースもあるため、保険会社からは将来入院・手術のリスクが高い持病とみなされます。そのため、通常の医療保険では加入を引き受けないか、引き受けても子宮や卵巣に関する保障に部位不担保を付けるなどの制限を課す可能性が高くなります。
さらに、不妊治療を進める過程で疾病が発見されることも珍しくありません。例えば「不妊治療の検査中に子宮筋腫や卵巣嚢腫(チョコレート嚢胞)が見つかり、手術が必要になった」というケースです。妊活をきっかけに潜在的な疾病が明らかになることも多いため、保険会社は妊活前から保険に入っておいてほしいとアドバイスしています。妊娠や不妊治療を意識し始めたら、それより先に医療保険の加入・見直しを済ませておくことが賢明といえるでしょう。
不妊治療中でも入れる医療保険の種類
引受基準緩和型医療保険
不妊治療中で通常の医療保険に入れない場合、引受基準緩和型(限定告知型)の医療保険に入るという方法があります。引受基準緩和型とは、健康状態に関する告知項目を大幅に減らし、持病や治療中の人でも加入しやすく設計された保険商品です。一般的な医療保険では「過去◯年以内の入院・手術歴」「現在の通院状況」など詳細な告知が必要です。しかし、緩和型では質問事項が「過去○ヶ月以内に入院していないか」「2年以内にがんで診療を受けていないか」など非常に簡略化されています。これにより、不妊治療中であっても一定の条件を満たせば加入できます。
もっとも、誰でも入れるわけではなく、緩和型にもいくつか告知質問があります。不妊治療中の場合、「子宮や卵巣の疾患で治療中ですか?」などの質問に該当すると加入不可となる商品もあります。また、加入できても保険料は決して安くありません。同じ保障内容でも通常の医療保険より月々の保険料が高めに設定されており、給付金支払いに制限がある商品もあります。例えば、ある引受緩和型医療保険では、契約後1年間は入院給付金・手術給付金が半額しか支払われないといった制限があります。加入しやすい分早期の給付リスクが高いため、保険会社が設けている安全策といえるでしょう。
それでも、持病や不妊治療中で通常の保険に入れない人にとって、引受基準緩和型は貴重な受け皿となります。最近では「不妊治療中や妊娠中の女性でも加入できる緩和型保険」が登場しており、帝王切開など一部の合併症を除けば保障してくれるため、ぜひチェックしてみてください。
少額短期保険
不妊治療中でも入れる保険として少額短期保険があります。少額短期保険とは、少額・短期の保障に特化した保険業法上の区分で、一般的な生命保険会社とは別のミニ保険といえるでしょう。少額で期間も1年更新など短期の保険ですが、その分ニッチなニーズに応える商品が多く、健康状態の告知基準も比較的緩やかなのが特徴です。保険金額の上限が低い代わりに、通常の保険会社では引き受けづらいリスクにも対応する保険が作られています。
不妊治療中の方向けの少額短期保険として有名なのが、住友生命グループのアイアル少額短期保険会社が販売する「子宝エール」です。子宝エールは不妊治療中の女性を対象にした医療保険で、「不妊治療中でも入れること」を前面に打ち出しています。具体的には、以下のような不妊治療・妊娠に関連する事由での入院・治療は保障対象外とし、それ以外の病気やケガについて保障するという商品です。
- 卵巣過剰刺激症候群(OHSS) – 刺激排卵による合併症
- 骨盤腹膜炎 – 不妊治療中にリスクが高まる骨盤内感染症
- 子宮内膜ポリープ – 子宮内の良性腫瘍で不妊原因の一つ
- 帝王切開 – 妊娠分娩時の手術(緊急帝王切開含む)
- 流産(切迫流産を含む) – 妊娠初期の異常
- 切迫早産 – 妊娠中期以降の異常
まさに「不妊治療中でも他のリスクには備えたい」というニーズに応えた商品といえます。例えば不妊治療中に盲腸になって入院した、交通事故でけがをした、といった場合は問題なく給付金を受け取れます。保障内容も日額1万円の入院給付金や手術給付金10万円といった基本的なプランが用意されており、一般的な医療保険に近い形で加入できるでしょう。
不妊治療中に告知せず医療保険に加入していた場合はどうなる?
不妊治療をしていることを告知せずに保険に入った場合、早急に保険会社または担当者に申告しましょう。黙ったままでいると、いざというとき保険金を請求しても支払われない可能性があります。最悪の場合は契約そのものが無効になりかねません。告知義務違反は重大な契約違反です。発覚すれば保険会社側から契約解除され、将来どんな事故が起きても一切保障を受けられなくなるでしょう。
しかし、自己申告すれば保険会社によっては事情を考慮して契約継続を認め、不妊治療関連の保障に関して特別条件を付加して継続してくれる場合もあります。法律上、契約から2年を過ぎている場合は保険会社は解除に慎重な判断が求められます。
いずれにせよ、誠意を持って早めに申し出ることが肝心です。
もし現在進行形で不妊治療中であり、この先もしばらく治療を続ける予定なら、いっそのこと不妊治療中でも入れる保険への乗り換えを検討する手もあります。仮に今の契約が解除になったとしても、引受緩和型や少額短期保険なら新たに入り直せるでしょう。大切なのは、将来のリスクに備える保障を手放さないことです。告知違反が怖いからと保険から遠ざかるのではなく、自分が正当に加入できる受け皿を探しましょう。現在加入中の保険について不安がある場合は、まず加入先の保険会社に正直に相談し、その上でファイナンシャルプランナーなど専門家にもアドバイスを求めると安心です。告知漏れを放置したままにしないで、今できる最善の行動を取りましょう。
不妊治療中でも入れるおすすめの医療保険はこちら!
不妊治療中でも加入しやすい保険商品としては、引受基準緩和型の医療保険や、不妊治療対応の少額短期保険が挙げられます。各保険会社からさまざまな商品が出ているため、現在の治療内容や持病の有無、今後の妊娠希望などに合った保険を選ぶことが大切です。しかし一方で、「種類が多すぎてどれを選べば良いかわからない」という方も多いでしょう。
そのような場合は、一括資料請求サービスを活用してみるのも手です。一度の入力で複数社の保険パンフレットや見積もりを取り寄せられるため、各商品の比較がスムーズにできます。専門家への相談も併用しながら、自分にぴったりの保険を見つけていただければと思います。将来の安心のために、妊活と並行して保険の備えも万全にしておきましょう。