声をかけられた3カ月健診
私は第1子となる息子を、順調な妊娠を経て、自然分娩で出産しました。出産後、思うように母乳が出ず苦労しましたが、そのような体験談はよく目にしていたので、自分だけではないと思っていました。ただ、息子がよく寝る子で飲むのをあきらめて途中で寝てしまう、そして体重が急激に減るという、育児書になかった事例に内心ハラハラ。
新生児育児中のころの私は体重を増やすのに必死。1カ月健診の結果はすべてが順調ということで安堵しました。
そして迎えた3カ月健診。私は体重だけが気になっていましたが、帰りに「首のすわりが気になるので、来月も来てください」との指示。寝耳に水。個人差ではないの?と一気に不安になりました。
元気に生まれてきて!の次の欲
3カ月健診で言われたとおり翌月も健診に行ったところ、そのころには首のすわりもパスしましたが、6カ月健診では、おすわり、寝返りの状況も詳しくチェックされました。
このころも私は、「個人差でいうところで、ゆっくりタイプ」と思いつつ、母子健康手帳のチェックリストを片手に、暇さえあれば座らせてみたり、うつぶせにして寝返りの練習をしたり、こっそりトレーニング。
息子はゆっくりタイプだと思いながらも、人と同じように成長し、育児書の範囲内でいてほしいという欲も出てきていました。1歳健診に向けて、練習の日々です。
比較された保育園
1歳健診の結果は、「専門医にみてもらうように」でした。そして、息子が1歳になると私の育休期間も終わり、保育園に入園。他の子との違いに焦りました。ある登園時のこと、すでに来ている子は興味津々でハイハイしているのに、息子は寝そべっているだけ……。
昼間、こっそり見に行くと、みんなは先生を囲んで本を読んでもらっているのに、息子は興味がないのか別のところでひとりで遊んでいて放置状態。
また、保育園の先生からは、「もう1歳よね? 月齢●カ月の子は歩いているし、月齢▲カ月の子はスプーンを使って自分で食べているわよ」などと、月齢が小さい子と比較されることも度々……。私はこのころから保育園へ不信感を持ち始めました。
専門医の診断結果、人生設計リセット!
保育園では、発達が遅いことから家での過ごし方についても確認されました。まるで放置を疑われているようでいい気がしなかったのを覚えています。保育園の先生とは信頼関係が築けず、モヤモヤしているうちに専門医の予約待ちの4カ月が経ち、診察を受けました。結果は、発達障害の中の「発達遅延」。
定期的に理学療法を受けるようにとのこと。発達障害を受け入れられない私はすぐに、「遅延」という言葉に食いつき、遅れているだけなら追いついてみせる! それには保育園ではなく、療育センターに通う!ということで保育園を退園、そして私は退職しました。正社員から専業主婦で収入激減。人生設計の立て直しをしました。
わが家は子どもの発達障害がわかり、保育園退園、仕事を退職という道を選択しました。収入が減る不安、障害児を育てるという将来の不安もありました。今でも将来の不安はあります。でも、子どもがいたことや、障害があったことで、人のやさしさに触れることができます。小さなやさしさや喜びにも気が付くようになりました。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
著者:小林 香穂
自閉症スペクトラムの13歳の長男と、グレーの10歳の次男のママ。療育、育児、学習サポートの面で試行錯誤しつつ、その経験を執筆中。「それぞれが居心地のいい場所作り」を目標としている。