ウエカツさんの目からウロコの魚料理
元漁師、元水産庁職員と異色の経歴を持つ、魚食普及人・上田勝彦(ウエカツ)さん。
その著書、東京書籍『ウエカツの目からウロコの魚料理』はただのレシピ本ではなく「魚の料理を“しくみ”でとらえてもらうための学習・実践ガイド」です。
この本の「水への気づかいが生食をおいしくする」を参考に、生魚の下処理をした後、ウエカツさんおすすめの薬味と調味料でいただきましょう。
ウエカツさん「水への気づかいが生食をおいしくする」
今回用意したのは、半額でゲットした解凍マグロの柵。値引きされているだけあって、臭みも少し気になりそうです。
下処理①流水で洗う
ウエカツさんによると、新鮮な魚の身には菌はおらず、菌がいるのは表面だけ。
濡れたまま放置したり、汚れた水で洗うと菌が繁殖して臭みの原因になるそうです。
下処理では菌をつけないことが大切で、臭いが気になる場合は表面を流水で3秒洗えばOKです。
下処理②すばやく拭く
魚を流水ですばやく洗ったあとは、すぐに表面の水分を拭き取りましょう。
残った水分も臭みの原因になるため、まな板や包丁が濡れている場合もこまめに拭くのが大切です。
切り身を洗うと「旨味が逃げる」は誤解で、旨味は細胞の中。サッと洗う程度では影響しませんが、ゆっくり洗うと水を吸って旨味が薄れてしまうことも。
すばやく洗って、すぐ拭くのがコツです。
【ウエカツさん流の食べ方】刺身=醤油+わさびではない!?
ウエカツさん曰く、刺身はきれいに盛り付けてあっても、口のなかに入れば「切った生肉」と「薬味や調味料」が咀嚼され、混ぜられるもの。
つまり、「生肉+薬味+調味料」で成り立つ“和え物”のようなものなのだとか。
この視点で考えれば、定番のわさびや醤油にとらわれず、組み合わせ次第で味わいはぐっと広がるそうです。
例えば、刺身なら薬味にはわさび、コショウ、和からしなど。調味料として、塩や味噌も挙げられていました。
カルパッチョなら、薬味にハーブやにんにくなど。調味料には塩、レモン、オリーブ油などが好相性とのこと。
今回は、ウエカツさん流に下処理したマグロで、気になる組み合わせを試してみました。
【刺身】わさび+塩
刺身に限らず、塩で食べるとなんだかツウな感じがします。
マグロの脂の甘みや赤身のコクがぐっと際立ち、素材そのものの味がしっかりと感じられました。
わさびの清涼感が鼻に抜けて、さっぱり。下処理をしたおかげで、臭みもありません。
【刺身】和からし+味噌
次は少し変わった組み合わせ。
醤油とはひと味違う、味噌のまろやかで深みのある風味が魚にマッチしていて、驚きました。
そこに、和からしのピリッとした辛み。瞬間的にツンときますが、その後すっと引いていくので、思ったより食べやすい印象です。
思えば、ホタルイカや蒸しダコは酢味噌で食べますが、他の刺身は味噌で食べたことがありませんでした。
これ……めちゃくちゃ合います!
【刺身】和からし+コショウ+塩
こちらは、思いのほかクセになる美味しさでした。
塩でマグロの旨みを引き出し、そこにコショウの立体感のある香りがふわり。和からしとコショウのピリッとした辛みが、脂の甘さを引き締めてくれます。
刺身というより、ローストビーフのような肉感で、赤ワインに合いそうな味わい!
【カルパッチョ】ハーブ類+ニンニク+コショウ+塩+レモン+オリーブ油
最後にカルパッチョ。
ハーブ類はピンクペッパーとパセリを使用しました。
オイルがマグロの表面をやさしく包み込み、舌ざわりがよりなめらかに。そこへレモンのフレッシュな酸味が加わり、味にキレと爽やかさを与えてくれます。
塩コショウのおかげで、味の輪郭がくっきりと引き出されていました。
カルパッチョを作るときは、ネットでいちいちレシピを見ていましたが、ウエカツさんの「生肉+薬味+調味料」の法則を覚えておけば、簡単に作れそうです。
刺身で広がる新たな世界
いくつか薬味と調味料で食べてみましたが、共通するのは「美味しい」ということ。
刺身はわさび醤油で食べるものという考えがありましたが、必ずしもそうでなくても良いと新たな発見でした。