【歯科医監修】乳歯のむし歯と予防
子どもの口と歯の基礎知識
乳歯のむし歯はこんなに大変!
もしも乳歯がむし歯になると、歯だけでなくいろいろな問題が出てきます。
まずは永久歯への影響。乳歯の根の下の歯ぐきの中には、はえる前から永久歯が成長しています。乳歯がむし歯になる、特に歯根に達するようなひどいむし歯の場合、永久歯のエナメル質や象牙質の形成が不完全なものになる場合があります。また、むし歯が悪化して抜歯するようなことになると噛むことがじょうずにできず、体重が増えなかったり口まわりの機能の発達が遅れることにもなりかねません。「歯」だけの問題でなく言葉やあごの力などから成長まで全体への影響が出てきます。
乳歯のむし歯は進み方がとても早く、数カ月の間に急に大きな穴が開いて、しかも数本の歯が同時にポロッとくずれるのが特徴です。怖いのは、自覚症状が少なく、そのような状態になっても、まだ痛がらない子どもが多いということです。検診で「むし歯です」と言われたときには、かなり進んでいる場合が多いのです。もしそのまま放置すると、夜中に急に痛み出し、顔が腫れたり熱が出ることもあります。
ただし、むし歯の初期状態(目で見てわからない程度のごく初期)であれば、口の中の環境を良くしてあげることで「再石灰化」され、元の健康な状態に戻ることもあります。できるだけ早い段階で、お口の中をきれいな状態することが大切です。
乳歯のむし歯と予防法①
下の歯が生えてきたらケアのスタートです!
下の歯がはえてきたら、さっそくガーゼなどで歯のお手入れを始めましょう。さらに、上の前歯がはえてきたら、最低1日1回はきちんと磨いてあげることも大切です。ただし、突然歯ブラシで磨くのはうまくいかないことが多いので、指で口唇の周囲を触ることから始めましょう。触り方のポイントは、①唇やほっぺに指先で触れる、②ほっぺの内側をなぞる、③歯茎のマッサージをすることです。
実質的にむし歯を防ぐのは、仕上げ磨きです。短時間で効果的に仕上げ磨きをするには、歯垢がたまりやすい場所を知って重点的に磨くことが大切です。ご機嫌の良いときを見計らって楽しくきちんと磨いてあげましょう。
歯ブラシはヘッドが小さくて毛先は短めの物を、前歯しか生えていないときはやや柔らかめの物を選びましょう。交換の目安は1カ月に1回と考えます。子どもの歯磨き習慣を自発的に促すためにも、子ども用1本と、仕上げ磨き用1本を用意すると良いでしょう。
Q.仕上げ磨きはいつまでするの?
A.最近はママたちの意識の高まりで、乳幼児のむし歯はとても減っていますが、小学校に入ってからむし歯ができてしまうことも多いようです。これは就学前に一生懸命子どもの歯を磨いていたママが、子どもが学校に入ったとたん仕上げ磨きをやめてしまうのが原因の1つだと思われます。この時期は「6歳臼歯」と言うもっともむし歯になりやすい歯が生えてくる時期でもあり、永久歯へのはえ変わりで口の中の環境も激変します。仕上げ磨きは小学校3年生ぐらいまで、歯みがき後のチェックは高学年までしてあげるのが理想です。
よくお口の中を見てあげよう
気をつけていても、むし歯になってしまうこともあるかもしれません。毎日見ていれば、変化に気づくのも早いはず。親子のコミュニケーションの一環として、子どもの歯をよく観察してあげましょう。フロスが使えれば、フロスがひっかかる場所も要注意です。むし歯の発見が早いほど、治療も軽くすみます。
●要注意の場所
(1)歯と歯肉の境目 (2)歯と歯の間 (3)奥歯の噛む面 (4)上の歯の裏側
●むし歯の進行と見分け方
(1)歯の表面が白く不透明に (2)黄褐色→茶褐色→黒 (3)歯の一部が欠けたり穴があく
何本生えてきたのかな?など子どもと一緒に数えてみても良いかもしれません。子ども自身に歯の手入れをすることに興味を持たせ、将来ひとりで磨くようになってからのセルフ・チェックの準備としても役立ちます。