【医師監修】妊婦が眠くなるのはあたりまえ?妊娠中の眠気の原因を解決

この記事の監修者
監修者プロファイル

医師福岡 正恒 先生
産婦人科 | 産婦人科医

京都大学医学部卒。同大学院修了後、京都大学助手、講師を経て、平成11年より産科婦人科福岡医院院長。京都大学在職中は、婦人科病棟や産科病棟などを担当。またこの間、英国エジンバラ大学・生殖生物学研究所に留学。日本産科婦人科学会・産婦人科専門医、京都大学医学博士。

妊娠中の眠気

 

「妊娠すると眠気が増す」という話は、よく耳にされると思います。今、まさに眠気と戦っている妊婦さんもいらっしゃることでしょう。妊娠と眠気には関連があるといわれているので、日中でも眠くなるのは仕方のないことといえます。ここでは、妊娠中に眠気が強くなる原因や対策法などについてお話しします。

 

 

妊娠と眠気の関係

妊娠すると眠くなるのは一体なぜでしょうか?実はその原因は1つではなく、妊娠によって生じるさまざまな変化が眠気を起こしているのです。主な原因を4つ、ご紹介しましょう。

 

1.ホルモンの変化

妊娠すると、女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)やコルチゾールなど、さまざまなホルモンの分泌が増えます。このホルモンの変化が、睡眠に影響を与えるといわれていて、特に催眠作用のあるプロゲステロンの増加が、眠気の大きな原因の1つとされています。

 

2.身体的な変化

おなかの中で赤ちゃんはすくすく成長していくわけですが、それに伴って子宮が大きくなり、周りの内臓を圧迫していきます。子宮の周りには膀胱や腸などがあるので、子宮に圧迫されることによってトイレが近くなったり(頻尿)、便秘がちとなったりすることがあります。また、おなかが大きくなると腹部の圧迫感が増し息苦しさや寝苦しさを感じる原因となります。これらの症状によって妊娠中は夜間、トイレの回数が増える、睡眠が浅くなり、夜中に目が覚めるといったことが起こり、日中の眠気に繋がりやすいと考えられています。

 

3.赤ちゃんの変化

妊娠5カ月ごろには、多くの人が赤ちゃんの胎動を感じるようになります。この胎動は、最初はもにょもにょっと動く程度ですが、妊娠後期にはおなかの上からわかるぐらい胎動が激しくなることがあります。また、妊娠28週以降になると赤ちゃんは20~30分ごとに寝たり起きたりを繰り返すので、お母さんが寝ている間も「胎動が活発で眠れない」ということが起こります。さらに、赤ちゃんのしゃっくりなども、お母さんの睡眠を妨げる原因になることがあります。

 

4.精神的な変化

妊娠月数が進むと寝つくまでの時間が長くなったり、夜中に目が覚める回数や朝早く目が覚めるといったことが増えたりするという報告があります(※1)。妊婦さんの入眠障害や中途覚醒などの原因としては上記のような変化に加え、出産の時期が近づくに従い、出産や産後に対する不安が強くなることなども挙げられています。

 

 

妊娠初期・中期・後期の眠気の原因と考えられるもの

妊娠期間は、初期・中期・後期の3つの時期に分けられ、同じ妊娠中でも身体的にも精神的にも大きく状況が変わってきます。眠気の理由も各期によって異なるので、各期に分けてお話ししましょう。

 

妊娠初期(0~15週)

この時期は、妊娠することによってホルモンが劇的に変化する時期です。特にプロゲステロンは催眠作用があるため、プロゲステロンの分泌が急増する妊娠初期は眠気を感じやすくなります。また、妊娠初期は、つわりなど体調も大きく変化するためストレスを感じやすく、さらに妊娠すると体温が高めな状態が続き、寝つきが悪くなることがあります。そのため、夜間の睡眠が不十分となって昼間の眠気が増す原因となります。

 

妊娠中期(妊娠16~27週)

妊娠中期はホルモンの分泌も安定し、つわりも治まることが多いため、妊娠初期に比べると日中の眠気がやわらぐ時期です。ただし、少しずつおなかが大きくなってくるため、妊娠後期に近づくにつれて寝返りの制限や腰痛などによって睡眠が不十分になることがあります。

 

妊娠後期(妊娠28週以降)

妊娠後期は、特に妊娠末期になると大きくなった子宮が太い血管を圧迫して血圧低下を引き起こす恐れがあるので、仰向けで寝ることは控える必要があります。そのため、思うように寝返りができない、あるいは腰痛や股関節痛などの痛みで睡眠が妨げられることも少なくありません。また、妊娠後期は子宮が周りの臓器を圧迫することや、血液中の水分量が増加することなどによって、夜間にトイレに起きる回数が増えます。さらに、精神的にも不安定になりやすいといった要因も、日中に眠気を感じさせる原因となります。

 

 

妊娠中の眠気対策

「日中眠いけど、お昼寝もできない」という方も多いことでしょう。妊娠中の眠気対策として、ここでは3つの方法をご紹介します。なお、切迫流早産の傾向があるなど、状況によっては実践できないものもありますので、医師に確認してからおこなってください。

 

1.夜の睡眠時間を確保する

睡眠時間は6~8時間が適切と考えられています。就寝時間と起床時間を一定にし、必要な睡眠時間の確保を習慣づけて、睡眠の質を高める工夫をしましょう。特に、体内時計は朝、太陽の光を浴びることでリセットされるといわれています。そのため、朝日を浴びられる時間に起きることを心がけましょう。

 

2.睡眠環境を整える

妊娠中は、わずかな身体の締め付けでも不快に感じることがあります。寝るときは締め付けの少ない服を選び、眠りやすい状態を作りましょう。また、抱き枕を利用すると横向きで眠りやすく、腰痛や股関節痛を軽減する効果も期待できます。

 

3.湯船に浸かる

運動や入浴の制限がなければ日中に適度な活動を心がけ、入浴もシャワーだけでなく、湯船に浸かりましょう。湯船に浸かる方が血行の改善につながり、寝つきが良くなるだけでなく、むくみの軽減やストレス解消にも効果的といわれています。

 

 

まとめ

妊娠中の眠気は、ホルモンや身体的・精神的な変化、赤ちゃんの成長による変化など、時期によってさまざまな原因が挙げられます。眠気を解消する方法としては、睡眠の質を高めることが重要です。上記にご紹介した眠気の対策法で、夜間の睡眠をしっかり取り、眠気が強い時期を乗り切りましょう。

産後は育児のために寝不足気味になるので、妊娠期のうちに睡眠に適した環境を整えておくことをおすすめします。
 

 

参考:

※1「本邦における妊婦の睡眠問題に関する疫学的研究」、日本公衛誌 第50巻 第6号、p526-538、2003
<https://www.jstage.jst.go.jp/article/jph/50/6/50_526/_pdf/-char/ja>

 

 

 

 

 

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