2014年から始まったNISA(少額投資非課税制度)ですが、2022年末時点で約1900万口座が設定され、約32兆円が運用されています。制度が始まり10年経過するタイミングでこの制度が大幅に変更される予定です。非課税で運用できる期間が無期限になったり、年間の運用上限額が3倍になったりと使い勝手が良くなる反面、ジュニアNISAが廃止されたり、運用できる商品が限定されたりと注意を要する内容もあります。今回は、新NISA制度の概要と注意点についてお伝えして参ります。
1.新NISAと現行NISAの比較
NISAは、通常の運用では利益に対して20.315%掛かる所得税・住民税をゼロにできる制度です。NISAが開始され10年が経過する2024年1月から新しい制度に変更となります。
新NISAの主な変更点と概要
新NISA制度(以下、新制度)と2023年までのNISA制度(以下、現行制度)の概要は以下の表をご参照ください。また、主な変更点は以下の通りです。
※①上場株式の整理銘柄(上場廃止が決まった銘柄)、監理銘柄(上場廃止基準に該当する可能性のある銘柄)、②信託期間が20年未満の投資信託、③高レバレッジ型の投資信託、④毎月分配型の投資信託は対象外となる予定です。
①1年間に非課税で投資できる上限額が拡大しました。
(つみたて投資枠:年間120万円、成長投資枠:年間240万円、合計最大年間360万円までの投資が可能となりました。)
②非課税で保有できる金額の上限額が拡大しました。
(全体で1,800万円まで、その内、成長投資枠は1,200万円までが非課税で保有できます。)
③非課税で保有できる期間が無期限となりました。
④つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能となりました。
2.ジュニアNISAは2023年で廃止されます
未成年者を対象としたジュニアNISAは2016年から始まりましたが、2023年で制度が終了します。2023年までに投資した金額は最長5年間非課税で運用できますが、2024年からは非課税で新たな運用はできません。なお、制度当初は原則18歳まで払い出しはできませんでしたが、2024年以降は非課税での払い出しが可能となります。
ジュニアNISAは本来お子さん名義の口座で18歳の大学等の進学費用の準備をする意味合いが強い制度でした。2024年からは新たにジュニアNISAでの運用はできませんので、進学費用の準備をするにはご両親がNISAで運用をするか、お子さん名義であれば、預貯金または課税での運用等が選択肢となりますが、ご自身やご家族の経験や考えに基づいてご検討ください。
3.新NISA制度でも元本保証はありません
NISAの内容が新しくなるとはいえ、非課税で運用できる制度であることには変わりなく、運用そのものは商品によって差はあるものの、元本保証ではありません。投資経験のない人や少ない人は運用しようとする商品がどのようなものを対象に運用しているか、手数料はどの程度か、過去の推移はどのようになっているかをしっかり確認して、理解と納得できるものを選ぶようにしましょう。つみたてNISA(新制度では、つみたて投資枠)の投資対象は金融庁が手数料や運用リスク等を考慮した基準を設けているため、運用商品の中では比較的リスクが低く、分かり易いものが多いのですが、元本保証ではなく価格も上下することは覚えておくと良いでしょう。
銀行や証券会社の窓口等で勧められるものの中には、手数料が高かったり、理解が難しかったり、長期運用に適さなかったりする商品もあります。また、ネット証券やネット銀行等では、NISAの新規口座開設や対象商品を優遇するキャンペーンを行うこともありますが、こちらも無理のない金額であるか、投資対象が適切かなどを判断した上で利用することをお勧めします。すべての金融機関、運用商品が該当する訳ではありませんが、NISAを利用するかどうかにかかわらず、ご自身の理解・納得できないものはなるべく避けることをお勧めします。
岸田内閣は「資産所得倍増プラン」を策定し、それを推進する一つの方法として2024年からNISA枠を拡大することを決定しました。物価が上昇する中で預金の金利や給与が上がりにくいため、運用する必要性が増える現状からすれば、望ましいことである一方で、慣れない運用で思わぬ損失を被る可能性もあります。これから利用しようと思う方は、情報を集め、慎重にかつ無理をしない範囲から始めていただければと思います。
※本記事は、NISAの制度や状況をお伝えする内容であり、特定の商品や金融機関のサービスを推奨・批判するものではありません。運用はご自身の判断と責任において実行してください。