妊娠中は体の不調やトラブルが起こりやすくなります。妊娠中に起こりやすいトラブルをまとめました。
妊娠時に高血圧を発症した場合、妊娠高血圧症候群といいます。妊娠前から高血圧を認める場合、もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠と呼びます。妊娠20週以降に高血圧のみ発症する場合は妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類されます。2018年からは蛋白尿を認めなくても肝機能障害、腎機能障害、神経障害、血液凝固障害や赤ちゃんの発育が不良になれば、妊娠高血圧腎症に分類されるようになりました。
妊娠高血圧症候群になると血管が収縮して血液循環が悪くなり、赤ちゃんの発育に悪影響を与えたり、早産や未熟児産、死産が起こる可能性が高くなります。重症になると母体が子癇(しかん/けいれん発作)を起こすこともあり、母子ともに大変危険です。妊娠高血圧症候群の症状が現れたら症状が進行しないよう注意してください。
妊娠糖尿病は、それまで糖尿病の症状がなかった人が妊娠をきっかけに発症するものです。妊娠糖尿病になると、妊娠高血圧症候群や羊水過多症、感染症などを引き起こしやすくなります。妊娠糖尿病は胎児へも影響します。
母体の血糖値が高いと、余分な糖が胎児に移行し、胎児も高血糖の状態となります。胎児に移行した糖は脂肪として蓄えられるため、巨大児が生まれる可能性も。巨大児になると自然分娩が難しく、帝王切開にならざるを得ない場合があります。妊娠糖尿病になった場合は出産後、正常に戻るとはいえ、約半数は10〜20年後にまた糖尿病を発症すると言われています。
そのほかのマイナートラブル
妊娠中はホルモンの影響で腸の動きが悪くなったり、子宮が大きくなって腸を圧迫したりする影響で便秘になりやすくなります。便からの水分の吸収が増えて、便が硬く小さくなることから、便意をもよおしづらくなることも。また、便秘で硬くなった便を排泄したり、子宮が肛門付近の静脈を圧迫したりすることで痔になることもあります。
妊娠中期から後期になると、こむらがえりを起こすことがあります。妊娠により重くなった上半身を支えるために、足の筋肉に疲労がたまりやすくなること、運動不足により血行が悪くなること、体が冷えて筋肉が硬直することなどが原因になります。
手足の皮膚を押したときになかなか戻らなければ、むくんでいる証拠。普段履いている靴がきつく感じたり、靴下のゴム跡がなかなか消えないなどもむくみの兆候です。妊娠中は黄体ホルモンが増えるため、体内に水分が貯留する傾向があります。また妊娠後期になると、子宮が大きくなることで下半身が圧迫され、血流が滞り、足がむくむことがあります。塩分の摂り過ぎがむくみにつながることも多いので、気をつけましょう。
母体は胎児の発育のために多くの鉄分を胎児に供給する必要があります。そのため母体は鉄分が減少し、貧血になりやすくなります。また、胎盤という細い血管の塊のような部分に充分な血液が流れるように血液中の水分が増加します。そのため、見かけ上は血液が薄まり、血液検査では貧血となります。
おなかが大きくなってくると体の重心が前に移りますから、バランスを取るためにどうしても上体を反らした姿勢で立ったり歩いたりするようになります。そのため背中や腰の筋肉に負担が掛かり、腰が痛むようになるのです。また、妊娠中は胎盤から分泌されるホルモンの影響で骨盤の関節や靭帯がゆるむため、おなかを支える力が弱くなり、腰の筋肉に一層負担が掛かることも原因の一つです。自分の体だけではなく常に赤ちゃんの重さを支えているわけですから、腰痛はいわば妊婦さんの宿命ともいえる症状です。
妊娠前はなんともなかった人も、妊娠をきっかけにマイナートラブルの症状が出ることもあります。食生活や生活習慣で予防や解消できるものもありますので、心がけてみてくださいね。