【助産師監修】産褥期とは? 産褥期の過ごし方やトラブル、注意点
出産直後のママの体は「産褥期(さんじょくき)」と呼ばれる時期に突入します。産褥期の過ごし方によって、その後の体調が大きく左右されることがあるのです。今回はママにとって大切な「産褥期」の過ごし方や注意点などについてご紹介します。
- 【目次】
- ・産褥期とは
- ・産褥期の過ごし方
- ・産褥期の注意点
- ・産褥期に起こるトラブル
- ・まとめ
産褥期とは
産褥期とは出産後約6〜8週間目までの時期のことを言います。「産褥」とは、出産に使用する寝床のことを指す言葉です。ここからもわかる通り、産褥期は基本的に運動だけでなく、家事などもできるだけ控え、安静に過ごすことが必要だと言われています。とはいえ、産後には赤ちゃんのお世話が待っています。安静と活動のバランスを考えながら、無理せず過ごし、徐々に元の生活に戻していくことが大切です。
●産褥期を安静に過ごすべき理由
産褥期は妊娠・出産で大きく変化した体の状態が徐々に元の状態に戻っていく時期です。ここで無理をすると産後の回復が遅れるだけでなく、場合によってはしっかり回復できずに、更年期になって尿もれや骨盤臓器脱(子宮が体外に出てきてしまう症状)になることもあると言われています。
妊娠・出産を経た体は、思った以上に変化し傷ついているものです。子育てやその後の人生を元気に過ごすためにも、産褥期は安静に過ごすよう心がけましょう。
●ママの体に起こる産褥期の変化
ここでは産褥期にママの体の中でどのような変化が起こっているのかについて、具体的にご紹介します。
・子宮復古
子宮復古は、妊娠時に大きくなった子宮が元に戻る現象のことです。出産後、子宮は約4週間かけて、妊娠前の大きさに戻っていきます。子宮復古の際には後陣痛という陣痛に似た痛みを伴う場合があります。人によって痛みの程度や期間は異なりますが、長い場合だと1週間程度痛みが続くこともあります。
後陣痛が強い場合は、医師の判断で子宮収縮剤の内服の回数を減らしたり、中止することもあります。また、鎮痛剤を処方してもらうこともできます。その都度、医師に相談してみるとよいでしょう。
・骨盤の柔軟性がなくなる
大きくなる子宮に合わせて、妊娠中は骨盤も通常に比べて開いた状態になっています。これは「リラキシン」と呼ばれるホルモンの影響ですが、産後1カ月以降は分泌量が徐々に減少し、骨盤の柔軟性が落ちてきます。
・ホルモンバランスの変化
妊娠中はプロゲステロンとエストロゲンという2つのホルモンが多く分泌され、赤ちゃんに栄養を送ったり、子宮を大きくしたりする役割を担っていました。出産後はどちらも分泌量が急激に減少するため、心身ともにさまざまな変化が表れます。
一方、母乳を作り出すプロラクチンは、出産前に比べて分泌量が多くなります。また、子宮収縮を促すオキシトシンは、妊娠後期からさかんに分泌されます。乳頭刺激により分泌が促進され、母乳を外に押し出す働きと子宮を収縮させる働きをするので、授乳の際に後陣痛が強くなることがあります。
・母乳が分泌される
先に述べたプロラクチンなどのホルモンの影響と赤ちゃんが吸啜(乳頭刺激)することで、母乳の分泌が始まります。特に分娩後5日ごろまでに分泌される、黄色みがかった乳汁を「初乳」と言い、免疫グロブリンが多く含まれるとされています。
・体重減少
胎児や羊水、悪露などのほか、増加した血液や組織液などの分が出産後徐々に減少していきます。
産褥期の過ごし方
ママの体が回復するために必要とされる産褥期ですが、8週間もあるとどのように過ごせばいいのかよくわからない人もいるのではないでしょうか。そこで、産褥期の過ごし方についてもう少し期間を区切ってご紹介します。
●産後1〜2週間目
産後、体がもっとも急激に変化する時期です。先ほどご紹介した子宮復古やホルモンバランスの変化なども急激に起こるため、育児中心の生活を送り、疲れたら横になるようにしましょう。
このころは2〜3時間毎に赤ちゃんに母乳を与える必要があるため、寝不足になりがちな時期でもあります。パパや両親、周りの人や公共・民間サービスを利用するなどして、できるだけ体を休めるようにしましょう。
●産後3週目
体が徐々に回復し、寝たきりに近い状態から少しずつ動けるようになってくる時期です。床上げ時期とも言われます。無理のない範囲であれば、家事もできるようになります。無理は禁物ですが、少しずつ行動範囲を広げていきましょう。
●産後4週目
1カ月健診で異常がなければ妊娠前の生活に戻ることができます。また産後1カ月健診で許可が出れば、湯船にも浸かれるようになります。また体調に問題がなければ、性生活やパーマ、旅行などもおこなえます。
●産後5〜8週間
しっかりと体が元の状態に戻っていく時期です。悪露や会陰切開の傷が長く痛むと感じていた人も、このころには改善にむかうことが多いようです。家事や軽い運動であれば体を動かしても良いと言われるころでもあります。ただ、体がしっかり回復するまでは、旅行や遠出などはまだ控えたほうがよいでしょう。産後8週目以降は職場復帰も可能になります。
産褥期の注意点
産褥期は、言い換えれば「体が弱っている時期」ですので、このころは普段に比べて多くのことに気を使って生活することが望まれます。ここでは特に注意すべきことについてご紹介します。
●できるだけ家事を控える
普段何気なくおこなっている家事は、意外と体に負担をかけています。産褥期の間、特に産後1カ月間はできるだけ家事を控え、パパやご両親などにお願いするのがよいでしょう。
●清潔第一
会陰周りはこれまで以上に清潔に保つよう心がけましょう。会陰切開した場合、産後7~10日くらいまでは清浄綿で会陰周りを消毒するようにいわれる人もいるでしょう。傷がしみてつらいかもしれませんが、清潔のためにも忘れずにおこなっておきましょう。
出産後は免疫力が低下するほか、産道や会陰切開の傷など、体に雑菌が侵入しやすい状態になっています。「湯船に浸かってはいけない」と言われるのはこのためです。
帝王切開の場合は会陰周りの傷の感染についてはそれほど問題ではないものの、悪露は出るため、こまめに産褥パッドを交換するなどして、清潔に保つことが必要です。
●食生活はバランスよく
体を回復させるためには、栄養のあるものをバランスよく摂取することが大切です。特に鉄分やビタミン、タンパク質などが不足しがちな時期ですので、これらを中心に栄養バランスのとれた食事を心がけましょう。
また油分や糖分の多いもの、カフェインなども産褥期は控えたほうがよいでしょう。油分や糖分は母乳のつまりの原因になると言われています。またカフェインは母乳に移行する成分の1つで、摂りすぎると赤ちゃんの寝付きや機嫌が悪くなることがあります。コーヒー2〜3杯程度なら問題ないと言われていますが、できればカフェインレスの飲み物を選んだほうがよいでしょう。
●重たいものを持たない
産後の骨盤が緩んだ状態で重たいものを持つと、いつも以上に体にダメージを与えるだけでなく、更年期になった時に骨盤臓器脱を起こす可能性もあります。産褥期はできるだけ重いものを持たないようにしましょう。
産褥期に起こるトラブル
最後に、産後に起こりやすいトラブルについてご紹介します。すべての方が当てはまるわけではありませんが、事前に確認しておけば注意しやすい点ですので、産褥期を過ごす際の参考にしてください。
●子宮復古不全
さまざまな原因から子宮復古が通常どおり収縮しない症状のことを言います。子宮復古が順調かどうかは、悪露の状態でわかります。
悪露の量がいつまで経っても多かったり赤色や褐色だったりすると、子宮復古不全の疑いがあります。子宮内膜炎などの病気を併発することもあるので、注意が必要です。
退院後、生理の2日目くらいの出血がある、レバーような塊が出るなどの場合は受診をおすすめします。
●産褥熱
分娩後24時間~産褥10日に起こる感染症で、38度以上の高熱が2日間以上続く場合、産褥熱と診断されます。
主に子宮や腟部分についた出産時の傷に細菌が入ることで起こるもので、同時に下腹部の痛みや悪露の悪臭などに悩まされることもあります。こうした症状に悩まされる場合は、一度医師に相談してみましょう。
●産褥期精神障害(マタニティブルーズ、産後うつなど)
ホルモンバランスの急激な変化によって起こると言われているもので、涙が止まらなくなったり、いつもよりイライラしたりといった症状がみられます。
マタニティブルーズは産後3日から10日程度、長くても2週間の間に起こる症状ですが、うつのように病気ではないため、自然に治まっていきます。
一方、産後うつはその名の通り、産後一定の期間が経過しても改善が見られない「病気」です。多くは産後1カ月以内に発症し、不眠、不安、気分変調、食欲不振などの前駆症状に引き続いて発症することが多い傾向にあります。
マタニティブルーズから産後うつに移行することもあるため、いつまでも気分が落ち込んでいたり、不安で眠れなかったりという症状が続いた場合は、精神科や心療内科に一度相談してみるのがよいでしょう。産後うつは早期発見が大切です。また周りのサポートが必要な症状でもあるため、本人だけでなく、周囲も気を付けてあげることが大切です。
●乳腺炎
胸のしこりや腫れ、痛みとともに、倦怠感や38度以上の高熱に悩まされるトラブルです。授乳方法を改善することで、快方に向かうことが多いですが、重度の場合、乳房膿瘍になる可能性があります。おかしいなと感じたら医師や助産師に相談してみるとよいでしょう。
●便秘
会陰部の痛みや授乳による水分不足、安静による運動不足などから、産褥期は便秘になりやすい時期でもあります。食物繊維や水分を多く摂取するとともに、腹部マッサージをおこなうなどして改善しましょう。場合によっては下剤などが処方されることもあります。
●会陰切開の痛み
会陰切開した場合、その痛みが長く続くことがありますが、大体産後1カ月ほどで治まると言われています。傷口からの感染などによる発熱がなければ、痛みがあっても異常があるわけではないので心配はいらないのですが、それでも日常生活ではつらいもの。
ドーナツ型のクッションを使用するなどして、会陰部分が直接触れないようにするのがおすすめです。
まとめ
さまざまな理由から、無理のない範囲で過ごしたほうがよい産褥期ですが、転勤族など周りに頼る人がいない場合は、自分で家事をしなければならないこともあります。そんなときは公共の産後サービスなどを積極的に利用するのがおすすめです。場合によっては助成を受けられる自治体もあるため、出産前に一度問い合わせてみてはいかがでしょうか。産婦人科医や助産師、行政の相談窓口などに相談しながら、産褥期を乗り越えていきましょう。
◆出産の影響に関するQ&A
- Q.帝王切開後の傷跡を押すと痛みと違和感があります
- Q.産後、1年過ぎても出べそが治りません
- Q.帝王切開の傷あとの部分が硬くなっています
- Q.前回の出産で頸管裂傷を経験し、次の妊娠が不安です
- Q.会陰裂傷の痛みが産後2週目でも続いています。
- Q.子宮頸管裂傷の傷痕は2人目出産時も影響しますか?
- Q.食道裂孔ヘルニアがあっても妊娠、出産出来るでしょうか
- Q.出産後の大量出血から次の妊娠を躊躇しています
- Q.膣からおならのような音がします
- Q.帝王切開後の妊娠は、2年以上経過してからと聞きました
◆産後の体調の体験談
4人目妊娠中です。1人目は5月生まれ。若かったせいもあり、そして赤ちゃんがビックリするくらい良く寝てくれたのでホントに体調がよかったです。2人目は6月生まれ、周りに頼って産後3週間大事にしていました。おっぱいは大変でしたが、体調良好。3人目は2月生まれ。ホントに雪の多い寒い冬でした。シャワー浴がキツかったです。産後一年間、体が冷えていた気がしました。産後すぐに2人目の子の卒園、入学があっていろいろ動いたのでめまいがしました。
産後はやはり3週間、しっかりと体を休めたほうがいいです。動けてしまうので、動いてしまいますが。4人目は夏に出産予定です。できるだけ無理して動かないように、ゆっくり体を休ませたいです。これからの家族のため、元気なお母さんでいるために産後は休ませてもらいます。
あけちママ さん
1人目の出産のときは、産後の体調もそれほど悪くなかったのですが、2人目出産後は、まず後陣痛がひどく、しばらくは歩くのもやっとでした。年齢を重ねたこともあるんだとは思いますが、1人目出産後に比べて、2人目のときは回復にも時間がかかったように思います。また、赤ちゃんのお世話だけでよかった1人目出産時に比べて、上の子の面倒も見ないといけないという点も大きかったと思います。
あっちママ さん