【医師監修】子宮内膜症の原因や症状、検査方法や治療費は?

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医師川島 正久 先生
産婦人科 | あんずクリニック産婦人科院長

静岡県磐田市生まれ。平成5年神戸大学医学部卒業、神戸市立中央市民病院/淀川キリスト教病院、磐田市立病院に勤務の後2011年にあんずクリニック産婦人科を開業「お産を通して人々に喜びを与える」をモットーに地域の人々のお役に立てるよう励んでいます。

【医師監修】子宮内膜症の原因や症状、検査方法や治療費は?

 

女性特有の疾患である子宮内膜症。20~40代の女性に多いことから、気になる人もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、子宮内膜症の原因や症状、検査方法や治療方法について解説していきます。

 

 

子宮内膜症とは?

子宮内膜は、子宮の内側にある膜の部分です。正常な子宮内膜は月経周期に合わせて厚くなったりはがれ落ちて出血(=月経)することを繰り返します。

 

子宮内膜症は、子宮内膜組織に似た組織が子宮の後ろ側のダグラス窩や卵巣などに発生し、炎症や癒着を引き起こしたりします。卵巣内で子宮内膜症を発症した場合、卵巣の中に排出されない血液がたまってチョコレート嚢胞(内膜症性嚢胞)を生じます。閉経後も卵巣チョコレート嚢胞が大きい状態で残存している場合には、卵巣がんになるリスクが増加することが知られています。また、まれに肺や小腸、膀胱などにも発生することがあり、「希少部位子宮内膜症」と呼ばれます。

 

子宮内膜症は、女性ホルモンであるエストロゲンによって子宮内膜組織が増殖することで発症するため、エストロゲン分泌の盛んになる20~40歳代の女性に多く見られます。そのため初潮年齢が早い人、月経周期が短かい人、出産経験のない人などがリスク因子となります。

 

主な症状は、月経を重ねるごとに強くなる月経痛、腰痛、性行痛、排便通などがありますが、そのほかに過多月経、不正出血などが見られることもあります。

 

 

子宮内膜症の原因

子宮内膜症の原因は現段階では詳しいことは解明されていませんが、いくつかの仮説があります。

 

●子宮内膜の逆流による移植説
子宮内膜は、排卵後から月経までの間に厚みを増していきます。そして、妊娠が成立しなかった場合は、はがれ落ちて月経血として体外に排出されるというサイクルを繰り返しています。しかし、体外に排出されるはずの子宮内膜が卵管を通しておなかの中に逆流してしまうことがあり、その結果、子宮以外の場所にとどまり続けることで、子宮内膜症に至ると考えられています。

 

●組織の変化による化生説
腹膜や卵巣の表層にある細胞がなんらかの刺激によって子宮内膜に似た組織に変化し、子宮内膜症に至るという説です。

 

 

子宮内膜症の妊娠への影響

子宮内膜症は、生殖年齢にあたる20~40代の女性によくみられる病気です。一般的な不妊検査で原因不明だった女性の約2割に子宮内膜症の腹膜病変がみつかると言われており、子宮内膜症のある人は、正常な人よりも自然に妊娠に至る割合が低いことが報告されています。

 

また子宮内膜症は、周囲の組織と癒着したり、卵管の閉塞をきたすこともあり、妊娠率の低下に影響することもあります。

 

 

子宮内膜症の診断

最初に問診により痛みの性質や程度を評価します。年齢が20歳前後の女性では生理痛がひどい人も多いのですが、鎮痛剤で改善し、20代半ばくらいまでに生理痛が軽くなるようであれば子宮内膜症である可能性は低いと言えます。逆に以前は生理痛がなかったものが20代後半から30代と次第に生理痛がひどくなってきて、市販の鎮痛剤でも改善しないような痛みがある場合は子宮内膜症を疑います。


問診によって子宮内膜症が疑われる場合は、内診(子宮や卵巣を手で押さえて病変の有無をみる)・直腸診をおこないます。子宮内膜症が子宮の後ろ側であるダグラス窩にある場合は、内診や直腸診で診断がつく場合があります。一方、子宮の周りや腹膜に病変のある軽度の子宮内膜症では自覚症状が強くないこともあり、内診だけでは病変の有無がはっきりしないこともあります。

 

引き続いて、経腟超音波検査(エコー)をおこないます。MRI・CT検査が補助的におこなわれることもあります。卵巣チョコレート嚢胞は、これらの方法で診断できます。

 

場合によっては、CA125という腫瘍マーカーを血液検査により測定したり、腹腔鏡を使った検査や開腹手術により診断が必要になることもあります。

 

 

子宮内膜症の治療

内膜症の症状は人それぞれですが、放置しておくと次第に症状が悪化していく人がいる一方で、治療をしなくても自然によくなっていく人もいます。子宮内膜症の治療は、大きく分けると薬物療法と手術がありますが、症状の強さや妊娠の希望の有無などによって治療方針が決められます。

 

●薬物療法
痛みがある場合、鎮痛剤やホルモン剤(LEP:低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬または「低用量ピル」とも呼ばれます)を使って月経痛を和らげ、月経の血液の量を軽減させる方法があります。黄体ホルモンという薬剤がゆっくり放出されるIUS(ミレーナ®)という器具を子宮の中に置いておく方法もあります。また副作用が少ないという理由で桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などの漢方薬が使われることもあります。

 

また上記の薬剤で効果がない場合にはジエノゲストと呼ばれるホルモン剤の内服やGnRHアゴニストと呼ばれる薬剤も選択肢となります。これらの薬剤でエストロゲンの分泌が抑制され、子宮内膜の増殖を抑え、子宮内膜症の病巣を小さくする効果が期待できます。

 

●手術療法
薬物療法で効果のない重症の子宮内膜症では、手術も検討されることがあります。その後の妊娠の予定がない人の場合には、子宮や卵巣を切除する単純子宮全摘術や両側付属器切除術がおこなわれます。チョコレート嚢胞は時に破れて中身が漏れ出すことがあり、このときは強い痛みを起こし、緊急に開腹手術が必要になることもあります。

 

妊娠を希望している場合は、確定診断も兼ねた治療法として、腹腔鏡下手術がおこなわれます。腹腔鏡下手術では、腹腔鏡下で卵巣チョコレート嚢胞の摘出や内膜症病変による癒着の剥離をおこなったり、レーザーや電気メス、超音波で、病巣を焼いたり凝固させたりする手術をおこないます。

 

子宮内膜の癒着が激しく、腹腔鏡では手術が難しい場合は開腹手術が選択されます。いずれの場合も麻酔が必要になるため、入院が必要ですが、入院期間は腹腔鏡下手術のほうが短くなります。

 

 

まとめ

生理がくるたびに激しい腹痛や腰痛などがあらわれる子宮内膜症。治療によって、不妊症の原因となりうるリスクを取り除いたり、子宮内膜症の症状を緩和させたりすることができるため、気になる症状がある人は早めに医師に相談するようにしましょう。

 

 

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